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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国 王宮」王と王女

本音で話せる?テレーザ

「ねえ、お父様」

とテレーザ。


「聞いても良い?」

となんだか気まずそうに言う。


そんなテレーザの様子は察していたが、父娘二人きりという滅多にない状況の今、

出来るだけ、腹を割って話がしたい。

それが、ジャン・グレゴリー国王の父としての本心だ。


笑顔で頷く父に向かい、


「私が生まれた時は嬉しくなかった?私、失望させちゃったの?」

と真顔で聞くテレーザ。


美の国、国王夫妻に4人目の御子が誕生する。

その話題は国中が歓喜した。


「すでに3人の姫君がいらっしゃる、次こそは王子を」


「お姫様方も愛らしいけれど、凛々しい王子様がいらしたら、王家はますます繁栄なさるだろう」


「王子様のご誕生、心から願っているわ」


「王様も王妃様も、口にお出しにはならないが、同じことを思っているはずだ」


国民はみな、4人目の御子は男児を望んでいた。

しかし、生まれたのは王女だった、4人目の。


国王が生まれた王女に中々会いに行かなかった、王妃の産後の肥立ちの悪さは落胆のせいだろう。

いまだに語り継がれるテレーザ誕生の際、まことしやかにささやかれた話は山のようにあった。


それはテレーザの成長と共に本人の耳にも入ることとなる。

いてもいなくても誰も気に留めない存在。

それは致し方無い事だ、自分は父と母、そして美の国の全国民をがっかりさせた「ついでの王女」なんだから。

そんな自己否定がテレーザの心に深く刻まれていた。


「テレーザ、確かに、少し落胆したのは本当だ。しかし、疎んじる気持ちなどなかった。愛する気持ちは姉たちと同様に持ち合わせていたのだが、忙しさにかまけ、言い訳にしてついお前の事を後回しにしてしまった。4番目の娘だからつい。わたしも、父親として未熟だった。

今更だが、許してほしい」

と父が言う。


「それなら、やはり私がいなくても支障はないわよね」

とポツリと言うテレーザ。

あの「消滅」のことだ。

あの時、最終的に決断をしたのは父だから。


「しかしテレーザ、そなたを消滅させようとしたことは事実だ。あの状況で、そのままそなたを彩の国に嫁がせるわけにはいかなかった。それが国王としての判断だ。

だが、父としては苦渋の選択だった」

と続ける父。


「そう」

とテレーザは小さく頷いた。

父の言葉を素直に受け取ることが出来ない自分がいる。


いままで、美の国で受けてきた仕打ち。

ないがしろにされて、邪魔者にされて。

外交の道具のように、他国へ嫁げと言われ、それが破談となればあっさり「消滅」

それが、自分の辿った運命だ。


今、美の国の王族の中で、自分が唯一「王家の魂」を持つ。

だから、こんなことを言うのだろうか。

機嫌を損ねないように。


「信じられない、か」

と父がつぶやいた。


「お父様がどうお考えになっていようが、私はお姉さまに王家の魂をお渡しします。

そして、ただのテレーザとして倭の国に戻るわ」

とテレーザが言う。

その言葉を聞いた父の心に、安堵の鼓動が走ったことをテレーザは見抜いていた。


「私は、そういう存在よね」

と心で思うテレーザ。


「一つだけ、お願いがあるの」

とテレーザ。


「これから、都留田ご夫妻がここに来ることになる。

都留田ご夫妻と、葵たちを傷つけることなく無事に、倭の国に戻してほしいの」

とテレーザは言った。


父が何を思っていてもいい。

しかし、葵たちに危害を加えられるような事だけは避けたい。

ただ、安全に倭の国に帰ってもらいたい。

これがテレーザの一番の願いだった。


「大丈夫だ。彼らを無事に故郷(倭の国)に帰すと誓おう」

と父が言う。


「これくらいは信じていいか」

とテレーザは内心思いながら父の顔を見た。


「安心したわ。じゃあ、私たちもそろそろ城に戻りましょう」

とテレーザが言う。

小屋の出口へと向かうテレーザに、


「まだ気になることがあるのでは?」

と父が声をかけた。


気になること。

そうだ、ずっと気にしていること。

エマの消息だ。


「そなたの特別な存在(大切な侍女)のことを知りたいのではないのか」

と父が聞いた。


父は知っているのだ。

とテレーザは思った。

自分の身代わりとして、エマが「消滅」の矢に射抜かれたことを。


しかし、王族ではないエマにその矢は効力を発揮しなかったのではないだろうか。

そうテレーザは考えている


だから、エマは無事でどこかにいるはず。

と。


しかし、エマはあくまでも自分の侍女だ。

自分は王女としてやるべきことがある、今は国の窮地だ。

侍女の事を優先させるわけにはいかない。


父に言われて黙り込むテレーザ。

テレーザの気持ちを察した父が、黙ってテレーザの手を取った。


父と並んで、おままごとの家をでるテレーザ。

一歩外に出た途端、小屋の中では感じなかった「気配」がテレーザと父を包み込んだ。


「待ち構えていたのか」

と父がに苦笑いをした。


ホイの専属魔法使い、マルクだろう。

国王とテレーザ王女をずっと監視していたのだ。

小屋の中では、ダイナ夫妻の防御のお陰でその力は及ばなかった。


ここから先は、マルクに見張られている。

このまま、大人しく黙って威厳の間に戻れ、そういうことだろう。


「早く、終わらせよう、それから」

と父が小さな声で言った。


「それから、エマを探す」

とテレーザも心でつぶやいていた。





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