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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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一家団欒

楽しい夕食

テレーザが瑛子の家に来てから二日が経った。

いよいよ翌日の夕方には、この家の主である、孝太郎が出張から戻ってくる。


瑛子と葵はもちろん、尊もテレーザをこの家に留まらせるのに賛成だ。

そして次男の駆も、


「あいつ、ここに居させてやろう。

旅行者には親切にって学校でも言われているし」

とテレーザには好意的だ。


問題の孝太郎は、どんな反応をするだろうか。

テレーザにあからさまに高圧的な態度をとったり、酷い事を言ったりしなければいいが。


「ねえ、今日の夕飯は焼肉なの?」

と葵が言った。

買い物から帰って来た台所には、肉のパックが置かれていたからだ。


「そうよ、遅くなっちゃったから焼くだけ、手抜きよね」

と瑛子。


「じゃ、庭でバーベキューしようよ。天気もいいし、きもちよさそう」

と葵が言った。

狭い庭だが、テーブルとイスが置いてあり、屋外での食事ができるスペースだった。


「そうね、久しぶりに」

と瑛子。


この前、庭でバーベキューをしたのはいつだっのか。

まだみんな小学生だった。


材料を切り、葵が庭に運ぶ。

その光景を見ながら、テレーザは突っ立ったままだ。

そして、慌ててタブレットを眺めている。


しばらくして、

「お手伝いします」

とう言ってテレーザがやって来た。


「お手伝い」の意味は分かっているのだろうか、瑛子が心の中で思う。

今までの生活なら、そんな事には無縁だったはずだ。


「じゃ、テレーザはお皿運んで」

と葵が言う。


内心、瑛子は心配だったがテレーザは葵の指示通りてきぱきと「お手伝い」をこなした。

意外と手馴れているようだ。


準備が整い、葵が尊と駆に声をかける。

「ねえ、今日は庭でバーベキューだよ」

と。


コンロの置かれた庭のテーブルに、瑛子、葵、尊、駆、そしてテレーザがそろった。

みなで好き好きに肉を焼く。

テレーザにはトングとフォークが用意された、箸はまだ難易度が高いようだ。


「ねえ、ママ、奮発したねえ、お肉おいしい」

と葵。


「誰かの誕生日じゃねえよな」

と駆も言う。


「そんなんじゃないけど。せっかくテレーザが来てくれたから」

と瑛子。


「あした、父ちゃんがいいって言えばそれでいいんだよな」

と駆。


「おいお前、父ちゃんに気に入られるように、ちゃーんとあいさつするんだぞ」

と駆がテレーザに言う。


瑛子としては駆がテレーザの滞在に好意的なのがうれしかった。

難しい年ごろの男子、他人が家にいるのを毛嫌いしてもおかしくない。


すると、

「テレーザは鳳凰館の管理人として居てもらうんだ。反対する理由がない。

無理に、取り繕う必要はないからな」

と尊が言った。


「ちゃんとご挨拶するわね」

とテレーザ。


「だから、無理しなくても」

と尊が言うと、


「愛想がいい方がいいじゃん。お前、わらってると少しはかわいいぞ」

と駆。


この言葉にすぐさま反応したのは、尊だった。

「色気ずいたこと言うんじゃないよ」

と駆にいう、なんだか恥ずかしそうだ。


「俺はな、毎日クラスの女子たちに囲まれてんだよ、理系で男しか周囲にいなかった兄いとは違う」

と駆。


「じゃ、彼女とかいるの?駆。」

と葵が口を挟む。


「ま、ぼちぼちとな」

と駆が答えると、


「なんだよ、中学生で彼女だと?百年早いってんだ」

と尊。


「兄いが引きこもってる間に俺は彼女とデートだ、どうだうらやましいだろう」


「デートですって?近所のイオン以外に行くのは許さないわよ」

と瑛子が言った。


「イオンだって?イオンでデート?だっさー」

と尊。


「お前にだけは言われたくねえよ、彼女、いんのかよ」

と駆も言い返す。


「ねえねえ、テレーザには彼氏っているの?」

と葵がテレーザに聞く。


こっそりと「彼氏」「彼女」「デート」を調べるテレーザ。

しかし、調べてもピンとこない。


「彼氏ですか?」

困惑して言うテレーザ。


「彼氏がいたら旅行者なんかやってるわけないじゃん、考えろよねーちゃん」

と駆。

周囲は笑い声に包まれていた。


そう、私には。

何か、将来に関して重大なことが決まっていたような気がする。

なんだろう。


やはりそれ以上は思い出せない。

尊に、魔法での高速移動による弊害だといわれ、アドバイス通り休養をしっかりと摂っているが、

ここに来た時から状態ははぼ変わらない。

不安もある、自分は何者なのだろう、わからない自分に苛立ちさえ覚える。


しかし、ここの人々はそんな気持ちを払拭してくれる。

一緒にいると安心できる。

あと少し、ここに居たい。


「そう言う、葵は彼氏ってお持ちなのでしょうか?」

とテレーザが聞き返した。

自分の思いを心にしまって、明るく言うテレーザ、少し堅苦し話し方だが。


「それは、内緒よ」

と葵。


「じゃ、いないってことだな」

と尊と駆に同時に言われる。

また皆の笑い声があふれた。


こんな笑い声を聞いたのは久しぶりだ。

会話の弾む食事っていうのでさえ、このことろすっかり縁がない。


かつての和気あいあいとしていた我が家。

それが、いまでは。


しかし、テレーザが以前の家族に戻してくれるかもしれない、

この子の存在が歯車が狂った我が家を、元通りにしてくれるかも。

一家団欒があたりまえだった、あの頃のように。

そう思いながら、瑛子はテレーザの横顔を眺めていた。

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