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第1章 はじめに――『サン・ジェルマン伯爵』とは何者か
サン・ジェルマン伯爵(Count of St. Germain)は、18世紀のヨーロッパで謎めいた貴族として活動していたとされる人物である。
歴史上はフランス王室や各国の宮廷を渡り歩き、化学・錬金術・音楽・政治など多彩な分野に秀でた才人として評判を得た。にもかかわらず、その出生や素性に関してはほとんど情報が確定しておらず、当時から「300年あるいは1000年を生きている」「奇跡のような錬金術師」「永遠の命を手にした人物」といった噂が飛び交っていた。
さらに、オカルト的な伝承ではサン・ジェルマン伯爵が実は「数千年以上前から生き続けている不死者」であり、旧約聖書に登場するカインと同一人物だとする大胆な説も存在する。
こうした“超長命の人間”というイメージは、19世紀から20世紀初頭にかけてのオカルティズムや神秘思想のブームに乗り、現在に至るまで語り草になっている。
本稿では、まずサン・ジェルマン伯爵の逸話や伝説を整理し、続いて、仮に現代もなお彼が生存しているとしたら、いったいどのような人物像が推定されるのかを考察する。




