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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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テレーザという旅行者

テレーザの正体?

「あの娘、テレーザと言ったな」

そうつぶやきながら、職場の資料を探す孝太郎。


孝太郎は倭(やまと)の中央政府、外交局に勤める役人だ。

外交局、そこは倭と諸外国との貿易をはじめ様々な外交を一手に引き受けている。

それだけに、諸外国に関する資料も豊富だ。


「旅行者」は通常出身国よりファンタジーワールド(この素晴らし世界)共有のリストに名前が載る。

出発日、帰国予定日、滞在予定国などの情報と共に。

外部には出回らない資料だが、外交局職員なら容易に閲覧することができた。


テレーザ、性別、女性。年齢15歳から18歳。


と検索システムに条件を入れる。

すると、十数名のただいま旅行者として登録されている「テレーザ」が画面に表示された。

顔写真付きで。


しかし、我が家にいるあの「テレーザ」の姿はない。

白い肌、透き通るような瞳、そして銀にちかい金髪。

条件を変更して何度か検索をしても、やはりあの「テレーザ」は見当たらない。


「どういうことだ、旅行者ではないのか」

と孝太郎。


「もぐりか、」

そう、正式には認められていないルートでの旅行者も一定数存在する。

正式な旅行者になるには、自国の政府、または王宮発行の許可証、そして後見人、旅の途中で何かあった時のための資金の残高証明、最低でもこれだけは必須だ。


それらを準備できない旅行者は闇のルートを使うのだ。

許可証を偽造し、後見人には名前だけを借りる、そして資金はほぼない。

無一文で日銭をかせぎながら、旅をするのだ。


しかし孝太郎は昨夜、ひとり夕食を摂る食卓で、給仕をしていた瑛子との会話を思い出していた。


「おい、あの娘を置いてやるのは構わない。

だが、その費用を家計から出すことは許さない、すべてお前の金でなんとかしろ」

と瑛子に言った。


そう言われた瑛子は、


「わかっていますよ、私のパート代を使いますので。

でもあの子は旅の資金をちゃんと持っていますよ」

と答えた。


資金には問題がない、そして何よりあの子は上流家庭の娘だろう。

見た目が庶民とは違う。

細かな所作は上品で、それだけでも育ちの良さが漂っている。


「国の許可が出ないわけがない」

孝太郎は思った。


ならば、

何かから逃げるためか。

上流階級の令嬢であっても、訳があり逃亡するものがいると聞いたこがある。

そして、王族の中でも、何かの事情で「療養中」と称されて表舞台から姿を消す王子や王女がいる。

名を隠して、旅行者と偽り諸外国に逃がしている、そんな噂があることも知っていた。


「テレーザ、王族」

そう検索すると、王族データベースの画面に、


「テレーザ 美の国第4王女。15歳 現在、体調不良により無期限の療養中」

と表示された。


そして画面にはテレーザの顔写真も表示されている。

髪を結い上げ、ティアラを付け王女の式服を着ている。


「どうだか」

孝太郎はこの顔写真の王女が今自宅にいるテレーザと同一人物とは思えない。


美の国と言えば5大王国の一国だ。その王女がこんな辺境の国にいるわけがない。

しかも我が家に。

普通に食卓に座り、妻の作った夕食を箸を使って食べているなんてあり得ない。


「いや、ちがうだろう」

と孝太郎はつぶやく。


あの、テレーザ。

美の国の王女であるなら、もっと、

と孝太郎は思った。


「もっと美しいはずだ」

と。


家にいるテレーザは異国の風貌で上品な顔立ちではあるが、美の国特有の美女、とは違っている。

仕事柄、美の国の人々と会うこともある、それはそれは美しい、男女問わず。

美を探求する国、その国民の容姿レベルはかなり高い。


しかしそんな圧倒的な美しさ、それがあのテレーザにはない。

いや、美しくない、そういう訳ではないが美の国の王女の美しさではない。

世界で一番美しい王女、そんな呼ばれ方をしている美の国の姫たちとは面立ちが違う。


孝太郎が悶々を考えていた。

若い娘の容姿にとやかく言うなんて。

なんだかテレーザに対して、申し訳ない気分になっていた。


普段、瑛子の事は

「不細工なおばさん」

と言い放つのにだ。


幸太郎はそれ以上の詮索はせず画面を閉じた。


ー彩の国、王宮ー


「ねえ、テレーザちゃんはどうしたのですか?ご病気だなんて、結婚が白紙だなんて」

そう嘆いているのは、彩の国、第5王子ホイだ。


「いたし方のないことでございます」

冷静にそう言うのは、ホイ王子の側近、ケインだ。


「彩の国と美の国の縁談はこれからも続行されます。妹君、イーライ姫と美の国王子、ジャン・ルドルフ様のご婚儀が検討されておりす」

とケイン。


ケインはホイ王子とテレーザの婚儀を取りまとめた立役者だ。

そして、テレーザの「姫君格付けランキング」での最下位と言う失態。

ケインの思惑通りだった。


これで美の国を格下として扱える。


しかし、美の国はテレーザの無期限の療養ということでこの婚儀を回避した。

テレーザは消滅させられたのだろう。


ケインにしても、それは大きな誤算だった。

いくらなんでも「消滅」させるとは。

5大王国の姫を。

自分の娘を。


「テレーザ様はもういらっしゃらないと思い、あきらめることですね」

とケイン。

もう次の手を打つことで頭がいっぱいだ。


ただ嘆き続けるホイも、無期限の療養が「消滅」と同意なことを知っている。


しかし、

「テレーザちゃんは、消されたりしていない。僕にはあの子の気配を感じることができるから。

必ずテレーザちゃんを見つけ出して見せる」

心で強く思っていた。


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