第九話 戦局の転換点
1942年は日本軍の全盛期だった。
同年7月より始まったガダルカナル島攻防戦は、約2カ月にわたる攻防の末日本の勝利に終わり、米海軍は空母ワスプ、サラトガ、戦艦ノースカロライナ、ワシントン、サウスダコタを始めとする有力艦艇を一挙に失う大打撃を被った。
さらに1943年初頭には第二次インド洋作戦が発令され、第二次セイロン島沖海戦が勃発、英国海軍東洋艦隊は空母2隻、戦艦3隻を失いインド洋の制海権を喪失した。
連戦連勝、向かうところ敵なしの日本であったが、その力は徐々に削られていた。
米軍は戦力の回復を図る中、ミッドウェー、ガダルカナル両島やアリューシャン列島の補給線を攻撃し続けた。これに対し、日本側は有効な対策が取れず、被害は拡大し続けた。結果、1943年5月にはアリューシャン列島から、6月にはミッドウェー島からの撤退を余儀なくされた。
同年9月には日本は絶対国防圏を制定、これによりソロモン諸島からの撤退も決まった。しかし、撤退作戦が行われる1週間前の10月1日、米陸軍並びに海兵隊がガダルカナル島に上陸した。
1943年(昭和18年)10月3日
「敵機動部隊は空母7隻、そのうち4隻が大型空母の模様です」
「おそらく、エセックス級空母だろう」
参謀長山田定義少将の言葉に司令長官小沢治三郎中将は答えた。彼ら第三艦隊はガダルカナル島北部に展開、敵機動部隊の撃滅ないし友軍の撤退までの時間稼ぎを目指した。
第三艦隊 司令長官:小沢治三郎中将
第一航空戦隊【空母】「神鳳」「瑞鶴」
第二航空戦隊【空母】「蒼龍」「飛龍」「瑞鳳」
第四航空戦隊【空母】「隼鷹」「飛鷹」「龍鳳」
第五航空戦隊【空母】「赤城」「加賀」
第三戦隊【戦艦】「金剛」「榛名」
第八戦隊【重巡洋艦】「利根」「筑摩」
第十戦隊【軽巡洋艦】「阿賀野」
第四駆逐隊【駆逐艦】「嵐」「野分」「萩風」「舞風」
第十駆逐隊【駆逐艦】「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」
第六十一駆逐隊【駆逐艦】「秋月」「照月」「涼月」「初月」
第四十一駆逐隊【駆逐艦】「新月」「若月」
艦載機不足のため、第三航空戦隊(雲龍・瑞龍)は守備隊の撤収作戦に回されているがそれでも空母10隻を中核とする堂々たる陣容である。艦載機は合計562機、その全てが最新鋭機で固められている。しかし、相手も空母7隻、戦艦4隻を含む強大な艦隊だ。油断はできない。
7時30分頃、第一次攻撃隊が発進、240機(零戦120機、彗星84機、天山36機)の大編隊が敵機動部隊に向けて飛び立った。その40分後には第二次攻撃隊216機(零戦84機、彗星60機、天山72機)が発進した。従来の方法では非常に時間がかかった攻撃隊の発進は、各空母に装備されたカタパルトによって円滑に進めることができた。また、軽空母瑞鳳、龍鳳は戦闘機のみを搭載し、艦隊防空に専念した。
これだけの戦力をそろえた小沢艦隊であったが、米海軍の戦力はそれを上回った。
9時25分
「敵機接近!」
「対空戦闘用意」
艦隊上空には100機近くの最新鋭の零戦四三型が直掩についていたが、米海軍は120機以上のF6Fヘルキャットを投入した。練度、性能ともに互角かそれ以上、数の優位も合わさり直掩隊は半壊した。
「十戦隊、射撃始めました!」
艦隊外縁に位置する第十戦隊、旗艦阿賀野をはじめ各艦が長10センチ、長12.7センチ砲を振りかざす。しかし、止められない。
「敵降爆、加賀に向かいます!」
各空母も弾幕を張るが、敵機はぐんぐん迫る。
そして、加賀の艦上に閃光が走った。
阿賀野型軽巡洋艦
基準排水量:6,800トン
満載排水量:8,600トン
全長:174.5メートル
全幅:15.2メートル
速力:34.6ノット
兵装:長12.7センチ連装両用砲5基
61センチ四連装魚雷発射管2基
魚雷次発装填装置
8センチ連装高角砲2基
40ミリ連装機関砲4基
25ミリ三連装機銃6基
同単装機銃16挺
電探:13号電探2基
41号電探1基
同型艦:阿賀野・能代・矢矧・酒匂
改④計画で計画された新鋭軽巡。主砲を両用砲にするなど、防空艦というべき代物となっている。一方で、航空艤装はなくなり、排水量も増加し速力は若干低下した。改良型の815号型軽巡が⑤計画で計画されたが、完成することなく終戦を迎えた。