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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国 王宮」訪問者

この先どうなる?

テレーザがふと部屋の出入り口である大きな扉を見た。

何か気になることでもあるかのように、ずっと目を反らさない。


「どうしたの?」

とその様子に気付いた葵が言う。

ホイ王子の従者、ケインが部屋を出てから10分ほど経っている。

尊も駆も、不思議そうにテレーザを見つめる。


すると、

「外に誰かいるわ」

とテレーザが言った。


その言葉を聞いた尊が、そっと扉に近付いた。

側には駆もいる。

葵は、テレーザを連れてまるで身を潜めるかのように、部屋の奥へを下がって行った。


物音を立てないように、慎重に扉の覗き窓に顔を近付ける尊。

眼を凝らして、外の様子を伺う尊。


するといきなり、

「うわぁ」

と言う叫び声と共に、飛び上がった尊。


テレーザ王女の部屋の扉にある覗き窓、それは直径5センチほどの円形で、木製の覆いがされている。

それをずらすと、廊下の様子が見渡せるのだ。


少しだけ覆いをずらして外の様子を覗いた尊、しかし見えたものは、誰かの大きな瞳だった。

その瞳も尊と同様、覗き窓からこちらの様子を伺おうとしていたようだ。

急に、尊の顔を見たその瞳の持ち主は、やはり尊と同じように驚いて飛び上がっていた。


「ルナ?」

尊に代わって、覗き窓から外の様子をみた駆が言った。


駆がそっと扉を開ける。

するとそこには、ルナ・ルイーズが立っていたのだ。


「中に」

といつのまにやら扉の側にいたテレーザが言う。


中に招き入れられるルナ・ルイーズ。

その姿はなんだか怯えている様だ。


「こんなところまで、お邪魔してしまって申し訳ございません」

と震えた声で言うルナ。


「何かあったの?」

とルナをソファに座らせながら、テレーザが声をかけた。


葵が入れてくれた温かいお茶を飲み、少し落ち着いたのかルナがポツリ、ポツリと話し始めた。


「このお手紙をいただいたのです」

と差し出すルナ。

それは、普通の便せんではなく、王家の紋章の入った、王族専用のものだった。


「私を探して」

と、ただそれだけが飾り文字で書かれている。


「これ、誰からから?」

と葵が言う。

尊も駆も、この手紙の真意をはかりかねているようだ。


「お姉さまね。私が戻ったのを知っているんだわ」

とテレーザが言う。


その手紙を見たテレーザ。

その文字は間違いなく、フィオナ・クリスティーネ王女の筆跡だと確信した。


そして、その便せん。

国王一家が使う特別な便せんだ。


しかも、その便せんの上部には、ユリとスズランの透かし絵が入っている。

これは、フィオナ・クリスティーネ王女とテレーザ王女を指しているのだ。


「どういうことよ?」

と葵が聞く。


「ユリはフィオナお姉さまの紋章で、スズランは私。

これを見て、ユリの花とスズランの花が触れ合うような透かしでしょう。

これはね、お姉さまから私に宛てたものよ」

とテレーザ。


「でも、よくそれがわかったわね、ルナ」

とテレーザに言われたルナは、


「このお手紙が、何故か私の荷物の中に紛れていたのです。一目見てフィオナ様の持ち物だと分かりました。このユリの紋章入りの封筒、何度か見たことがありますから。

恐れ多いとは思ったのですが、私にこれを読め、と言われているような気がして中を見ました。

すると便せんには、ユリとスズラン。

これはテレーザ王女にお渡しするものだ、と察したのです」

とルナが言った。


「それでここまで来てくれたのね。ありがとうルナ。見つかったら大変なのに、よく届けてくれたわね」

とテレーザがルナを抱きしめて言った。


「恐れ多いです、テレーザ王女」

とルナ。


「フィオナ様はしばらくお部屋にお戻りにはなっていません。

他の侍女たちは何も言いませんが、私は何故か胸騒ぎがしていて」

とルナが続けた。


「やっぱりね」

と葵。


「そういうことだろうな」

と尊も言う。


「さすがだ、ルナ。お手柄だよ」

と駆。

ルナの手をとり、優しく言うその仕草に、ルナは頬を赤らめている。


「色男め」

とその様子を見たテレーザが言った。


「お姉さまを探してくるわ」

とテレーザ。


「探すって、今から?」

と葵。


「そもそも、その手紙、誰かに無理やり書かされた、とか言うことも考えたほうがいい、

こんな状況なんだから」

そういう尊に、


「これは間違いなくお姉さまの意思で、私に宛てて書いたものよ。ここを見て」

と手紙の右上を指さすテレーザ。


そこには、小さなすずらんの花が手描きされていた。

これはテレーザがフィオナと取り決めていたことだ。

この印があれば、それは本当に自らの意思で書いたものだと。

幼いころに二人だけで決めた秘密だった。


「そんなことまで決めているのね。やっぱり王族って恐ろしい」

と葵が言った。


「あの、私も一緒に行かせてください。テレーザ王女」

とルナが声を上げた。


しばらくの沈黙の後、

テレーザは、ルナに言う。

「ルナ・ルイーズ、貴女はこの手紙を届けてくれた、それだけで十分貢献してくれたわ。

これがお姉さまから私に当てたもの、そう察してくれただけでも素晴らしい機転よ。

でも、これ以上は貴女を巻き込みたくないの。

だから、このまま仕事に戻ってちょうだい」

と。


「王女さま」

とルナは目を潤ませた。


「テレーザ王女、私の名前を憶えていてくださり、こんなありがたいお言葉まで」

そう言いながら、ルナの目からは涙があふれている。


「おい、これ」

と駆が自分のタオルを差し出した。

いや、差し出し、そしてルナの涙をそのタオルでそっとぬぐってやる駆。

ルナの顔はますます赤くなっていた。


「私はテレーザ王女の指示がない限り、このことも、他の事も決して口外はいたしません。

私をどうか信用してください。

でも、何かあったら私、何かちからになれるかもしれません。それを忘れないでください」

とルナが言う。


「ありがとう、ルナ。頼りにしてるよ」

と葵。


尊もテレーザもルナの言葉に笑顔で頷いた。

そして駆は、

「お前を危ない目には遭わせたくない、だから今は俺たちと一緒には行けないんだ。

どうか、わかってほしい」

とルナの頬に手をかけながら言う。


まるで鼓動がここまで聞こえてきそうなくらいの、緊張と喜びにあふれたルナの顔。

そして、駆に見送られてルナは部屋を出た。


「さあ、私はお姉さまを探しに行くわ」

とテレーザが言う。


「どこを探すのよ」

と言う葵に、


「目星は付いているの。この城の地下よ」

とテレーザははっきりと言い切った。

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