「美の国」作戦会議は何処で?
ベルデの森は馴染の場所
「さあ、作戦会議を始めよう」
そう静かに言った、まるで声をそろえるかのように4人が同時に。
自分たちを認識していないホイ王子、
あのケインという従者もどうも怪しい。
そして、バレルの様子も気になった。
どうもホイ王子側の知りえぬことを知っているようだ。
彼は「味方」なのか「敵」なのか。
せっかく4人で集まることが出来た。
伝え合う事、確認したいこと、決めておかなければならないことが盛りだくさんだ。
テレーザ王女の部屋の居間にある、豪華なソファに座る尊たちを横目に、
テレーザが言った。
「さあ、行きましょう」
と、
「行くって、どこによ?」
と葵が窓に向かって歩くテレーザに言う。
「作戦会議しよう、って言ったばかりじゃん」
と駆も言う。
そのテレーザは、さきほど尊たちが入って来た大きな窓を開け放った。
外にはうっそうとしたベルデの森が広がっている。
もう暗くて見えはしないが、森のあたりはただただ暗く、不気味な静けさが漂っていた。
「さ、ここを出て、先生たちの隠れ家とやらに行くのよ。会議はそこで。どうしても先生たちの助けが必要よ」
とテレーザ。
「みんなは、もう行ったんでしょ?その隠れ家。私だけのけ者にしてさ」
とテレーザが言う。
「のけ者だなんて、仕方なかったんだ」
「私たちだって、ここに来てどうすれいいかわかんない状況だったの」
「そもそも、お前いなかったじゃん」
とそれぞれ主張する3人。
「まあ、いいわ。そういうことで、百歩譲って許容してあげる」
とそれを聞いたテレーザが言う。
「なんかさ、こいう少し図に乗ってないか?」
と駆。
「だよな、王女風ふかせちゃって」
尊も言う。
「でしょ?私なんか侍女扱いだしね」
と葵もだ。
その場の空気を察したのか、テレーザの表情が変わる。
そして、この3人のご機嫌取りでもするように、満面の笑顔になり、
「でも、先生たちはね、助けを待てって私に伝言してくれてたの。
助け、みんなが来てくれるって先生たちはお見通しだったのね」
とテレーザ。
「そっか、俺たちは待ち望まれていた援軍ってわけか」
とテレーザの言葉を聞いた駆が言う。
「じゃ、仕方ない。援軍として全力を尽くすか」
と尊。
「ま、あんたはここじゃ自分であれこれするわけにもいかないんだから、私に任せて。
誠心誠意、お尽くしいたしますわ、テレーザ王女」
と葵が言った。
「じゃ、もう一度ダイナ夫妻の隠れ家に出発だ」
と尊の言葉で、全員が窓から壁を伝ってベルデの森を目指した。
「あっ?」
急に声を上げたのは、チョビだ。
そこはベルデの森、奥深くのダイナ夫妻の隠れ家。
チョビが何かの気配に気付いたようだ。
シッポをぴんと立ながら玄関まで立ち止まった。
「お前さんも感じたか」
とアルが言う。
その言葉にレイも頷いた。
「あの子たち、もうやって来たのね。今度はみんな揃って」
とレイが言う。
「さあ、チョビ、迎えに行ってあげて」
とレイが玄関ドアを少しだけ開け、チョビを外に出した。
ベルデの森では、
道なき道を進む、テレーザたち。
その歩みは迷うこともなく軽やかだ。
「こんなとこ、よくわかるな」
と駆が言う。
先程からテレーザは小走りに近い速さで歩いている。
かなり入り組んだ森の中だというのに。
「ここはね、私の庭のようなものだもん。先生たちの隠れ家の場所、葵の説明で大体わかったわ」
とテレーザ。
「そんなに急がないでよ、追いつけないよ」
と息を切らして言う尊。
もうゼイゼイと肩で息をしている。
「迷子にならないでね、このあたりは魔獣が多いから」
とテレーザ。
「さっきから聞こえてる、怪しげな鳴き声の主?」
と葵が聞くと、
「そうね、あれはホルヘウスかな。ちょうど子育ての季節だから、油断してたら子供たちの食料として連れていかれちゃうわよ」
とテレーザがさらりと言う。
「怖いこと言わないでよ」
とようよく皆に追いついた尊が言った。
「だって本当なんだもん。ほら、あっちにはガリエルがいるわ。
肉食の両生類よ。小さいけど優秀なハンターで、大きな魔牛でさえ倒しちゃう。あの子たちいつも腹ペコだから、気を付けてね」
とテレーザ。
先ほどから、茂みの陰に光るものがいくつも見えている。
ガリエルの目が光っているのだ。
尊たち3人は知らぬ間に、ぎゅっとその身体を寄せ合うように立っていた。
「あ、この子はね」
とテレーザが木の枝に止まっている美しい蝶を指さした。
そこには、紫色に輝く大きな羽をもった蝶がいた。
「きれいなちょうちょ」
と葵。
倭の国では見たこともない、輝く羽を持つ蝶に見とれながら言う。
「きれいでしょう。じっと見ていたくなる美しさよね」
とテレーザが言うと、葵はますますその蝶を凝視する。
「でもね、それ以上近寄っちゃだめよ。毒を持っているから」
とテレーザ。
あわてて、身をひるがえす葵。
「ほんとに?早く言ってよ」
と焦りながら。
「この子、羽に粉が付いているでしょ。これが猛毒。吸い込んだら即死よ。
羽ばたかない限り、粉は飛ばないけどね。驚かして飛び上がったらもうオシマイよ」
とテレーザが言う。
「そんな猛毒なら、兵器として使えそうだな」
と尊が言うと、
「そうなのよ、軍の専門家がなんども捕獲に挑んだんだけれど、その前にみんな死んじゃってね。
だから、触ってはいけない蝶 って呼ばれているの。
それに、そもそもものすごく貴重な種だから、めったにお目にかかれないしね」
「そんな天然記念物が、ここにいるんだ。俺たちの目の前に」
と駆がおどろいたように言うと、
「私がいるから出てきてくれたの?」
と蝶に向かって言うテレーザ。
すると、その蝶がゆっくりと羽を広げた。
蝶にしてはかなり大きく、その美しい羽には幾何模様がグラデーションのように輝いている。
「おい、羽広げたぞ」
と焦る尊。
「大丈夫よ」
とテレーザは恐れる様子もなく、そっと蝶に手を伸ばすとその羽をやさしく撫でた。
「おい!」
驚く尊、駆、そして葵。
「この子はね、昔私が命を助けてあげたの。だからお友達よ」
とテレーザ。
テレーザはかつて、森の中を散策中に瀕死の状態だったこの蝶と出会い、その場で枯れ果てていた、森の花をよみがえらせその蜜を蝶に与えた。
それで蝶はなんとか一命をとりとめたのだ。
それ以来、この蝶とテレーザは友達になったのだった。
「また会えるなんてね」
と蝶に話すテレーザ。
するとその時、またしても茂みから物音がした。
草が、ゆらゆらと揺れている、明らかに何かが動いている。
一瞬にしてみな表情をこわばらせ身構えるが、テレーザはすぐに笑顔にもどった。
「迎えに来てくれたのねチョビ」
と言いながら。
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