報酬を受け取ってみた
「カレンさん、シンさん。この度は本当にありがとうございました。こちらが今回の報酬となます。お二人が居なければこの領は、どうなっていたことか……」
「被害がほとんど出ずにすんで、何よりでした。これはマリエッタさんが兆候を察して早め動かれた功績ですよ」
マリエッタの住まう館へと戻ってきた俺たちは今度こそ今回の異界化が解決したと正式に宣言し、マリエッタから報酬をせしめたところだった。
ぎっしりと金貨のつまった革袋の重みが手の平に心地よい。これが、カレンの工房設立への一歩となる。
俺はカレンへと金貨のつまった革袋を示すように持ち上げ、二人してにやりとした笑みを交わす。
「──それでその、セシリアの父親の方は、何か手がかりは……」
「いえ、残念ながら。ロナの方についても手掛かり無しでした。ただ、空間の歪みがありましたが、それは放置は出来ないものでしたので──」
俺は、足にまとわりついて遊んでいるロナを見下ろしながら、セシリアにもした説明を、マリエッタへと繰り返す。
「なんとっ! それが本当でしたら、世紀の大発見ではないのですかっ!」
マリエッタの驚いたような声。
「それが、俺たちが元々いた王立魔導工房では、この仮説は異端扱いされていて……」
そう説明していくと次第にマリエッタもどこかふに落ちた表情へと変わっていく。そもそもマリエッタたちは、王都の王立魔導工房へ今回の異変の話をしに行って、まともに取り合って貰えなかった経験をしているのだ。
あそこが旧態依然の凝り固まった組織だという認識なのだろう。
その通りなのだし。
マリエッタのどこか同情するような顔を見ながら、俺が説明を続けているときだった。席をはずしていたセシリアが勢いよく駆け込んでくる。
「マリエッタ様! 大変です。王都より、早馬です」
「落ち着いて、セシリア。早馬の運んできた手紙の内容は?」
「王都直下にて、異界化が発生。王都の魔導師が対応に当たるも、死傷者が多数出ていて苦戦中とのこと。周辺の各都市に至急の応援要請ですっ!」
「シンっ」
「ああ、カレン。死傷者が出ているなら、詠唱派が出しゃばったな。紋章派の皆なら、危険は最小限にとどめるはずだ」
「そう、だよね……」
不安そうなカレンに、俺は冷静に派閥政治から見た分析を伝える。そしてカレンの気をそらそうと、逆に質問を投げ掛ける。
「それでカレン。発生パターンから何かよめるか?」
「流石にサンプル数が足りないや。でも、セシリアさん」
「はい」
「お手紙には王都直下とあるんですよね」
「そうです」
そういって、一度マリエッタを見て、無言の了解を得てからカレンへと手紙を渡すセシリア。
じっと手紙を手に取ると、カレンはいつもの深く考えている様子を示すのだった。




