「美の国」王宮探検
ついに王宮に潜入する3人
美の国の王宮、ディアロポス宮殿。
その片隅の荷物倉庫で、レイアと出会った葵たち。
レイアの手助けにより、まるでこの王宮に勤める、従者と侍女に変装することが出来た。
これならば、宮殿内をうろついていてもおかしくはないだろう。
「レイアさん、ありがとう。これでテレーザを探しに行けるわ」
と葵。
「どういたしまして。でも、恰好だけじゃね。さあ、これが王宮の見取り図、見てちょうだい」
とレイアが何やら大きな地図のようなものを広げた。
「いま私たちがいるのがここよ、そしてここがクリスタルパレス、この城の中枢よ。テレーザ様もたぶんここにいるわ」
とレイアが指さした。
そこには、どこまでも広がる大きな城の内部が詳細に書かれていた。その規模は今までに見たこともない広大で複雑なものだった。
「広いのね、お城って」
と葵が驚いた表情で言う。
「さすがは5大王国の居城だな」
と駆も言う。
「それにしても、なんて入り組んでいるんだ」
と駆が驚いて言う
「こんな詳細な見取り図が現存しているんですね。こんなの見ちゃった俺たち大丈夫なんですか?」
一通り見取り図を眺めた尊は心配そうに言った。
城の内部構造、それはトップレベルの機密事項だ。
こんなものが、「敵」にでも知られたら、易々と城を乗っ取られることだろう。
だからこそ、城の内部にはいくつもの秘密の通路や隠し部屋があり、まるで迷路のようになっているのだ。
そして、この城の内部を知る者たち、城の設計者、建設に携わった者たちはみな、城の完成と共に「追放」されたと伝えられている。
「そうよ、もちろん極秘事項。重要機密箱から出してきたのよ」
とレイアは平然と言う。
「だから、そんなもん、見せられたらビビるじゃん」
と駆が言うと、
「それだけ必死なのよ、あなたたちに懸けているの。お願い、テレーザ様を連れ戻して」
とレイアが小さな声で言った。
レイアの言葉に顔を見合わせる3人。
そして、
「わかった。レイアさんも危険を冒してまでありがとう。テレーザは必ず私たちが見つけ出す」
と葵が言った。
「だから、様、か王女と付けてって」
とレイア。
「あらま、ついうっかり。ほんとにあの子、王女様とかいう感じじゃないのよ」
と葵が言った。
「この部屋を出たら気を付ける。俺たちのテレーザは俺たちの手で取り戻す」
と尊。
その言葉に心のどこかで安堵するレイア。
会ったばかりのこの青年たちに、すべてをゆだねる決意ができた。
「それじゃあ、行こう」
と葵の言葉で尊も駆も、扉を開けこの部屋の外に出た。
「気を付けて」
そう言い、3人を送り出すレイア。
その背中を見つめながら祈る、
「どうか、あの子たちが無事でありますように」
と。
「私も、早く戻らないと」
とレイア。
葵たちのためにここに来たが、今日はここに立ち寄る業務はない。
理由もなく、こんなところにいるのは問題だ。
ここの在庫調査が抜き打ちで行われないことを祈るばかりだ。
勝手に葵たちに着せた侍女と従者の衣装。
その数が減っているから。
しかも、機密事項である城の見取り図まで勝手にいじったのだ。
見つかったらただでは済まない、自分だけでなく葵たちにも影響が及ぶだろう。
レイアは慎重に葵たちがここに来た形跡を消し去り、見取り図をきっちりと元の場所に保管した。
部屋はここしばらく人の出入りがなかった状態に戻った。
衣装の在庫数だけはどうにもできなかったが、それは致し方なく運に任せるだけだ。
そんな部屋の様子を改めて見渡し、確認をするとレイアはそっと部屋を後にした。
「この先を進めばクリスタルパレスにつながる通路よ」
と葵が言った。
レイアを分かれて、城の通路を進んだ3人。
何度も曲がり、何度も階段を下ったり昇ったりしながら。
先ほど見せてもらった、この城の見取り図と尊のタブレットの位置情報だけを頼りに、
3人は進んだ。
「でも、ダブレット、圏外じゃないんだ」
と駆が言う。
「それに、こんなところで使ったら、誰かに所在特定されそうだけどね」
と葵も言う。
「ここでは、倭の国の特別回線を使っている。正確には倭の国、外務局の極秘回線だ。
親父の計らいでね」
と尊。
「じゃ、倭の国には筒抜けっことじゃん」
と葵がいうと、
「それがさ、ここに来る前にちゃんと居所防御装置を作動させておいたんだよ。
ぬかりないでしょ、俺」
と尊が自慢気に言った。
「兄い、オタクだからな、機器の操作にも強いんだよな」
と駆。
「さ、急いでクリスタルパレスに入ろう。あの中がまた迷路だ」
と尊が言う。
「この防御もいつ破られるかわからないしな」
と続ける尊。
「何よそれ、信用できないの?」
と葵。
「じゃ、タブレットの電源は切ってよ。この内部ならさっきしっかりと覚えたから」
と葵が胸をたたいて言った。
「頼りになるなあ、姉ちゃんの記憶力」
と駆。
葵の記憶力の良さは以前からこの兄弟も脱帽していたのだ。
「さすが、あんな複雑なものを」
と尊も言う。
「私に任せて」
そう言い、駆け出した葵。
この先はいよいよクリスタルパレスだ。
廊下を抜けると、急に周囲が華やかになった。
天井、壁、床、そのすべてが先ほどまでとは違い、美しくきらびやかだ。
「なんかすごいきらびやか」
と葵。
「これぞ、城だな」
と駆。
「さすがはクリスタルパレス、すげえ」
と尊も言う。
3人が、この豪華絢爛なクリスタルパレスに圧倒されていたその時、
「おい、お前たち、ここで何をしている。そこに止まれ」
とドスの効いた声がした。
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