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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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ショーの始まり

ハプニング発生!

「姫君格付けランキング」のメインイベント、総勢25名の姫たちによる、

ステージパフォーマンスがいよいよ開幕だ。


舞台裏の控室には

「あと30分」

という表示が出ている。


出場する姫たちは衣装の最終チエックに余念がない。

テレーザ一行、と言っても本人とレイア、エマの総勢3名なのだが。もにわかに緊張が高まってきていた。


「お客さん、満員です」

とエマが興奮した様子で話す。


「そりゃあ、これだけの姫たちが一堂に会する機会なんてここだけですもの」

とレイアはやや冷静だ。

しかし、レイアにとっても初めての「姫君格付けランキング」の本番。

内心、心が躍っていた。


「さ、仕上げを」

そう言いながら、荷物戸棚の扉を開けるエマ、がしかし少しの違和感を感じた。

扉が少しだけ歪んでいたのだ。


不思議に思い、中を開けるとそこには、

ティアラが乱暴に箱から出され投げ入れるよに放り込まれていた。

そして、薄紫のチュールがなくなっている。


「なんてこと」

思わず声をあげるエマ。

レイアも慌てて駆け寄った。


「盗まれたわ」

とレイア。

この会場に、窃盗目的の輩が入り込むことは考えにくい、盗んだのは嫌がらせが目的だ。

チュールがなければテレーザの衣装はとてつもなく質素だ。


そしてティアラが残されていたのは、「美の国王室」の刻印の付いたティアラ。

これに手を出そうものなら外交問題に発展する。

テレーザへの妨害のつもりなら、チュールを盗むだけで充分だ。


「開園、10分前です。出場の姫君たちは舞台袖までおいでください」

とアナウンスが入る。


「騒がないで」

とテレーザがレイアとエマに言う。

この開催関係者にもこのことは伝えないようにと。


「私はこのままでいい」

テレーザが着ていたのはキナリのシンプルなドレス。飾りも何もない。

そして、髪は結い上げてはいるものの、なんの髪飾りも付いていない。


「かえって美しさが際立つわ」

とレイアが言う。


「お姉さまの容姿があれば、ですがね」

と。


しかし、エマは動揺が隠せない。

チュールを戸棚にしまった時、確かに鍵をかけた。

でも、その上に魔法をかけなかったのだ。


施錠したうえで魔法で防護しておけば、そう簡単に破られることはなかったはずなのに。

その魔法が使える自分が、そうしなかった。


これが何か重大なことだったら、テレーザの運命を変えるほどのことになってしまったら。

自分の油断が、取り返しのつかないことにつながるかもしれない。


「エマ、気にしないで」

そんなエマの心情を察したテレーザが言う。


「何があっても、エマのせいじゃないよ」

とテレーザ。


「あの」

エマが何かを言おうとしたが、その言葉を待たずにテレーザはその場を離れた。

ステージの袖まで行くテレーザ。周囲は、これでもかと着飾った姫たちばかり、その中でも気後れすることもなく堂々と胸を張り列の最後に並んだ。


「今年の王族フェスタ、最大の一大イベント、姫君格付けランキングの開幕です」

ステージの上で司会者が高らかに宣言し、楽隊によるファンファーレが流れた。


スポットライトに照らされまず登場したのは、奏の国の王女、リーズル・ルイスだ。

輝くようなドレスをまとい、ランウェイを歩くリーズル。

高揚した笑顔は自信に満ちていた。


そして、次々と王女たちがステージに現れた。

どの姫も、輝くばかりの美しさだ。

満員の観客席からは拍手と歓声が沸き上がっている。


「さあ、次は健の国、マーシャ・ローデ王女」

と司会者。

これでちょうど半分の姫たちがステージに出た。

姫たちは順序良く、スムーズにステージに上がり、そしてランウェイを歩く。

一度しかリハーサルをしていないとは思えない。


そしていよいよ

「さあ、最後の出場者です。美の国、テレーザ王女のおでましです」

と司会者が告げると、テレーザがステージの中央に向かって歩いた。


スポットライトがテレーザを包む。

その姿に、一瞬観客席からざわめきがおこった。

今まで登場した、いやこれまでのにもこんな姿で現れた姫は初めてだ。


しかしテレーザが動じることもなく、ステージを歩く。

すると、観客の中にいた小さな男の子が、ステージの傍までやってきてテレーザに手を伸ばしている。

よく見ると、その手には花が握られていた。


その子に近寄るテレーザ。

「あの、これを頭に付けて、かわいくなると思うよ」

と男の子が言う。


テレーザは受け取った花を耳にかけて、またステージの中央に戻った。

そして他の姫と同様にランウェイを歩く。


ランウェイの両サイドには、地の国らしくたくさんの花で飾られている。

その花々とまるで戯れるように歩くテレーザ。


その姿はまるで花畑に現れた女神のようだ。

観客がうっとりしながらその様子を見ていた。


テレーザのランウェイでのパフォーマンスが終わると出場した姫25名がステージで一列に並ぶ。

ちょうど真ん中にテレーザ、リーズル、マーシャが立っている。


「さあ、出場の姫たちに大きな拍手を」

司会者の言葉に会場からの声援はますます大きくなった。


ここで、楽隊が今年、世界的にヒットした、「愛すべきものに捧げる歌」を演奏し始めた。

合唱隊の子供たちが唄うその歌は、全世界の誰もが知っているほどその年に聴かれて唄われた曲だ。


一列に並んだ姫たちも皆口ずさんでいる。

手を叩きながら、身体を揺らしながら。


「愛すべきものに捧げる歌」のさびの部分に差し掛かった時、

司会者が持っていたマイクをリーズルに向けた。


咄嗟に顔をそむけるリーズル。

自分の歌声がマイクに乗って流れるなんて、あってはならないことだ。


急な事でいかにも驚いています、と言ったりアクションだが、

隣にいたテレーザには、あきらかにリーズルがマイクを避けているのが分かった。

それまでもリーズルが口パクで声を出して唄っていないことに気付いていたテレーザ。


「歌、嫌い?それとも」

眼でリーズルに問う。

と、同時に司会者のマイクの前に向くと唄い始めた。

テレーザの透き通った声が会場中にこだました。


「ふう、助かった」

リーズルはほっとした半面、喝さいをあびるテレーザを複雑な心境で見つめていた。

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