爆発すれば
最初に手を挙げたのは宿直室で寝ていた駅員の向井だった。
「ええ大丈夫ですよ…今晩駅に居たのは、駅舎に居た駅長、梅本、浜崎、沢田、そしておれ。全員この場に居るんで大丈夫だと思います…」
続いて運転士の梅本が手を挙げる。
「さっき線路やホームを見て回りましたが…これといった異常などはありませんでした…」
最後に、徹夜で車両点検をしていた浜崎が手を挙げた。
「車両も異常とかは…なかったです…火元からも離れてたんで…」
各々報告をしているが、さっきの自信はどこへやら。いざ自分の番が来た瞬間、ずっと下を向き視線があっちへこっちへ飛んでいる。
私は辺りを見まわし声が震えないようにお腹に力を込めた。
「みんな報告ありがとう。さて、どうしようか…」
「駅長、警察と消防と…本部には、何か報告はしたんですか?」
「沢田くん、今このタイミングでこのことを外部に漏らす訳にはいかないんだ。だからどうしようかと悩んでいるんだよ…」
「ああ…お召し列車が来るから、ですか……」
実は3日後に行幸のために天皇陛下が乗ったお召し列車がこの駅に立ち寄る。そのためトラブルにより運休などができない状況なのだ。悪天候や地震による自然災害ならまだしも、人災や職員のミスといったことでは尚更。
もしお召し列車を止めたとならば、駅員全員懲戒解雇はもちろんのこと会社の名誉にも関わる。ほんの少しのぼや騒ぎでも、大きな問題に繋がってしまうのだ。
線路への影響も人的被害もない今、本部への報告や警察消防への通報は自分たちの首を絞めることになってしまうだろう。きっとみんなそれが分かっているからこそ、あまり口を開けられなかったのだろう。
「とにかく、みんな一旦解散してそれぞれの持ち場に戻るように、以上!」
皆が分かりましたと言って静かにバラけていった。そして私は1人残り、火元をじっと見つめていた。
(このまま給油パイプを経由して線路の下の燃料タンクに引火していたら……)
この駅を発着する列車は全て軽油で動くディーゼルカー。そのためこの駅の線路の下には給油用のタンクがあり、所々給油用のパイプが地面に頭を出している。そのため、火の取り扱いを厳重にしておかないと駅が丸ごと爆発する危険がある。
(丸ごと爆発してしまったら、なあ…)




