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これが私の生きる道~国を追われた美の国第4王女~「私が貴女をマダムに変える、美の国王女の名に懸けて」  作者: 明けの明星


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「美の国」侍女の部屋

やっと知っている顔に会えました。

美の国、王宮ディアロポス宮殿。

その中核となっているのがクリスタルパレスと呼ばれる城だ。


そこには美の国の政治の中枢であり、軍の最高幹部たちが集い、そして

国王一家の居住空間がある。


その国王一家に使える、従者や侍女たちの宿泊施設が宮殿の片隅にあった。

クリスタルパレスと廊下でつながってはいるが、その造りはまるで違う。


贅を尽くしたクリスタルパレスからすると、全く飾り気のない石造りのたたずまいだ。

そこにファンタジーワールド(この素晴らし世界)から集まった侍女たちが生活を共にしていた。


エマがよく話していた、同期で採用された侍女について。

確か宿舎では同室だったはずだ。

彼女たちに聞けば、なにかがわかるかもしれない。

それはある意味「危険」なことでもあるのだが、テレーザはすこしでも馴染のある顔が見たかったのだ。


クリスタルパレスの自分の部屋を抜け出し、廊下を抜けて侍女たちの居住エリアにやって来た。

重厚な石造りだが、派手さはなくただ重苦しい。


テレーザが記憶をたどって、エマが最初に使っていた侍女の部屋を思い出した。

数人で同部屋だったはずだ。

同期が3人、そして年上が2人。

エマは楽しそうに同室の仲間の事を話してくれた。


「ここだっけ?」

とテレーザが立ち止まったのは、長い廊下にならんだドアのひとつ。


「12号室、確かここだったわよね」


エマがこの部屋で過ごしたのはわずかな期間だ。

テレーザの侍女になってすぐに、特別な存在(大切な侍女)となったからだ。


特別な存在(大切な侍女)は、一般の侍女とは違いこの宿泊施設ではなく仕えている主の部屋の側で寝起きするのだ。


侍女たちの部屋には呼び鈴が設置されている。

王女たち王族の部屋にはない。


その呼び鈴を鳴らしてみた。

ボタンを押すと、部屋の中で「カランカラン」と音が鳴っているのが聞こえてきた。


しばらくして、

「はい、どなた?」

と中から声がした。

若い女性の声だ。


「あの」

とテレーザがポツリと言うと、


「だから、名前は?」

と中からの声が言う。


「テレーザと言います」

と答えるや否や、ドアが開いた。


「さあ、中に」

と有無を言わせぬ速さで部屋に引き入れられるテレーザ。


「テレーザ王女?ですよね」

と声の主が言った。


「大変ご無礼を。わたくしは、ルナ・ルイーズ、フィオナ・クリスティーネ様付の侍女でございます」

とひざまずきながら言う侍女、ルナ・ルイーズ。


「顔をあげてちょうだい。あなたがルナね、エマからよく話を聞いていたわ」

とテレーザが言う。


「テレーザ王女、お戻りになったんですね」

とルナ。


「もうすかっかりお元気になられたのですか?よかった」

と胸をなでおろすように言う。


ルナ達侍女の宿舎は、寝室と談話室、そして洗面所とトイレがある。

質素だが、一般の家屋とは違い手の込んだ作りだ。


ルナに談話室のソファに案内されたテレーザ。

そこでルナが、お茶を用意してくれているらしい。


その様子をじっと観察するように見つめるテレーザ。

どうやら、自分は「病気療養」ということで、そんな王族が集まる「ロイヤル・サナトリウム」という施設に行っていたらしい。


そこは一つの島国で、島全体が療養施設となっている。

ファンタジーワールド(この素晴らし世界)の王族や貴族など高貴な身分の者たち専用の施設だ。


「でも驚きましたわ。あんなに急にご病気になられてサナトリウムに行かれたなんて。

わたくしたち侍女もそれは心配いたしました」

とお茶を入れながらルナが言う。


「ほかの子たちは?」

とテレーザが聞いた。

今、この部屋にはルナ・ルイーズしかいないようだ。


「それは、皆お仕えの時間ですもの。私は今日公休をいただいているんです」

とルナ。


そうだ、今日は休日でもない普通の日だ。

侍女たちはそれぞれ仕えている主の元にいるはずだ。


ルナの前で「ここまででわかったこと」を懸命に頭の中で整理するテレーザ。


自分は、本当に病気ということで療養したことになっている。

療養を終えて帰国したことを侍女たちは知っている。

侍女たちの様子に変化はないようだ。


テレーザにはもうひとつ、どうしても確かめたいことがあった。

エマの事だ。

自分が倭の国に行って以来、エマは一度でもここに戻ってきたのだろうか。

それを聞いていいのだろうか。

何か勘ぐられるかもしれない。


「エマは?」

とポツリとこぼしたテレーザ。


「エマはここには寄ったのかしら」

紋々と考えた後、やっと言葉に出来たのはこれだった。


通例、王族が静養という名の消滅をさせられた場合、その侍女たち側近は同じく消滅、または故郷へと送還される。


まだ年若く、侍女としての経歴も浅いエマ。

故郷に戻されるのが妥当だ。


テレーザはエマが故郷に戻っていないことを知っていながら、

ここ、侍女の宿舎に別れのあいさつに来たかどうか、確かめてみたかったのだ。


「この子の反応で、わかるはず」

そう思いながら、再度


「エマは別れのあいさつに来ましたか?故郷に戻る前に」

とルナの目をしっかり見ながらこう言った。

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