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幼馴染みを自慢してみた

「カレンー。吐いてないかー」

「もう、なんでそんなこと言うかな。──シン、その子は? え、え……。もしかして……」

「サンプル?」

「すごい、エルフだ! 初めてみたっ」


 カレンが勢いよく近づいてくる。

 なんだか、とても楽しそうだ。


 俺の運んできた少女のすぐそばまでくると、ガサゴソと腰の荷物入れを漁り、手袋を取り出すカレン。

 素早くそれを装着すると、カレンは少女の体を触診し始める。


「うわー。生きてるエルフだよ、シンっ」

「はいはい。あ、たぶん接地が異界化の発動条件、ぽいぞ」

「うそ、本当に! だとすると伝承によればこの子、ハイエルフちゃんなのっ!」


 なぜか一層瞳をキラキラさせると馬車に駆け戻っていくカレン。なぜそれがハイエルフなのかは、伝承とやらを知らない俺には不明だったが、カレンが言うならそうなのだろう。


──カレン、古書オタクだからな……


 その間に、マリエッタとシルビアが恐々とした様子で俺の方へと来ていた。


「ああ、お二人ともすいません。俺のいない間にカレンの奴、粗相しませんでしたか?」

「あー。その……馬車は問題ありません」


 そっと視線をそらしながら告げるマリエッタ。

 どうやら中は汚さなかったようだ。中は。


「それはカレンが、ご迷惑をおかけしてすいません」

「いえ、そんな。それより、その少女が、その。異界化の原因、なんですか」

「その可能性が高いですね。一応、直接お手は触れないようにしてください」

「わかりました」


 俺たちが話していると、すぐに何か持って、カレンが戻ってくる。大きな布だ。見たことがある。あれはカレン特製の一枚だった。


「あの、シン殿。あれは? とても複雑な紋様が見えますが……」

「魔導具です。しかも、複数の効能を持ってる奴ですね。あの見えている紋は、すべて記述紋です」

「あれ、すべてですかっ! 何て複雑で美しい……」「まあっ。あれほどのお品ですと、物凄く高価な魔導具に違いありませんよ、お嬢様」


 カレンが広げた魔導具の布を見て、感嘆の声を上げるマリエッタとシルビア。


「まあ、カレンの自作なので、値段は材料費ぐらいですけどね。ただ性能は凄いですよ。ああ見えて、カレンは天才なので」


 俺も思わず少し嬉しくなって幼馴染み自慢をしてしまう。

 そんな俺に向けるマリエッタとシルビアの視線は不思議なものだった。


 ──少し呆れらちゃった、かな? まあ、仕方ない。カレンが天才なのは事実だからな


 俺がそんなことを考えていると、カレンが話しかけたくる。


「シン、ここ! ここにその子下ろして!」


 汚れることなど気にした風もなく、地面に広げた布を指差すカレン。マリエッタとシルビアはその魔導具の雑な扱いに目をむいている。


 俺はいつものことなので、言われるがままに浮遊盾を動かすと、その魔導具の上にハイエルフらしい少女を下ろしたのだった。



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