休日に その2
駅と反対側へ歩き、繁華街をぬけて、
しばらくいくと、民家やアパートの
ひしめき合うところにすぐでる。
その一角のアパートが、私の家だ。
今週のバイト三昧の結果、
部屋は女子とは思えない散らかりようだ
さすがに呆れられると思ったけど、
もう、どうしようもない。
今回は目をつぶってもらうしかない
とりあえずレポートの資料やら
パソコンを引っ張り出す。
彼は私がごちゃごちゃしている間に
もう資料に目を通してしまっていた
「俺資料まとめたるから、とにかく書け」
「あ、はい、わかりました…」
なんだか先生みたいで、
思わず敬語になる
家庭教師のバイトもこんな感じで
してるのかなぁ
こんな距離で教えられたら
恋に落ちること間違いないよね
彼の涼しげな横顔をみていると、
考えなくてもいいようなことばかり
うかんできて、顔も知らない教え子にまで
嫉妬してしまいそうになる
おまけに、私は外見も普通だし
今は部屋の片付けすらもできてない
魅力なんて欠片もない
こんな女子力ゼロな私の
どこがいいんだろう?
時々頭の中を掠める疑問
「…ん?なに?」
視線に気がついて、彼がこちらをみる
ああ、優しい目だ。
この目が私だけを
みつめてくれますように
「何でもない」
心のうちを見透かされないように
私は俯いて、レポートをするふりをした
今回のレポートは、すきな分野だし
いつもなら下手くそながら
文章もでてくるのだけど、
バイトの疲れと、
訳のわからない焦燥感で
ちっとも書けない。
文章ですらない、ただの文字の羅列
あまりのダメさにため息が出る
「おい」
ため息に重なるように彼の声
顔をあげると、目の前に彼の顔がある
身を乗り出して机にひじをついて
私の頬にふれる
「つまんなそうな顔すんなよー」
おでこをひっつけて
「せっかく一緒におんねんから」
「そだよね…」
少しだけ唇を重ねた
ほんのすこしなのに、キスしたら
なんでこんなに幸せになるのだろう
「ま、レポートめんどいやろけどなー」
彼は私の頭をぽんぽんと叩いて、
にっこり笑った
窓から差し込む春の日が
彼の笑顔をさらに輝かせた。
「ふええ、できた…」
窓の外は春の光が消え、
宵の月が薄く浮かんでいる
思ったより早くまとめられてよかった。
これも彼が色々手伝ってくれたお陰だ。
その彼はさっきコンビニへ行くといって
出ていって、まだ帰らない
私はのろのろと立ち上がり
冷蔵庫からミネラルウォーターの
ペットボトルを引っ張り出す
テレビをつけて、ベッドに座り、
冷たく冷えた水を一口飲む。
ぼんやりとテレビをみていると
バイトの疲れが一気にのしかかってきて、眠気が襲ってくる。
私は落ちてくるまぶたに
抵抗しきれず、眠りに
引き込まれてしまった。