序章 勇者、降臨。そして魔界崩壊の予兆
魔界の魔王城・武器庫。
悪魔の杖が紅茶をかき混ぜていた。
「最近、戦争もなくて平和ですねぇ」
悪魔の剣が磨かれながら答える。
「主の娘たちが暴れない日は貴重だ」
悪魔の槍が背伸びする。
「今日も平和祈願しとく?」
悪魔の斧が頷く。
「城が壊れませんように」
その瞬間。
ドゴォォォォォン!!!
城全体が揺れた。
悪魔の武器 四本、同時に沈黙。
「……フラグ回収早くない?」
空が裂ける。
光。
勇者ユウ=アルトリアス降臨。
「魔王を討つ」
短い。
重い。
そして早い。
◆炎獄のバルザック、業火展開。
勇者の聖剣が、横一閃。
炎、消滅。
「えっ」
終了。
◇氷皇フロストリア、絶対零度。
勇者、一瞬で踏み込み。
聖剣で縦に一閃
氷、粉砕。
「は?」
終了。
■地殻王グランディオ、地割れ発生。
勇者、跳躍。
斜めに聖剣で斬り。
岩、崩壊。
「ちょ待て」
終了。
△嵐帝ヴァルシュナイト、不可視高速。
勇者、目を閉じる。
一瞬。
光。
聖剣で風、停止。
「理不尽」
終了。
所要時間、約7分。
四天王、全滅。
◇◇◇
魔王城の玉座の間。
大魔王ヴォルグラム、顎に手。
「……強いな」
城がまた揺れる。
「いや強すぎるな?」
大臣に視線を向ける。
そこに立つのは
大魔導士ゲラハーゴン。
全属性を操る老魔導士。
杖先に、炎・氷・風・地の光が淡く揺れる。
「ほっほほ」
水晶を覗き込む。
「見事ですなぁ」
「見事じゃない。一瞬で四天王が消えた」
ヴォルグラム真顔。
「予算どうする」
「それより」
ゲラハーゴン、水晶を別角度へ。
そこにはバルコニーの三姉妹。
まだ勇者とは遭遇していない。
だが。
ナターシャ「なにあれ超かっこいい!!」
ベルゼリア「合理的に美しい……」
ルミエラ「神様ありがとうございます」
歓声。
キラキラ。
目が危ない。
ヴォルグラム、青ざめる。
「やめろ」
「何がです?」
「目が恋する直前の色をしておる」
ゲラハーゴン、にやり。
「ほっほほ、恋もまた魔法ですな」
空気が一瞬冷える。
ヴォルグラムがゆっくり振り向く。
「……何を企んでおる」
「さて?」
全属性の光が一瞬だけ強まる。
「若い芽は、よく燃える」
「燃やすな」
武器庫。
悪魔の杖が震える。
「なんか嫌な予感しかしません」
悪魔の剣が低く言う。
「勇者より厄介なのは」
悪魔の槍が遠い目。
「恋の暴走だよな」
悪魔の斧、静かに。
「城、保険入ってたっけ?」
城門が崩れる。
勇者、進む。
三姉妹、上から見下ろす。
まだ勇者とは出会わない。
だが運命は、秒読み。
ゲラハーゴン、ほくそ笑む。
「ほっほほ……」
小さく呟く。
「この物語はもう終わりです。」
ヴォルグラムが叫ぶ。
「始まってもいないわ!!」
魔界、静かに亀裂拡大中。
続く。




