美の国へ 妨害
いよいよ美の国へ
「道が塞がれた」
とつぶやくオルト爺。
倭の国、オルト爺と婆の家。
居合わせた孝太郎と瑛子が思わず顔を見合わせている。
「道って?」
「塞がれた?」
不安な様子を隠せない二人。
オルト爺の一言で、美の国への通路に何かが起きたことを悟ったのだ。
「気付かれたのよ」
とオルト婆が言う。
「お前さんたちをテレーザの元に行かせたくない輩の仕業だ」
と爺。
「テレーザを王座に就かせたい勢力ね」
と瑛子が言う。
テレーザが国王より王位を譲渡される。
そのままテレーザが君主となり、時を見計らってホイも同様に王位に就く。
それが一番の好都合、そう判断したようだ。
テレーザの持つ王家の魂。
このまま、何もしないのなら後見人の出番はない。
ホイ王子も同様に美の国の君主となるなら、テレーザの持つ王家の魂にもその権限を加えなくてはならない。
その場合、後見人の承諾は必須だ。
しかし、後見人が美の国に行けない、そうなれば後見人が要らない手段をとるしかない、
それが目論見だ。
「お前さんたちを来させない方が得策と踏んだんだな」
とオルト爺が言う。
「テレーザだけを君主にはしたくないんだよな?あの王子を王位に就かせたいんじゃないのか」
と孝太郎。
「抜け道を見つけたようね」
と婆が言う。
「婚儀が決まっていたテレーザはね、いまだにあの王子の婚約者なのよ」
と婆。
「破談になってのでは?」
と孝太郎が言う。
「一方的にね。美の国側が。だから彩の国としては、あの婚儀はまだ有効なのよ。
だから、王位を継承したらホイと結婚させればホイも王位に就くことが出来るの」
と続ける婆。
「そして、結婚をすれば後見人を立てる必要はなくなる。あなたたちはもうお役御免となるのよ」
と婆が続ける。
「自立ってことね、でもテレーザもあの王子の意思も関係ないのね」
と瑛子が言う。
「なんとしても、美の国に行かねば」
と孝太郎。
「ほかのルートをさがしてみるが、間に合うか」
と爺が言った。
「私たちがあの子のところにたどり着かなければ、あの子の希望は叶わないということよね」
そう言う瑛子はなんだか悔しそうだ。
その時、オルト爺の家の扉を叩く音がした。
この家の誰かが訪ねてくるなんて。
爺と婆だけでなく孝太郎と瑛子も不思議そうに首を傾げた。
「危険な人物じゃ?」
と孝太郎。
爺もいきなり扉を開けることはせず、そっと様子を伺っている。
オルト爺が複雑な表情を見せた、それと同時に、
「あの、カミヤマです」
と扉の向こう側から声がした。
「カミヤマ?」
と孝太郎。
あのカミヤマジュンだ。
あいつがここを知っているだなんて。
「彼は前にもここに来たことがあってね。
まあ、策略家ではあるが根は悪い奴ではない」
と爺。
「あともう一人は誰かしら?」
と婆が言う。
カミヤマジュンともう一人誰かがいる気配がするのだ。
「家内といっしょに来ております。」
とカミヤマが言う。
ドア越しに、女性の声も聞こえてきた。
「ショウコさん?」
と瑛子が言う。
その声はカミヤマの妻ショウコのものだ。
「じゃあ、開けてやるか」
と爺がそう言いながら扉を開ける。
そこにはカミヤマジュンが妻のショウコを伴い立っていた。
オルト爺と婆の家に招き入れられたカミヤマ夫妻。
そこの孝太郎と瑛子がいることを知っていたようだ。
「急がないと」
そう言いながら話を始めたカミヤマ。
「きみたちを特別なゲートに案内するよ、セレブ御用達だ」
とカミヤマが言う。
「ゲートって」
と孝太郎と瑛子。
まるで二人がどこかへ「遠出」することを知っているかのようだ。
「きみたちを美の国へ送る」
とカミヤマ。
「なぜそれを?」
孝太郎が思わず声をだした。
「理由は聞かないで。あなたたちの到着を待っている人がいるんでしょう?」
とショウコが言う。
「急ぎましょう。今出ればぎりぎり間に合う」
とショウコ。
「魔法での移動なら一瞬だが、ゲートを使うとなるとそれより時間がかかるからな」
とカミヤマも言う。
「荷物は?」
「まだ家なのか、仕方ないこれから速力でお前の家に寄って、荷物を持ち次第、セレブゲイトへ連れて行く」
とカミヤマ。
「セレブゲイト」
これはここ倭の国の上流階級専用の移動手段だ。
ここ、倭の国から他国へ移動するためには、
長距離電車と、ゲートがある。
一般のゲートと比べると、数倍の速さで目的地に着くセレブゲイト。
これは厳正な審査を通過した上流階級の国民が、高額な年会費を払い使うことが出来る。
あと、政府専用ゲート。
これは王族や国の要人など専用だ。
移動魔法と同じくらいのスピードだ。
さすがに、政府専用ゲートを使うことは、役人である孝太郎であっても不可能だ。
それ以外、今一番早く美の国へいけるのは、カミヤマが勧くれているセレブゲイトのみだ。
「本当に美の国へ最短で行けるんだな?」
と孝太郎。
カミヤマに腕をつかまれ、既にオルト爺の家から連れだれている。
家の前に止められていた車に、飛び乗るカミヤマ、ショウコと孝太郎、瑛子も続いた。
「オルトさんたちは?」
と瑛子が言う。
オルト爺と婆が車に乗り込む様子はない。
「わしたちは、ここであんたたちを護衛しておくから」
とオルト爺。
「テレーザによろしくね」
と婆。
「さあ、出してちょうだい」
とショウコが言う。
瑛子と孝太郎、いまだにカミヤマ夫妻の真意をはかりかねている。
しかし、
一刻でもいいから早く美の国へ行きたい。
何をさておいても、これが最優先だ。
孝太郎と瑛子は黙って顔を見合わせて、お互いに頷いた。
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