第5話 長女、勇者を精神世界へ強制招待(※本人の自由はログアウト中)
暗闇。
無限に広がる白い床。
空間に浮かぶ数式、戦闘ログ、未来分岐図。
長女ベルゼリア・スパイシアの精神演算室。
蒼銀の長髪が無風の中で揺れる。
右目の分析魔眼が赤く輝く。
「対象:勇者感情解析、再実行」
空間に勇者の投影体が現れる。
拘束具のように見えるのは、数式の鎖。
鞭も、ろうそくも、物理ではない。
全ては
思考のツール。
〜精神内実況席(概念存在)〜
悪魔の杖
「さあ始まりました!内面尋問!!」
悪魔の剣
「物理じゃない!!心理拘束だ!!」
悪魔の槍
「一番逃げられない場所」
悪魔の斧
「えっここ何処?」
聖剣、静かに光を放つ。
『……心の中だ』
❄ベルゼリア、勇者の投影へ歩み寄る。
「質問。あなたが私を拒む確率は」
勇者の幻影は答えない。
数値が乱れる。
【未知変数】
「……なぜ」
❄彼女の声に、わずかな揺らぎ。
鞭を振る。
数式が弾ける。
「恐怖で支配すれば、確率は上昇するはず」
ろうそくの炎が灯る。
しかし炎は揺らぎ、安定しない。
聖剣、低く響く。
『支配で得た肯定は、肯定ではない』
実況席、静寂。
悪魔の杖
「精神領域に外部理論侵入!」
悪魔の剣
「聖剣、恋愛概念を上書き!!」
悪魔の槍
「これは精神の内部革命」
悪魔の斧
「よくわかんないけど凄い」
ベルゼリア、目を閉じる。
演算空間が崩れ始める。
数式が消え、
代わりに現れるのは勇者と並んで歩く未来図。
戦場ではない。
城下町。
並んで座るテラス席。
彼女の分析魔眼の赤が、柔らかく灯る。
「……再計算」
数式が変わる。
【勝率】削除
【継続可能性】生成
【相互選択】追加
❄ベルゼリア、静かに告げる。
「今度は」
一歩、幻影へ手を伸ばす。
「二人でデートしましょう」
拘束の数式がほどける。
鞭は消える。
ろうそくも消える。
残るのは、未完成の未来図。
そして。
理性と感情が、初めて同じ座標に立つ。
実況席、ざわめく。
悪魔の杖
「演算方式変更!!」
悪魔の剣
「支配から共有へ!!」
悪魔の槍
「恋愛アルゴリズム更新」
悪魔の斧
「デートってなに?」
聖剣、静かに言う。
『それはな一緒に未来を試す時間だ』
精神の部屋に、初めて温度が生まれる。
冷酷理性派。
だが今、彼女の世界に“誤差”が宿った。
それは欠陥ではない。
恋という名の、未知変数。




