第1話 勇者、魔界に降臨。地獄の奪い合い開戦。
城門が崩れる。
粉塵の向こうから、勇者ユウ=アルトリアスが歩いてくる。
鎧に傷なし。
息一つ乱れず。
光の聖剣を静かに握る。
「魔王ヴォルグラム。出てこい」
声は低く、真っ直ぐ。
かっこいい。
本当にかっこいい。
だからこそ
最悪だった。
魔王城のバルコニー。
三姉妹の魔力が、限界突破。
❄長女:ベルゼリア・スパイシア
冷酷理性派。
蒼銀の長髪。
分析魔眼持ち。
「戦闘効率、判断速度、剣速……理想値」
恋すらロジックで奪いに来るタイプ。
危険度:高。
次女:ルミエラ・スパイシア
天使顔。
常時微笑み。
裏で策謀。
「運命ですね♡」
可愛い顔で戦争を起こせる女。
危険度:極高。
三女:ナターシャ・スパイシア
情熱暴走型。
赤髪ポニーテール。
直情型破壊神。
「好き!!!」
思考より先に爆発。
危険度:災害。
三者、視線固定。
勇者にロックオン。
ナターシャが一番に跳んだ。
「勇者様ぁぁぁぁ!!!」
隕石のように着地。
地面、陥没。
勇者、目を見開く。
「……誰だ?」
直後。
氷の結晶が空間を凍らせる。
❄ベルゼリア、優雅に降臨。
「名乗る必要はない。あなたは私のものだから」
勇者、後退。
「は?」
背後から羽のような魔力。
ルミエラが微笑む。
「怖がらなくていいですよ。結婚しましょう?」
勇者、固まる。
「え?」
三方向包囲。
距離ゼロ。
殺気ではない。
恋圧。
重い。
非常に重い。
ナターシャ、腕を掴む。
「私が一番に見つけた!」
❄ベルゼリア、反対の腕を掴む。
「論理的に考えて長女優先」
ルミエラ、背後から抱きつく。
「妹は守られる存在です♡」
勇者、完全拘束。
「ちょっと待て。魔王は?」
三人同時。
「そんなの後でいい」
ハモるな。
玉座の間。
魔王ヴォルグラム、額を押さえる。
「ほら始まった」
大魔導士ゲラハーゴン、楽しそう。
「ほっほほ。若いですなぁ」
「止めろ」
「止まりませんなぁ」
城外。
三姉妹の魔力が衝突。
炎、氷、光。
爆発。
城壁崩壊。
塔一本、消滅。
勇者、引きずられながら叫ぶ。
「戦え!!俺と戦え!!」
誰も聞いていない。
ナターシャ「強い男は情熱に弱い!」
ベルゼリア「合理性を理解できる女性が最適解」
ルミエラ「癒し系が最後に勝ちます」
ナターシャ「うるさい腹黒!」
ベルゼリア「感情任せの筋肉」
ルミエラ「氷女」
三方向から魔力砲。
勇者、巻き込まれる。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
直撃しないギリギリ。
聖剣が自動防御。
光の結界展開。
勇者、膝をつく。
四天王戦より汗だく。
武器庫。
悪魔の杖、遠い目。
「始まりましたね」
悪魔の剣。
「勇者、まだ魔王に会ってないぞ」
悪魔の槍。
「四天王よりキツいだろ」
悪魔の斧。
「城の保険、降りるかな……」
城中央。
勇者、ついに叫ぶ。
「俺は魔王を倒しに来たんだ!!」
三姉妹、ぴたりと止まる。
一瞬の静寂。
そして。
ナターシャ「じゃあ倒したら結婚ね!」
ベルゼリア「その後、婚姻契約」
ルミエラ「式は魔界式で」
勇者、絶望。
「話が通じない……」
玉座の間。
ヴォルグラム、深く息を吐く。
「勇者よ」
静かに呟く。
「お前は強い」
間。
「だが相手が悪い」
ゲラハーゴン、目を細める。
「ほっほほ……」
小さく。
「この物語はもう戻れませんな」
城、三度目の崩壊音。
魔界、亀裂拡大。
原因:恋。
最大被害者:勇者。
地獄のハーレム戦争、正式開戦。




