第4話 寝室の温度戦争
深夜。
勇者は、爆睡。
(聖鎧「本日の消耗度:限界値」)
寝室の扉、そっと閉まる。
リビングに集まる嫁の四人。
湯気立つハーブティー。
静かな女子会、夜の本音会議が開幕。
ナターシャ
腕組み。
「私は一番強い」
テーブル焦げる。
ベルゼリア
即座に結界。
「だが持続性に欠ける」
ナターシャ
「なっ!?」
ベルゼリア
「出力は最大。燃費は最悪」
悪魔の斧(小声)
「正論パンチ」
ルミエラ
頬杖。
「勇者様は甘さに弱いですよ?」
微笑み。
「視線、呼吸、鼓動。全部読めます♡」
ナターシャ
「ずるい!」
❄ベルゼリア
「心理干渉型…厄介」
沈黙。
三人の視線が――
エリシアへ。
彼女は静かにカップを置く。
エリシア
「……私は特別なことはしていません」
三姉妹
(いやしてる)
ナターシャ
「料理、家事、会話、距離感。全部完璧だろ!」
ベルゼリア
「時間配分も最適。無駄ゼロ」
ルミエラ
「勇者様、あなたの前だと呼吸が安定してます」
エリシア
「観察しているだけです」
ナターシャ
「習い事いくつあるんだ!」
エリシア指折り数える。
「礼法、剣術、弓術、魔法理論、政治学、音楽、裁縫、栽培、薬学、家政全般、経営学、語学六種」
沈黙。
ベルゼリア
「習い事が十一種、語学が……六種?」
エリシア
「はい」
ルミエラ
「全部A評価ですよね?」
エリシア
「一応」
ナターシャ
「一応!?」
悪魔の杖(遠くから実況)
「スペック公開きたァァ!!」
悪魔の剣
「バランス型の最終形態」
悪魔の槍
「隙が、ない」
ナターシャ(小声)
「……負けるかもしれない」
ベルゼリア演算停止
「勝率……低下傾向」
ルミエラ、笑顔が少し固い
「勇者様、取られちゃいます?」
初めて。
三姉妹の胸に走る感情。
“焦り”
エリシア静かに。
「奪うものではありません」
三人、顔を上げる。
エリシア
「選ばれ続けるものです」
空気が変わる。
ナターシャ
「……どうすれば選ばれる?」
初めての問い。
ベルゼリア
「合理的回答を求む」
ルミエラ
「甘さ以外の正解を知りたいです」
エリシア少し考える。
そして。
「弱さを守れる人が必要です」
三姉妹、止まる。
エリシア
「勇者様は強い。でも、疲れます」
思い出す。
朝の涙。
洗濯の息切れ。
寝落ち。
エリシア
「強さを競うのではなく」
カップを持ち直す。
「弱さを受け止められるかです」
沈黙。
ナターシャ拳を握る。
「私は……守る戦いしか知らない」
❄ベルゼリア
「私は効率しか見ていなかった」
ルミエラ
「私は甘やかすだけ……」
三姉妹の声が、少しだけ揺れる。
エリシア微笑む。
「完璧である必要はありません」
(三姉妹:いやあなたが言う?)
エリシア
「隣に立てばいいのです」
その瞬間。
寝室から寝言。
勇者
「……みそしる……」
四人、吹き出す。
ナターシャ
「なんで味噌汁!?」
ベルゼリア
「記憶定着率が高い」
ルミエラ
「可愛い……」
エリシア小さく笑う。
ナターシャ
「よし。明日から燃費改善する!」
ベルゼリア
「感情分析を導入」
ルミエラ
「甘さ+安心、ですね♡」
エリシア
「一緒に学びましょう」
三姉妹、顔を見合わせ。
ほんの少しだけ。
競争ではなく協力の芽。
悪魔の杖
「勢力図が変わる!!」
聖盾
「家庭安定度、上昇」
聖鎧
「勇者の睡眠、深度良好」
聖剣
「戦いではなく、選択だ」
夜は静か。
だが。
三姉妹は初めて感じた。
“勝てない”かもしれない相手。
それは圧倒的な強さではなく
静かに積み重ねた有能さ。
そして。
揺るがない優しさ。
【次回:お弁当包囲網】




