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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国 王宮」おままごとの家

国王に対面する葵たち

「さあ、お父様」

そう言われて小屋に入る父、国王。


中は小さな居間と、台所、そしてクローゼット付きの寝室がある。

小さな小屋、とはいえなかなかの一軒家、庶民から見れば豪邸だ。

居間のソファを父にすすめるテレーザ。


父が座るのを見ると、テレーザはその父の前にひざまづく。

そして頭を下げて、


「お父様、ジャン・グレゴリー国王陛下、わたくしテレーザ王女はこの美の国に戻ってまいりました」

と帰還の挨拶をする。

この国の王族が、諸外国や遠方から帰還したときは、まずこうやって国王にその報告と挨拶をする。

これがしきたりだ。

やっと父に帰還の挨拶をすることが出来たテレーザ。

少し安堵した表情だ。

父、国王はテレーザの言葉を聞きくとゆっくりと頷いたあと少し体を浮かせてそして。


テレーザの頬に自分の手をあてた。

そして、その頬を優しく撫でる。


「よく戻った」

と一言。

それから、テレーザを自分の隣に座らせると、

その身体を引き寄せ、強く抱きしめた。


「本当に、よく生きていてくれた」

そう言いながら。


テレーザはというと、父に抱きしめられながらも戸惑いを隠せない。

今まで、こんな風に父から、いや母からも抱きしめてもらったことなどないからだ。


それに、

「生きていた」

その言葉を聞いた瞬間に、自分はやはり「消滅」させられる運命だったのだと改めて気付いた。

それを、姉たちが助けてくれた。

王の意思に背いて、生きながらえた自分。

それなのに、今ここに居ることを父は喜んでくれている。

疎まれても、嫌悪を持たれても仕方ないのに。

抱きしめられたほんのわずかな間に、テレーザはそんな思いがぐるぐると頭の中をめぐっていた。


「その顔をよく見せてはくれないか」

と父がテレーザに言う。


父の両手に頬を挟まれたまま、テレーザは父を見る。

父ももちろん自分の事を見ている。

その目は穏やかで温かい。

そして、父の心も温かい。


父は自分を憎んではいない

そう確信したテレーザ。


「ここは、お前の誕生日に贈られたものだな」

と父が周囲を見回しながら言う。


この家の中、どこも清潔でとてもしばらく放置されていた様子はない。

テレーザがいない間も誰かが管理をしていたのだろう。


「さあ、お父様」

そう言いながらテレーザが自らお茶を入れて父に振舞う。


台所で湯を沸かし、自分で揃え食器に茶の用意をすると、自分の手に持ち居間に運んでくるテレーザ。

父の前に白く細い手が茶器を置いた。


テレーザが入れた紅茶が父の目前に並んだ。

少しだけ砂糖を入れ、そしてレモンを搾る。

それが父が好きなお茶の飲み方だ。


「どうぞ」

そう言われてお茶を口にする父。


美の国の王女であっても、お茶の入れ方くらいは礼儀作法として身に着ける。

しかし、今のテレーザの所作はいかにも、普段からやっているように手慣れたものだ。


「いい香りだな」

とお茶をすすりながら父が言う。

その言葉に微笑みながらテレーザも自分のお茶を飲んだ。


「お父様、あまり長くここにはいられないから、飲みながら聞いてください」

とテレーザが切り出した。


テレーザは今までのいきさつを父に話す。

そして、自分の将来の事。


「私は王位に就こうなどとは思ってもおりません。

お姉さまに私の持つ王家の魂をお渡しするわ、それならばお姉さまが次期女王になれるでしょう?

予定通りに」

とテレーザが言う。

テレーザのはっきりとした言葉を聞いた父は意外な顔をして彼女を見ていた。


「せっかく女王になれるというのに、それをみすみす手放すのか」

と父は思った。


国王ジャン・グレゴリー、自分は王位を継ぐ者としての人生しか歩んだことがない。

王になれる、これは最高の栄誉であり幸せだ。

そう信じて疑わず、今までを生きていた。


それが、テレーザがキッパリと言った。

「王位に就く気はない」

と。


「テレーザよ、わたしにはそなたの言葉をそのまま受け取る勇気がない」

と父が言う。


「信じられないんだ」

とテレーザは思う。


「だってそうでしょ?王になることが一番の名誉、王族に生まれたらそう思うのが当たり前だもの。

でもね、私は違う。

自分の生きる道をすすみたい」

とテレーザが続ける。

瞳を輝かせ、ほほを紅潮させながら。


「ならば、おまえとホイ王子の策略というのは、どういうことなのだ」

と父。


どうやら、自分とホイ王子が彩の国と美の国の一部の役人、従者たちを従えて、

「王家の魂」をなくした第一王女フィオナ・クリスティーネの代りに王位を奪いに来た。

そういうことらしい。


「だから、そうじゃないんだって、パパ」

とテレーザがつい葵の口真似をして話をした。


「そんなことを信じろと。それにさきほどからお前の様子がどうもおかしいのだが」

と父はこの話し方に違和感を持っているようだ。


「そうよ、これが本当の私。ただのテレーザよ」

とテレーザが言う。


その時だ、

ままごとの家の扉がそっと開いた。

テレーザも父も一瞬身構えながら扉を見つめた。


「あ、ここだ、ここだ。ダイナさんが行ってた掘っ立て小屋」

そう言いながら、現れたのは駆だった。

その後ろから尊と葵も。


「テレーザ、やっぱりここにいたんだ」

そう言いながら駆け寄る葵。


「で、この人は?」

と葵が国王を見ながら言った。


「私のお父さんよ」

とテレーザ。


「もしかしたら、国王陛下、ってこと?」

と葵が上ずるように言った。


あわてて葵、尊、駆の3人が王の前にひざまづいた。

「私たち、テレーザの友達です」

そう言いながら。

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