最悪の目覚め
AM03:02
「起きろ!火事だ!」
私は宿直室へ瞳孔全開の眼で駆け込み、腹の底から叫んだ。
部屋で寝ていた向井と梅本が目をこすりながらボソボソ何か言っている。
その辺のマンガ本で頭を叩いてやりたいところだがそんな場合じゃない。
「1人1個消火器を持って4番線に来い!」
そう言い残し駅長の私は消火器を持って足早に火元へと向かった。
私たちが勤務している西河内駅は中国山地のど真ん中、瀬戸内海側と日本海側の丁度中間に位置している謂わば交通の要衝。松江や広島へ向かう急行列車も停車する駅でこの駅は終始発としている列車も少なくない。
そのため山の斜面と川の間という歪な立地ではあるものの、サッカー場2つ分くらいの大きさの小さな田舎町にしては大きめな駅。
横並びになっている4つ線路の真ん中にホームがあり外側2つの線路はホームがない車両置き場、そしてその外側の線路の端っこに車庫があるという構造。ちなみに駅舎と宿舎は同じ建物で山側に位置している。
今回火事の現場となったのは駅舎とは反対の川側、ホームのない車両置き場となっているところだ。
起こしにいった他の駅員や宿直員の応援もあり、火はすぐに消すことができた。そして火が収まってからしばらく経った後、火災現場に居た数人と火元を囲った。皆が下を向き黙り込んでいる。
黙っているだけでは時間が無駄だと思い、駅長の私は声を上げた。
「怪我人や体調不良者はいないか、みんな大丈夫か?」
他の駅員は私の言っていることなど聞こえていなかったかのようだった。各々目を合わせ誰から話そうかと指を指したり頷いたりしている。見ていてあまり心地よいものではない。
「君たち!何か話したいことがあるのなら手を挙げてからいいなさい!」
少し張り上げた私の声に驚いたのか皆一瞬動きが止まり、下を向き黙り込んだ。
(だめだ、これではどうしようも……)と思っていた時だった。




