第八話 ミッドウェーの鳳凰
1942年(昭和17年)6月4日夜
「なにぃ、空母がいるだと!?」
「確証はありませんが、それらしき無電を傍受したと」
ミッドウェー島付近に展開する一航艦、その旗艦神鳳の戦闘指揮所は俄かに騒がしくなった。
彼ら一航艦は、MI作戦——ミッドウェー島の攻略及び敵機動部隊の誘引・撃滅を目的とする作戦——に参加していた。
第一航空艦隊 司令長官:南雲忠一中将
第一航空戦隊【空母】「神鳳」「瑞鶴」
第二航空戦隊【空母】「蒼龍」「飛龍」
第三戦隊(第二小隊)【戦艦】「榛名」「霧島」
第八戦隊【重巡洋艦】「利根」「筑摩」
第十戦隊以下略
赤城・加賀以下第五航空戦隊はいない。加賀は同年5月に生起した珊瑚海海戦で損傷、赤城は無傷なものの、艦載機の損耗が大きく参加は見送られた。
作戦開始当初、一航艦司令部は島の攻略が最優先であり敵機動部隊の撃滅は二の次、そもそも敵艦隊が出てくるのかさえ怪しいと考えていた。しかし、状況は変わった。
「長官、二航戦の山口司令より『直チニ敵空母捕捉ノ要アリト認ム』と意見具申が来ておりますが……」
「まったく多門丸め、気が早い奴だ。よろしい、夜明けと同時に偵察機を出せ、一艦偵もだ」
そして、翌日7時30分頃
「蒼龍一号機より入電、『空母2隻ヲ含ム敵艦隊ヲ発見』」
「長官、いました、敵機動部隊です」
「攻撃隊発進!」
4空母より零戦、九九艦爆、九七艦攻が36機ずつ、計108機の第二次攻撃隊が敵空母目掛けて飛び立った。そして、彼らは完璧に仕事をこなした。42機の犠牲と引き換えに第16任務部隊の空母エンタープライズ、ホーネットを撃沈したのだ。しかし、米軍もまた攻撃隊を放っていた。
10時20分
この時、一航艦は米海軍雷撃隊の攻撃にさらされていたがその多くが直掩機によって蹴散らされた。しかし直掩機の多くが低空に集中する中、やや遅れて到達した艦爆隊が手薄な高空に現れた。
「電探に感あり、高空に敵機多数!」
「直掩機を呼び戻せ!」
電探員の報告に合わせ、管制官が直掩隊に指示が出す。が、間に合わない。32機のSBDドーントレスが神鳳に迫った。
「対空戦闘用意!」
対空要員が慌ただしく動き、各種対空火器が仰角をとる。
「撃ち方始め!」
号令に合わせ、16門の12.7センチ連装両用砲が火を噴く。最大で毎分22発の発射速度を誇る両用砲は上空に濃密な弾幕を形成、3機がそれに絡めとられる。続いて、40ミリ機関砲が射撃を開始、さらに2機が墜とされるが、残る27機が急降下を始めた。
「敵機直上、急降下!」
「回避行動、面舵一杯」
神鳳の艦首が右に振られる中、25ミリ機銃の射撃が加わった対空射撃は激しさを増し3機を叩き墜とした。残る20機は弾幕に怯むこともなく、機首を上げて1,000ポンド爆弾を投下、そのうち3発が命中した。
「被害報告!」
「前部飛行甲板に被弾、格納庫内で小火災発生」
「二番高角砲破損、砲手全滅!」
「機関に異常なし、航行に支障はありません」
神鳳は飛行甲板が損傷、発艦不能となった。しかし、高い防御力を発揮し被害を格納庫内で止め、発生した火災の早期鎮火にも成功した。
敵機は僚艦の瑞鶴、二航戦の蒼龍にも迫り、瑞鶴は攻撃を回避するも蒼龍は被弾、飛行甲板が使用不能となった。一航艦は神鳳に第一次攻撃隊の損傷機を収容しつつ、残る瑞鶴、飛龍により残る米空母撃滅を目指した。
結果、第三次攻撃隊は第17任務部隊の空母ヨークタウンを攻撃、ヨークタウンは一旦は攻撃を耐えるものちに潜水艦伊168の攻撃によって駆逐艦ハムマンとともに沈没した。
さらに、両任務部隊は日本海軍の主力部隊と攻略部隊の追撃を受けた。彼らは駆逐艦朝霧、霰を撃沈、重巡三隈を撃破するも重巡ニューオリンズ以下巡洋艦5隻、駆逐艦7隻を失い壊滅した。
翌日にはミッドウェー島が陥落、こうしてミッドウェー海戦は日本の圧勝に終わった。