第2話 朝食の覇権
キッチンは今日も戦場。
新婚生活二日目・朝。
勇者、まだ眠い。
キッチンから三方向の魔力反応。
ナターシャ
「朝は爆発だ!!」
フライパンからマグマ級の炎。
目玉焼きがプラズマ化。
ナターシャ
「高温で旨味を閉じ込めた!!」
悪魔の斧
「閉じ込めたというか封印したな」
悪魔の剣
「温度がボス戦」
ベルゼリア
「感情は栄養にならない」
無機質な銀色プレート。
完全栄養ブロック×3。
ベルゼリア
「一食で必要栄養素100%。誤差0.02」
悪魔の槍
「朝から最終兵器感」
ルミエラ
「勇者様は何もしなくていいんですよ?」
ふわふわパン。
極上スクランブル。
そして距離ゼロ。
ルミエラ
「あーん♡」
悪魔の杖
「出たァァァ!!直接攻撃!!」
エリシア
「……普通でいいのでは?」
湯気立つ味噌スープ。
焼き魚。
炊きたてご飯。
香り、静か。
聖盾
「防御力の高い布陣だ」
聖鎧
「勇者の心拍、安定傾向」
勇者、席につく。
目の前に四種類。
・赤く発光する肉
・金属光沢ブロック
・天使距離あーん
・湯気立つ味噌
勇者
「情報量が多い」
ナターシャ
「まずは私だ!!朝は体温上げろ!!」
肉、投入。
ジュワッ――
テーブル焦げる。
勇者、汗だく。
「うまい!!けど命がけ!!」
ナターシャ
「愛は熱量だ!!」
悪魔の斧
「火事だ火事」
❄ベルゼリア
「落第、次はわたし」
完全栄養ブロック。
勇者、かじる。
「……未来の味がする」
ベルゼリア
「効率的」
悪魔の槍
「情緒、氷点下」
ルミエラ
「はい♡あーん♡」
勇者、赤面。
パクリ。
「……うまい」
ルミエラ勝利の微笑み。
ナターシャ
「距離が近い!!」
ベルゼリア
「心理戦」
悪魔の杖
「これは強い」
最後に
エリシア
「どうぞ」
味噌スープ。
一口。
静寂。
勇者、止まる。
もう一口。
もう一口。
……涙。
三姉妹「!?」
勇者
「……朝だ」
全員「???」
勇者
「ちゃんと朝の味がする」
湯気。
塩気。
落ち着く温度。
「戦わなくていい味だ……」
三姉妹、固まる。
ナターシャ
「豪華だろうが!!」
❄ベルゼリア
「栄養も完璧」
ルミエラ
「愛も込めました♥」
勇者
「全部すごい。でも……」
味噌汁を見つめる。
「これ、帰ってきた感じがする」
沈黙。
エリシア
「豪華である必要はありません」
「満たすことが大事です」
静かな言葉。
ナターシャ、ぽかん。
ベルゼリア、演算停止。
ルミエラ、首傾げ。
悪魔の杖
「概念攻撃だァァ!!」
悪魔の剣
「派手さが負けた!?」
悪魔の槍
「“日常”という最強属性」
悪魔の斧
「地味が勝った!!」
ナターシャ
「……なら明日は普通に作る」
ベルゼリア
「データ再構築」
ルミエラ
「あーんは続けますね?」
エリシア
「それは自由です」
勇者
「自由!?」
そのとき。
ナターシャ、味噌汁に唐辛子投入。
ベルゼリア、栄養強化剤追加。
ルミエラ、距離ゼロ接近。
味噌スープ、赤く光る。
エリシア
「やめてください」
爆発。
キッチン黒焦げ。
勇者、すすをかぶる。
でも。
手には味噌椀。
まだ温かい。
勇者、笑う。
「……にぎやかな朝だな」
三姉妹、顔を見合わせ。
ほんの少し照れる。
エリシア、小さく微笑む。
聖盾
「家庭、維持成功」
聖鎧
「幸福値、上昇」
悪魔の杖
「次回は弁当戦争だな!!」
勇者
「やめて」
豪華と満たすは違う。
だが。
カオスは常に添えられる。
【次回:洗濯物の領土問題】




