「美の国 王宮」二度目の朝
朝がきました
「まぶしいなあ」
そう言いながら目を覚ましたテレーザ。
窓から朝陽が降り注ぎ、テレーザの顔を照らしていたのだ。
「ここは王宮よね」
とつぶやく。
美の国に戻ってきて2度目の朝だ。
窓を開けようと、ベッドからはいだす。
横に寝転がってもまだ余裕のある大きなベッド。
天蓋から、ピンクのレースが垂れ下がっている。
「無駄にでかいのよ」
とテレーザ。
「落っこちたら怪我するじゃない」
と。
都留田の家で使っていたのは、小さなシングルベッド。
装飾などはなにもなく、ひょいと乗り降りで来る高さ。
寝具もシンプルだけれど、寝心地がよくいつもぐっすりと眠れた。
それに比べると。
ここ、美の国王宮の自分のベッド。
なんとも豪華で、そして出来る限りの飾りがついて、これでもかとばかりにレースがあしらわれたベッドカバーにベッドスカート。
これでも、姉たちの部屋のベッドから比べたらずっと質素だった。
「ひいひいおじい様は偉大なお方だけれど、これだけはいただけないわ」
とベッドだけでなく自室に施されたきらびやかな装飾を見たテレーザは思った。
「あら、おはよう。もう起きていたのね」
そこに葵が入って来た。
侍女の制服に身を包み、髪をキチンとまとめていて、どこから見てもここ美の国王宮に仕える侍女だ。
「すごい、葵。その恰好なんか似合ってる。昨日はそうは思わなかったんだけどな」
とテレーザ。
「あらそう?すこしでもなりきろうと思ってね」
と葵が満足げに言う。
「さあ、王女、お着換えを。この後、ご朝食ですので」
と葵が言う。
「ご朝食は、ブルー・ダイニングにてお召し上げりいただきます。ホイ王子も同席なさいます」
と葵。
まるで、今までずっと仕えている侍女のようだ。
「そう」
とテレーザ。
「え、なに?なんですって?」
とすぐに聞き返した。
「葵の言い方があまりにも、侍女だったからついいつものように返事しちゃったじゃない。
で、なに?ブルー・ダイニングですって?あのお部屋はお父様とお母様がお食事をされるところよ。
なんでホイと私が使うのよ」
と半分怒りをあらわにしながらテレーザが言う。
「それがあちらからのお達しなのよ」
と葵。
「あちらって?」
と言うテレーザに、
「朝っぱらから、あんたの侍女って連中がやって来たわ。
王女の朝のお世話をいたします、ってね。でも、追い払ったの。お世話はわたくし一人が専任でいたします。ご存知ではないのですか?美の国の王女は特別な存在が一人だけで王女の身の回りの事をすべてこなすということを。って言ってやったらさ、なんか焦っちゃってて、それは大変失礼を、って言って戻って行ったわ」
と葵が言う。
「わあ、やるじゃん」
とテレーザが感心したように言う。
「そうなのよ。そう言ったらさ、あっさりと引き上げて行っちゃって。なんかここの侍女さんじゃないよね、あの人たち」
と葵も感じている、あの侍女たちの違和感。
「それで、その時に伝えてくれたのよ。朝食の事。知らないだろうからって。マルグリッタって言う侍女だったわ」
と葵。
マルグリッタ。
自分がこの部屋を抜け出した時にいた侍女だ。
いなくなったのかと思っていた。
「さ、とにかく。着替えて。
これでいいかな?」
と葵が衣装室からドレスを選びだしていた。
薄いピンクの柔らかい生地のドレス。
あまり堅苦しくないデザインだ。
「さ、後ろ向いて
と葵が言う。
自分で着替えはするが、後ろのボタンまでは留められない。
「なんで全部ボタンなのよ、ファスナーにすればいいのに」
とたくさん並んだボタンを一つずつ留めながら葵が言う。
「ファスナーなんて王族の衣装には使わないのよ」
とテレーザ。
「それにしても、このドレスにも紋章が刺繍してあるのね。美の国第四王女、テレーザって。ボタンにも彫刻があるし。全部特注でしょ、どんだけ手が込んでるの?」
と葵が言う。
「そりゃね、一応王女だから」
そう言うテレーザに、
「ついでの王女ってそこまで虐げられてないじゃん。あんたの持ち物、どれもすごいし」
と葵。
「そうかな、これくらいは私にでもやってもらえたのよ。
そうしないと、美の国王室の威厳が保てないでしょ」
とさらりと言うテレーザ。
それを聞いた葵、
本当にテレーザの父と母はそんなに彼女を疎んじているのだろうか。
ここ、美の国にいる間にテレーザの両親の本音を聞いてみたい。
そう思った。
が、テレーザの両親。
それは美の国、国王と王妃だ。
自分がおいそれとは話をしていい相手ではない。
それでも、葵は一言でいいから、テレーザへの愛情を感じる言葉が聞いてみたい、
そう思っていた。
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