プレハティから農業地帯のレンデル草原を――
プレハティから農業地帯のレンデル草原を真夜中に走り、道を外れた木立で野宿をした。
食べるものが干し肉とビスケットしかなく、明日の朝になったら、もっとマシな料理が食べたいものだと思い、翌朝、手ですくいとれそうな濃密な朝日を浴びながら、ソウヘイとセールスマンは起床した。
ラジオをつけると、三人の面相が指名手配の言葉と一緒にきこえてきた。いい加減な面相書きなので、そこまで心配することはなさそうだが、
「えー、わたしもですか? はぁ、どうしよう」
と、セールスマンがこばした。
「とりあえず、アルテマ・ブリュワリーに行くべきだと思う」
「じゃあ、フェレルですね。本社工場はあそこです。そこの警備員にバツリの教習本を二冊売ったことがあるんですよ。でも、あなたたちはどうして、その少女を助けようとしてるんですか?」
「正直、誰か払ってくれるやつがいるわけじゃない。ただ、目の前でさらわれた。おれたちみたいな人間にとって、気まぐれな正義感に引きずられて動くのはちょっとした特権なんだよ」
「わたしも手伝ったら、その人たちにバツリの教習本を三冊くらい買ってもらえませんかね?」
「まあ、交渉次第じゃないか――ほら、先生。起きてください」
車の後部座席で寝ているシファキスは頭を布団のなかに引っ込めて、あと五分、と言った。
経験上、この「あと五分」が十二回、一時間分続くことは明らかだ。
しかし、対処法は慣れたものだ。防弾チョッキに包まれて守られた荷物のなかから、誕生日ケーキくらいの大きさの十二連発打ち上げ花火があるので、導火線に火をつけて、後部座席に放り込み、ドアを閉じた。
「伏せろ。流れ弾に当たるぞ」
ふたりは草地のくぼみに身を低くした。
すぐ、後部座席から悲鳴、白煙、色とりどりの火花、そして、花火十二発とリヴォルヴァー六発の、合計十八回の爆発音がした。