第4話 勇者、平原にて精神HPゼロ。
荒野。
魔王城を脱出した勇者。
「はぁ……助かった……」
ドン。
前。
ドン。
右。
ドン。
後ろ。
三方向、完全包囲。
勇者、ゆっくり振り向く。
終わった顔。
❄長女:ベルゼリア・スパイシア
蒼銀の長髪が風に揺れる。
分析魔眼、起動。
「戦闘効率、判断速度、剣速……理想値」
魔眼が勇者をスキャン。
「あなたの遺伝的適合率、最適」
勇者
「恋愛をスペック表で語るな」
ベルゼリア、冷静。
「恋もまた戦略。勝率の高い選択をするだけ」
一歩近づく。
氷の気配。
「感情で負ける気はありません」
危険度:高。
次女:ルミエラ・スパイシア
常時微笑み。
ふわりと勇者の隣へ。
「運命ですね♡」
勇者
「偶然だろ!?」
「偶然を必然にするのが恋です♡」
微笑みのまま、そっと勇者の腕に触れる。
その瞬間。
遠くの山が光で蒸発。
「可愛い顔で地形変えるな」
「勇者様のためなら世界も動きますよ?」
危険度:極高。
三女 :ナターシャ・スパイシア
赤髪ポニーテール爆揺れ。
「好き!!!」
地面爆発。
「考えた!?」
「考える前に好き!!」
一直線に抱きつく。
衝撃波。
勇者吹き飛ぶ。
「物理で愛を証明するな!!」
危険度:災害。
三方向から同時接近。
勇者、後退。
「ちょっと待て!順番!順番!!」
ベルゼリア
「順番は非効率」
ルミエラ
「三人同時も素敵ですよ♡」
ナターシャ
「まとめて愛す!!」
「処理落ちする!!」
そのとき。
腰の聖剣が光る。
カチン。
低く落ち着いた声。
『主よ、深呼吸しろ』
勇者
「お前ほんとに今助けてくれ」
聖剣、淡く輝く。
『恋は戦場ではない。まず距離を取れ』
ベルゼリア
「距離を取る理由は?」
聖剣
『判断力が鈍る。囲みは心理的圧迫戦術だ』
ルミエラ
「さすが勇者様の剣ですね♡」
聖剣
『褒めても何も出ん』
ナターシャ
「剣うるさい!!」
聖剣
『感情過多。まず落ち着け』
遠くの岩陰。
悪魔の武器実況
悪魔の杖
「聖剣が一番まとも」
悪魔の剣
「しかも常識人!!」
悪魔の槍
「恋愛指南してるぞ!」
悪魔の斧
「うちの魔王より冷静!」
悪魔の杖
「勇者の武器、人格完成してる!」
悪悪魔の剣
「なんで光属性が一番理性的なんだ!」
聖剣、続ける。
『恋とは奪うものではない』
三姉妹、止まる。
聖剣
『選ばれるには、主を追い詰めるな』
静寂。
ナターシャ
「……追い詰めた?」
ベルゼリア
「心理的圧力、過多」
ルミエラ
「嫌われますか?」
勇者
「今ちょっと怖い」
三人、ショック。
地面ひび割れ。
「ショックで地面割るな!!」
聖剣、最後に一言。
『恋はな、勝つものではない。築くものだ』
沈黙。
悪魔の武器たち。
悪魔の杖
「……名言出たぞ」
悪魔の剣
「光属性、強すぎる」
悪魔の槍
「魔王軍、恋愛偏差値低い説」
悪魔の斧
「デブ魔王呼んでこい」
勇者、天を仰ぐ。
「なんで俺の人生が恋愛戦争なんだ」
三姉妹、同時に。
「好きだから」
空が割れる。
聖剣、ため息。
『前途多難だな、主』
そして。
悪魔の武器たち、最後のツッコミ。
悪魔の杖
「というか」
悪魔の杖・悪魔の剣・悪魔の槍・悪魔の斧
「お前も喋るんかい!!!!」
荒野に響く総ツッコミ。
勇者、精神HPゼロ。




