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死神聖女──私だって殺りたくない──

作者: 麦畑

 私たち聖女のお仕事は人々の救済。…………て自分に言い聞かせてますが他の人達からは死・神・と言われています。


 聖暦1933年、祖国ミクロシ聖王国は今、戦争状態にあります。──多くの人々が命を落とし私たち聖女もまた多くが使命も全う出来ずこの世を去ることが多いです。ですが私は決して死にはしない。


 あの人にまた会うまでは……


「おい!弾持ってこい!敵がすぐそこまで来てるぞ」


「はい、今すぐ!」


 私は数ある種類の弾の中からそれに合う弾を探し出し兵士にお渡しします。


「ちっ、遅せぇんだよ!死神が!」


 今は言われ慣れた死神。……正直私だってなりたくなかった。こんな死神みたいな聖女に……。


 最初は聖女に選ばれて嬉しかった。私は15の歳で国から聖女として選ばれた。私たちの村はとても貧乏でその日の食料すらまともにありつけない。ですがそんな日も私が聖女になってからは村に援助金が支給されおさらば。村は祭り騒ぎでした。


 近所に住む人達からは聖女とはとても誇らしい、真面目で優しい貴女が聖女とは納得だと、みんなから褒められ自分を誇ってくれる家族、そして私自身が誇らしかった。


「ねぇ、聖女に選ばれたんだろ?――!」


 背後で私の名を呼んだのは私の唯一の友達でそして、初恋の相手、名は。


「ギリズ!来てくれたの?」


「当たりめぇーよ!――は聖女に選ばれるなんてすげぇじゃん!」


 彼の笑顔はとても眩しくて暖かい。自然と私は笑みがこぼれ落ちました。


「絶対に私、戦場にいるみんなを助ける!今も前線で戦うパパやギリズのパパも助けてくるから」


 そう言うとギリズは小指を突き出した。この行為は私たちの国では約束事の度にするおまじないだ。


「絶対に帰ってこいよ、――!次に会う時は戦場だと思うけど俺も絶てぇ生き残るから」


 私はうん、と大きな声で言って彼の小指と自分の小指を絡めた。



 でも……聖女としての訓練が始まると私は、私の何かが壊れた。


「へぇ?……あの、コレは?」


 私の前に置かれた聖女の為の道具。


「見てわかるだろ?拳銃だ」


 私は理解出来なかった、聖女の道具に銃?なんで?


「あの……その、どうして銃なんか……聖女は祈りを捧げるのがお仕事では?」


 私がそう言うと顔つきの悪い巨漢の軍人が鼻で笑う。どこか見下す目をして。


「それは中央にいる大聖女様たちの仕事だ。貴様ら低級の聖女の仕事は戦場で戦う人々を安らかに天国へ連れていくのが仕事だ」


 どういうこと?、そんなこと一度も聞いてない。

 私は不安で辺りを見渡すと他の子達も戸惑っているようでした。


「あの、それと銃のなんの関係が」


 一人の少女が手を上げる。手が震えている、勇気を出して挙手をしたんだ。


「そりゃ、貴様らの仕事は────」


「おい!聖女!1名、片脚が吹っ飛んでる。こんな衛生環境ゴミの塹壕なんじゃ助からん」


 私を呼ぶ声が聞こえたら仕事開始です。私は白いホルスターに入っている拳銃に手を伸ばしました。


 現場に到着すると3名の兵士が居ました。1人は衛生兵、2人目は彼をここまで連れてきた兵士、そして脚を砲撃で無くした兵士。


「遅れました、聖女の――です」


「彼はもう無理だ、送ってあげて」


 衛生兵が私を見て冷たい言葉を言いました。彼はもう無理だと、ですが本人と彼の仲間はまだ生への執着で必死に迫り来る死へ、私へ抵抗しました。


「おい!見りゃわかんだろ?こいつはまだ助かる!」


「頼む、まだ、ころ……殺さないで」


 この国では同じ国の同胞を殺すのは地獄に堕ちる行為だとされています。もちろん自殺も。なので私たち現世の死の救済者、聖女が居るのです。


「これ以上は無理だよ、一兵卒。さあ聖女様彼を天国へ」


 頭ではわかっています。こんな劣悪な環境で脚を飛ばされ大量に出血、まず助からない。でも……本当は殺したくない。


「分かりました。汝の行いは同じ種の人間を傷つけた、だが神はそれを許し汝を受け入れる」


 私が祈りを捧げる中で彼はずっとやめて、頼むと懇願していた。そして彼の仲間は私の祈りを止めさせようと殴りかかろうとしましたが近くの兵士に取り押さえられ拘束されてました。


「それでは今までお疲れ様でした」


 私は銃のトリガーを引いた。銃口から弾が押し出され目の前にいる彼の頭を貫いて命乞いをした彼はピクリとも動かなくなった。


「終わりました」


 私は拳銃をホルスターにしまった。


「おい!この人殺し!あいつはまだ生きたいと言ってたじゃないか!この……おまえは、おまえは聖女じゃない、死を運ぶ、死を運ぶ死神だ!」


 兵士に拘束されている今はただの死体の彼の仲間が泣き叫ぶ。私にとっては聞き飽きたその言葉……死神。

 ですが彼がどんなに叫ぼうと私を傷つけることは許されない。聖女は戦場では特別、手を出そうものなら重い処罰が下ります。たとえ仲間が殺されようとも。


「私はこれで失礼します」


 私はそう言って現場を離れました。周りからは死神と罵られながら。戦場ではよく聖女が自殺をするそうです。この仕事に耐えれなくなって、罪悪感で自分の頭を…………


 ですが私は死ねません。どれだけ罵られようとも彼と約束したから、帰ってこいと。


 でも最近夢を見ます。──もしこのまま生き残ってこの戦場で彼と再開したら私は彼を殺せる(救える)のだろうか。




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