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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国」侍女、ルナ・ルイーズ

ルナとテレーザ王女

「エマ?ですか?」

とルナ・ルイーズが言う。

不思議そうに首をかしげながら。


「エマなら、ご一緒だったのでは」

とルナが言う。


「あ、だからね、その前に、あなた方にお別れを言ったのかしらと思って」

とテレーザがとぼけたように言った。


「エマはここには来ておりません。たぶん」

そうルナが言ったのと同時に部屋の時計が鐘を鳴らした。


「王女、ご自分のお部屋にお戻りください。もう休息時間になります。

こちらに戻ってくる侍女もおります」

と早口で言うルナ。


ここ王宮では、午前中に一度、休息時間がある。

その時、宿舎に戻ってくる侍女も多い。

部屋には帰らず、廊下で仲良しと立ち話をする者もいる。


しばらく人目が途切れなくなる。

それよりも前に王女はお戻りになった方が良い。

あまり長く、部屋を留守にするのはどうなのだろうか。

そもそも、こんな場所に王女が一人で尋ねてくるなんて異例だ。


「あなたは、お姉さまの侍女よね」

とテレーザが部屋に帰る素振りも見せずに言う。


「はい、フィオナ・クリスティーネ様にお仕えしております」

少し困惑しながらも、誇らしげにいうルナ。

その言葉を聞いたテレーザは、ようやく立ち上がりドアに向かう。


「お邪魔したわね」

そう言いながら部屋を出ようとした。


「王女をこの場でお見送りするような無礼をお許しください」

そう言い、頭を下げるルナ。


「わたくしには、王女をお送りする資格がないのです」

と続けた。


ルナはテレーザの隣に並ぶことを許されてはいない。

後ろにつき従うこともだ。


王女と並んで歩くことが出来るの侍女は、第一侍女と特別な存在(大切な侍女)だけだ。

後ろに従い歩けるのは自分が仕えている王女だけだ。


「またお話ししましょう」

とテレーザがほほ笑みながら言った。

ルナの言葉など気にかけてはいないようだ。


その笑顔に、何か心がうずくのを感じるルナ・ルイーズ。

何だろう、この感覚。


「自分は隣には並べない」

と言ったルナの顔、どこか寂し気だ。


テレーザの姉、フィオナ・クリスティーネ王女の侍女であるルナ。

侍女になったばかりの頃は、自分の顔も名前も覚えてもらえない。

いつも一番遠くからフィオナ王女を見ていた。


直接、王女の世話することもなく、まるで接点がなかった。

それなのに、エマは違った。


侍女になってすぐに、テレーザ王女の公務に同行しそして特別な存在(大切な侍女)になった。

自分はここ美の国の貴族の家柄なのに、なぜ辺境の小さな国の田舎者があんなに優遇されているのだろう。


ただの新入り侍女の自分。

それに比べて、大抜擢をされたエマ。

どんなに、「テレーザ王女」の特別な存在(大切な侍女)なんだからと自分に言い聞かせてもダメだった。


テレーザ王女がエマを連れ歩いているところを見るたびに、

心の奥で妬ましさと羨ましさがふつふつと湧き上がっていた。


だから、


「エマがいなくなって、せいせいした」

それが本心だった。


「テレーザ王女が静養に入ってほっとした」

とも思った。


誰にも言えない黒い心だった。


それが。

今ここで初めてテレーザ王女とこんなに近くで話をした。

なぜか心が安らいだ。

心にある色々な事を全部吐き出してしまいたい気分になった。


「テレーザ王女なら私の話を聞いてくれるかもしれない」

そんな想いがルナの心に芽生えていた。


「どうもありがとう」

とテレーザが言う。


いきなり侍女の部屋を訪ねたが、それは侍女にとってある意味とても危険なことだった。

王女を部屋に招き入れたのだ。

侍女が罰せられかねないことだ。

それなのに、この侍女はためらうこともなく、自分を部屋に入れてくれた。

そのおかげで、少しずづ状況が分かり始めていた。


ドアを開ける寸前、テレーザがルナ・ルイーズを抱きしめた。

そして、テレーザの持つ力をルナの心に送り込んだ。


ルナ・ルイーズの心の変化を感じると、テレーザは部屋を出た。

そして、小走りで廊下を通り過ぎ自分の部屋へと戻って行った。


テレーザの姿が見えなくなってすぐに、廊下の端からにぎやかな声が聞こえてきた。

休み時間になった侍女たちが、戻ってきたのだ。


「どう?ずる休みは」

とルナの背後で声がした。


そこにはルナと同室でもある、先輩侍女のルイスが立っていた。

彼女も休息時間に部屋に戻ってきたのだ。

公休といいながら、体調不良を理由に休んだルナを気にして。


「ルナ?」

とルイスが言う。

ルナの表情が朝とは明らかに違うのだ。

とても晴れやかな表情をしている。


「もう大丈夫なの?」

とルイスが聞くと、


「はい、私はもう元気です、任務にも戻ります」

とハツラツとルナが答えた。

何か、ずっと抱えていた心のもやもやが、すっと消え去ったような清々しい気持ちで、

ルナ・ルイーズは大きく息を吸った。


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