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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国」秘密の抜け道

モテ男子、駆

「抜け道?しかも近道だなんて」

とルナが驚いて言う。


「そうよ、テレーザが話していたから、あっとテレーザ王女がね」

と笑って言う葵。


この異国人が城の内部を詳しく知っているなど、信じられるはずがない。

美の国の国民なら、いや王国に暮らすものなら王の城の内部は極秘事項である、これくらい誰でも承知している。


だから、王宮に仕えるルナ達でさえ、城の事はごく一部しか知らない。

勝手に知らない通路を通ったり、扉を開けたりすることは厳禁だ。


それなのに。

目の前のこの遠い国から来た子が、隠し通路の場所まで知っているだなんて。

そして、葵がテレーザ王女の事を話す時の顔。

ついうっかりと言いつつ、と頻繁にテレーザと呼ぶその表情。


その顔が、どうも「あの子」を思い出す。

あの子、テレーザ王女の特別な存在(大切な侍女)、エマだ。

いつも王女の隣で笑っていたあのエマ。


「どうしたの?」

と駆がルナに声をかけた。

ルナの表情が曇ったのを見逃さなかったのだ。


「なんでもないわ。ここに隠し通路が?」

と笑顔を作るルナ。

駆に声をかけられるのが嬉しくてたまらないのだ。


「じゃ、行こう」

と隠し通路に入る葵、そして尊。

その後、駆が続く、ルナの手を取りながら。


その通路は真っ暗で尊と駆がスマホのライトを付けた。

石が並べられただけの床と、何の装飾もない壁が照らし出された。


「まっすぐ行けばいいはず」

と葵。


「ワナ、とかしかけられてないよな」

と尊が言う。

城の内部には色々と仕掛けがある、そんな印象なのだ。


「ここは急ぐ人たちが使う通路だから、そんなのないはずよ」

と葵が笑った。


「よく知ってんな」

と後ろから駆が声をかけた。


「そりゃ、テレーザが、いやテレーザ王女が城マニアだったんだもの。あの子よく城の中を探検してたって。ここの地下には本当に罠だらけのヤバいところあるそうよ」

と葵。


その言葉を聞きながら、ルナの手に力が入る。

「このアオイも、特別な存在、なのだ」

そう思うと、今の自分と無意識に比べていた。


本来なら今頃は、フィオナ王女の部屋で衣装のチェックをしている時間だ。

いつも通り、行われているだろうが自分がいない事に誰も気付いてはいないだろう。


自分はそれだけの存在だ。

誰かの「特別」でもない、もちろん王女の特別な存在(大切な侍女)でもない。


「どうした?」

と駆がルナに声をかける。

またしても、ルナの表情が曇ったのを見た駆。


「お前、いいやつだな」

と不意に言った。


「いいやつ?」

と聞き返すルナ。

あまり馴染のない口調だ。


「俺たちに付き合ってくれてさ、ありがとう」

と駆。


「俺たち、城の潜入して王女を探してる、結構ヤバい奴らだよな。そんなのに加担してくれるだなんて。お前だって危ないだろ」

と駆がルナにささやくように言う。


「やばい奴っていうのは本当だと思うわ、即通報レベルよ。でもねなんだか今すごくワクワクしているの」

とルナが心の内を言った。


自分が今していること、それは厳罰が免れないほどの行為だろう。

しかし何故か心が躍る。


テレーザ王女のために何かがしたい、その気持ちもある。

初めて、面と向かって話をしたテレーザ王女。

優しくて、何故か心が安らいだその存在、そして何よりその姿はとても美しかった。

「この方の為なら」

そう思える。


「ついでの王女、平凡なお顔立ち、美の国の王女なのに」

そんな風にしか思っていなかった自分が悔やまれた。

そのテレーザ王女と会って以来、心が軽い。

もちろん、妬みも僻みもまだまだくすぶってはいるが、それがどこか今までとは違うのだ。


「自分に少しだけ自信が持てる」

そんな気分だ。


そして隣にいるカケル。

つないだ手は大きくてそして暖かい。

手が触れているだけで、安心する。


この前の休暇で実家に戻った時、家で行われたパーティに参加させられた。

そこで、地方都市の有力者の子息とダンスをした。

その時も、手を握られたが何の感覚もなかった。

その子息も、言われた通りにルナをエスコートし、形式通りの会話をした。


「ルナ・ルイーズ嬢、日々はどう過ごされているのでしょう」


「ルナ・ルイーズ嬢、お好きな食べ物は」


まるで面接の様だった。

ルナ・ルイーズの家は代々続く貴族の家柄だ。

今はすっかり没落してしまっているが。

その家名を望む者は多いようだ。


これはルナの「お見合い」の場だった。

周囲がいろいろと話しているのを聞いた。


「ルナの侍女としての任期があけるのと同時に輿入れか」とか


「王宮で王女の侍女を経歴を持つ娘と婚儀だなんて、平民からしてみればオイシイ話よね」


「次期女王、第一王女フィオナ・クリスティーネ様付きの侍女の経歴があるだなんて、それだけでもハクが付く」

など。


自分はこの家のために嫁ぐのだ。

そう悟った。

別に驚きはしなかった、姉たちも親戚もそうだったから。

あの「殿方」の元へ嫁ぐ、不安もなくそして夢も希望も愛もなかった。


しかし、それが。

今、隣にいる会ったばかりの異国のカケルという青年。

もっと一緒にいたい、いつまでも一緒にいたい。

そんな想いがあふれている。

ルナが初めて味わった、恋心だった。

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