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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国 王宮」ブルー・ダイニング

どんな朝食が始まる?

ブルー・ダイニングの円卓に向かい合って座るテレーザとホイ王子。

次々と運ばれてくる食事は、その場の雰囲気を少しだけ和やかにした。


どの料理も料理長イーグルの手による懐かしい味だ。

テレーザの心がだんだんと暖まってゆく。


「お食事をしたら、機嫌がなおりましたね?」

とホイが言う。

この部屋に入ってきた時のテレーザはどうやら彼には不機嫌に見えていたようだ。


その言葉に仕方なく頷くテレーザ。

別に、お腹が空いているから不機嫌なわけじゃないけど。

と心の声が葵には聞こえていた。


「今日はお天気がいいようですね」

とテレーザが言う。


当たり障りのない話をしながら、ホイの事を確かめないと。

ブルー・ダイニングを勝手に使っていることに腹を立てている場合ではない。


テレーザは自分がやるべきことを慌てて頭の中で再確認した。


そんなテレーザの誘導もあってか、ホイはテレーザに自分の事を色々と話した。

好きな食べ物、趣味、それから自分の夢など。


「僕はね、今まであまり外の世界を知らなくて。まるでかごの鳥のような生活を送っていたから。

テレーザ、きみだってそうだろう?王子や王女ってなんでこんなに窮屈なんだろうね」

と笑うホイ。


その表情を見ながらテレーザ思案する。

これは、何かを隠しているのか何もかも忘れているのか。


自らの意思で、5大王国からははるかかなたの倭の国にまで一般の旅行者としてやって来た。

それだけでもかなりの行動力だ。


まあ、倭の国では「ロイヤル旅行者」であり、王子であるという事情を知っていた一部の者が至れり尽くせりの世話をしたのだが。


「ねえ、テレーザ。朝食が済んだら城の周りを散歩してみませんか?

僕はこのあたりには詳しくないので、いろいろと探検してみたいんだ」

とホイが言った。


「いいお考えね。喜んでお供するわ」

とテレーザ。


ホイ王子の後ろに控えていた従者のケインが、その言葉聞くや否やこのブルー・ダイニングを退出し、

何処かへ消えて行った。

予定外の「散歩」の準備のため、他の従者たちに指示をしに行ったのだ。


この部屋に残っているのは、ホイとテレーザ、そして葵の三人だ。

ホイ、どう出る?

とテレーザは思う。


それでも、ホイの態度は変わらなかった。

それまでと同じように、世間話をし朝食の最後に出されたデザートを美味しそうに口に運ぶ。


そんなホイの心情を読み取ろうと、テレーザは彼の心に探りを入れるが何かを感じることが出来ない。

ホイの心が見えてこない。

テレーザとしても、あまり強い力を使うことはできない。

この周囲に、ホイの従者でもあり、専属魔法使いのマルクが潜んでいるかもしれない。

テレーザがホイを探っていることが、すぐに察知されてしまう。


その様子を見た葵。

もどかしさを感じていた。


マルクが側にいるなら、自分たちとホイとの関係はわかっているはず。

そんなテレーザがホイを探ろうとする、これは当然ではないか。

だから、堂々と探ればいい。

それで少しでも、ホイの状況がわかるのだから。


そうテレーザに伝えたいが、ここで言葉にするわけにはいかない。

テレーザの心に語り掛けてみるも、全く無反応。

葵にはそんな能力がないからだ。


その時、ホイがテーブルのグラスに入った水をうっかりとこぼしてしまった。

こぼれた水が、どんどんとテーブルに広がり真っ白なテーブルクロスの色が変わっていく。


葵が慌てて、タオルを持ちテーブルを拭いた。

水がこれ以上広がらないように、ホイの前に身をかがめるようにテーブルの前に立ちはだかる。


ホイの視線と葵と胸が全く同じ高さだ。

葵の胸と、テーブルを拭く手を交互に眺めるホイ。


ホイの表情が少しだけ変わった。

今までまるで感じることのできなかったホイの心の鼓動がテレーザに伝わってきた。


「何かを思い出している」

とテレーザは思う。


しかし、その時

バタンと扉が開き、従者のケインが戻って来た。

テーブルの様子を見るや否や、すぐにパンパンと手を叩き給仕係を呼びつけた。


飛んできた女給に、テーブルの始末をさせるケイン。

「いや、我が君が失礼を。

ホイ殿下もテレーザ王女を目の前にしてさぞかし緊張なされているのでしょう」

とうやうやしく言うケイン。


にこやかな笑顔だが、有無を言わせぬ圧を感じた葵は女給にその場を任せ、

ホイの元を離れテレーザの後ろに控えた。


「それでは、この後は宮廷のお庭を散策なさるとのことで。

お支度が整いましたら、お知らせください」

とケインが葵に言う。


「わたくしも同行いたしますので」

とケイン。


そこで、テレーザが、

「殿下と二人だけでお話がしたいわ。もっと親しくなりたいの。お付きは不要よ」

ときっぱりと言った。


「仰せのままに」

とケインが頭を下げながら言う。

「王女」の言うことは絶対だ。


朝食が終わり、ブルー・ダイニングから自室に戻ったテレーザと葵。

部屋にはまたしても、マルグリッタふくめ数人の侍女が同行しようとしたが、テレーザはきっぱりと


「下がっていて」

と言い放つ。


「ここから先は特別な存在(大切な侍女)だけでいいわ」

と。


テレーザ王女の居間にテレーザと葵。

二人同時にふぅとため息が漏れる。なんだか堅苦しい朝食だった。


「ねえ、あなたは何か食べたの?」

と葵に聞くテレーザ。


自分はその場の雰囲気はともかく、イーグルの作った朝食を堪能した。

が、葵は何も食べていないはずだ。


「私なら大丈夫。起きてすぐにちゃんといただいたわ。誰かが部屋に届けてくれていたのよ」

と葵。


葵が特別な存在(大切な侍女)の寝室で目を覚まし、身支度としている間に部屋のテーブルにおかれていたのだそうだ。

銀のトレイに乗った朝食が。


「きっとイーグルだ」

とテレーザは直感した。


イーグルも自分の力になってくれているのか。

何とも心強い。

王宮の生活で、ほとんど感じることの出来なかったこの安心感。

それを今、心から感じている。

テレーザは感慨深げにそれを実感していた。


「でもさ、あんなこと言って、私まで一緒に行けなくなったじゃない?」

と葵の言葉が一気にテレーザを現実に引き戻した。

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