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次はどうする?

二次審査に向けて

「二次選考なんだけど」

とテレーザ。

瑛子と二人、「ビューティーコンテスト」マダム部門、二次選考のための作戦会議だ。


「瑛子さん、無理に何かやることはないと思うの。普段通りに、いつもの姿を見せることにしよう」

そんなテレーザの言葉に、


「そうなの?それでいいのかしら。調べたところによると、みんな歌ったり踊ったり、楽器を弾いたりするそうよ。でも私は」

と瑛子が言う。


「でも、瑛子さんは」

とテレーザがいたずらっぽく笑いながら、


「歌えるの?踊れるの?弾ける楽器はあるの?」

と。


「どれもダメだわ」

と瑛子。


「でしょー、だからね、瑛子さん。いつもみたいにお皿を洗うとか、お料理をするとか、洗濯物を干す、とかそれを見せるのよ」


テレーザの案は、

普段、家庭の主婦としての瑛子の仕事をBGMに乗せて3分でまとめる。

というものだった。


「でもね、台所セットはないし、持ち込める小道具も限られていて。

そこを思案中よ」

と得意げに語るテレーザ。


「あの、皿洗い?洗濯?それ本気?」

と瑛子がいささかいぶかし気な顔で聞いた。


「え?ダメかしら。素敵なパフォーマンスになると思うんだけど」

とテレーザ。


「ある意味、斬新かも」

いつの間にか、作戦会議の席にいた葵が言った。


「ママはいつもの姿が一番光ってるって。テレーザの修行のお陰か最近ますます磨きがかかってるもの」

と言う葵。


「でも、確かに、この案どれも大道具必要だもんね、厳しいかなあ」

と葵。


「そっかあ」

その言葉にテレーザも考え込んでしまっていた。



「わたくしは、彩の国の魔法使い、マルクと申します」

そう言ってうやうやしくお辞儀をしているのは、

フィル・グレン侯爵の側近として、行動を共にしている、彩の国の、宮廷魔法使いマルクだった。

正確には、彩の国、第5王子、ホイの専属魔法使いだ。


ホイ王子がフィル・グレン侯爵として、カミヤマ家に滞在している間は庭の片隅に止めたワゴンの中で生活をしている。


カミヤマが、邸宅の一部屋を使うようにと何度も申し出たが、

マルクは外からの侵入者を警戒するには、庭にいる方が都合が良いと言い張り、こうなっているのだ。


「まあ、マルクさん。きちんとお会いするのは初めてですね。お庭で不自由はないかしら。何かあったらすぐにおっしゃってくださいね」

とカミヤマの妻、ショウコが言う。


ショウコはフィルの従者とはほぼ会ったことがなかったのだ。

フィルの護衛はまるで陰のように、目立たずこっそりとフィルを守っている。

しかし、その警備は完璧だ。

それだけに、まるでフィルにここまでの護衛がついていることを、悟らせまいとするかのようだ。


「それで、奥様のオペラを唄うのがお得意だと伺いましたが」

とマルク。


「あら、パパったら。こちらの殿方にコンテストの事をお話したの?」

とショウコ。

いきなり、以前から趣味でたしなんでいるオペラの事を言われ、夫ジュンの目論見を察したのだ。


ショウコは優しく微笑みながら、リビングにあるグランドピアノの前に座った。

そして、

ピアノを奏でながら、オペラを唄う。

高く透き通った歌声。

見事なソプラノだ。


歌唱が終わると、その場にいた全員から拍手喝采があふれた。

ショウコはまたしても、優しく微笑みながら皆に一礼をした。


「なんてすばらしいんでしょう。まるで奏の国にいるようだ」

とマルクと共にこの場にいたフィル・グレン侯爵が言った。


ショウコの歌唱を聞いたマルクも、

「わたくしに出来ることといえば、奥様をより一層輝かせること、そして、最高の状態で歌えるようにして差し上げること、これくらいです」

と絶賛だ。


「久しぶりに歌ったのよ。これから毎日練習しないとね」

とショウコは謙虚に言った。


しかし、

ーどうだ、これがわたしの妻だ。素晴らしいだろうー

とでも言うかのように、カミヤマは満足げに頷いていた。




「これで、いいわね、あとは兄さんにBGMをさがしてもらいましょう」

と葵。


瑛子の日常をパフォーマンスする、その概要が決まったのだ。

テレーザも自信ありげだ。


葵に依頼された尊はさっそくネットに投稿されている楽曲から、瑛子のパフォーマンスにあう曲を選び始めた。

ネットにはたくさんの楽曲が投稿されている。


「これは、どうだろう」

しばらくして尊が選んだ一曲は、美しい旋律、優しいメロディ、瑛子の雰囲気によく似合う。


「きれいな曲ね」

と瑛子


「わあ、こんな曲が後ろで流れてるなんてなんかドラマのワンシーンみたいになるよ」

葵は夢見るように言った。


「ネットに投稿されていた曲だよ。これを作ったのは、うん、誰だ?」

と尊がパソコンの画面を覗く。


「これは、作曲リーズル・R、奏の国、だって」

と尊。


「リーズル?」

とテレーザ。


「まさかね」

テレーザは「姫君格付けコンテスト」で出会った奏の国の王女、リーズル・ルイスを思い出していた。

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