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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国」衣裳部屋で

葵たちのおかげで安心なテレーザ

「これは大変失礼を。それでは侍女殿、姫のお支度をお願いする」

と男が言った。


その男、テレーザをロベル・リゾートで乗った船まで迎えに来た男だ。

テレーザにとっては全く見ず知らず、顔を見たこともないその男がまるでテレーザの世話役だと言わんばかりの態度で接してくる。


その後ろに控えているのは、ここに戻ってから側に付いている「侍女」だ。

その中に、テレーザが部屋を抜け出し、ルナ・ルイーズのいる宿舎まで行くのを見逃したマルグリッタの姿はなかった。


テレーザがさっと、一つの小部屋に向かった。

衣裳部屋だ。

眼で合図をされた葵がその後ろに従う。


そのまた後ろを、「侍女」たちが付き従おうとしたが、


「アオイだけで結構よ」

とテレーザが振り返りもせずに言う。


これ以上動くことも出来ず、その場で立ちすくむ「侍女」たち。

引率していた男も困惑している。


衣裳部屋に消えたテレーザと葵、その場には尊と駆、そして男と侍女たちが残された。

尊はその男に向かい、


「あの、あなたは?」

と聞いた。


「申し遅れました、わたくしは、バレルと言います。美の国王宮に仕える者です」

とその男、バレルが言った。


はやり、「王宮」というのか

と尊も駆も思う。

テレーザがこの男を「従者」という眼では見ていない事にも確信が持てた。


「じゃ、俺たちも」

と尊が目配をした。


「俺たちはテレーザ王女にお仕えする従者だ。王女の事のすべてを任されている。

急な予定変更と聞いているが、今後の事を共有願いたい」

と駆が言う。

こう言う時、駆は咄嗟に判断をしてうまく立ちまわることが出来る。


「俺?」

とバレルは少しばかり首をひねったが、


「これは従者殿、失礼を。テレーザ王女にはこれから面会の儀に臨んでいただきたい」

とバレル。


「面会?誰とだ?」

と尊が思わず声をあげる。


「国を率いるお方とです」

とバレルが言う。


その言葉でテレーザがこれから会う相手が国王ではない、と察する二人。

反体制側との面会、ということか。


ーそいつらが、テレーザの「王家の魂」がいる、というならすぐにでも両親を呼び寄せてくれてやればいい。テレーザの身の安全と引き換えだ。そして、あいつは連れ戻す。自分たちの家にー


何も言わなくても尊と駆、思いは同じだった。


「あ、あっちのグリーンのにする?」

と葵が言う。


「それとも、こっちの薄いピンク?」

と目の前にズラリと並んだドレスを物色中の葵。


テレーザの衣裳部屋。

今までに見たこともないほどたくさんの衣装が並んでいる。

髪飾りや、靴、バッグもだ。


「テレーザって衣装もちね、すごいよこれ」

と葵が興奮気味に言う。


「そうかな、お姉さまたちに比べたら5分の1くらいよ」

とテレーザ。

その言葉にため息交じりの葵。


「私たち、何度も着替えるからそれなりに必要なのよね。まあ、多すぎるけどね」

とテレーザが言う。


「そうよね、クルーズ船でエステル王女だって何度着替えたのかしら。大変ね、王女様って」


「でもさ、着替えるって言ってもこれから何があるの?それによって着る物もちがうじゃない」

と葵。


「さあ、わかんない。でも誰かに会うんじゃないかな」

とテレーザ言う。


「じゃ、これにしよう。これならどんな場でもいいんじゃない?」

と葵が一着のドレスを手に取りながら言った。


「これ」

それを見たテレーザがほほ笑みながら言う。


「エマのお気に入りよ」

と。


「エマの事も、確かめようね」

と葵。


「もちろん、そのつもり」


葵の選んだそのドレス。

上品なクリーム色で、見事な刺繍が施された上品なものだ。

派手ではないが、落ち着いた美しさでテレーザによく似合う。


「それにしても、すごくきちんと整理整頓されているのね」

と葵が感心しながら言う。


たくさんの衣装が、色別、デザイン別に並べられておりどれもシワ一つなく保管されている。

靴や小物類も同様だ。


「レイアが几帳面だからね。いつもきれいに整えてくれていたの。

でも、誰かがいじくりまわした様ね」

とテレーザが衣装が並ぶ一角が、乱雑で色も形もバラバラに並んでいるのを見て言った。


「あの、侍女たちの仕業?」

と葵が聞く。


「そうね、なんだかものすごく慣れていないんだもん。私の部屋着を探すのにてこずっていたわ」

とテレーザが言った。

マルグリッタは、お着換えをと言ったまま、この衣裳部屋で手当たり次第に物色していたのだった。


「さ、これでいいわ」

と葵。

今では自分で着替えることも出来るテレーザだが、細かい仕上げは葵が請け負った。

衣装の背中に並んだボタンをしめ、髪をまとめ、ネックレスとイヤリングを付ける。


葵の目からしても、このドレスが今までに見たこともないほど上質であることが分かった。

そして、ネックレスもイヤリングも本物の宝石だ。


「テレーザ、うちで着ていた服、本心ではどう思ってたの?」

と思わず聞く葵。


倭の国でテレーザが着ていた、近所の激安衣料品店で買った洋服。

そんな衣類を着るのは初めての事だっただろう。


「え、かわいかったじゃん。最初に葵が貸してくれたトレーナーだって、すごく着心地良かったよ」

とテレーザ。


そう言いながら葵を見るテレーザ。

これからの事が不安なはずなのに、なぜか穏やかな表情だ。


「なんかさ、楽しそうだね」

そう言う葵に、


「だって、みんなで冒険してる感じで、ちょっと嬉しいんだ」

とテレーザ。

その笑顔を見た葵。


「じゃ、さっさと片付けて、早く帰ろ」

と自分も思わず微笑みながら言った。


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