始まりの物語
♬キャンプだホイ キャンプだホイ キャンプだホイホイホーイ♬
マイク真木の歌を口ずさみながら 林の中を歩く少女
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どういうわけかは知らないが、気が付くと荒野にぽつんと放り出されていた少女
ここはどこ?
私はだれ?
おさだまりのつぶやき。
「君 自分が誰だか知らないの?」
突然声をかけて周りを見渡すも人影なし。
「やだなぁ 僕だよ 僕」穴の中から飛び出してきたピンクのウサギ。
へっ?
「僕は ピンキー。君のことはなんとよべばいい?」
「えーと ピンキーさんはピンクウサギなの?」
少女は ウサギを見下ろして尋ねた。
ウサギはぴょんと跳ね飛び
「君 自分の名前がわからないなら 僕が名付けてあげようか?」
「けっこう。私の名前は私が決める!
私は リリー!」
「残念。せっかく名づけ親に成れるかと思ったのに」ピンキー
「お兄ちゃん 人間なんかの名づけ親になっても 面倒が増えるだけよ」
穴の中から 今度は白うさぎが出てきた。
「私はホワイト ピンキーの妹よ」
「クロでーす。長男だよ」続いて黒兎も出てきた。
「はじめまして。どうぞよろしく」リリーは丁寧にお辞儀をした。
「リリーちゃん 人間なら 人間の小屋に行ったら?
昔から空き家だけど まだ使えると思うよ」クロ
「だねー」ホワイト
「ちっ しかたねーな。おくってってやるよ」ピンキー
三匹のウサギに連れられて 原っぱを横切り林に入った。
一人だと荒野に見えたが、愛らしいウサギに囲まれていると、緑の原っぱに見えるこの不思議。
遠目には 近寄りがたい森に見えたのが、ウサギと一緒に入って行くと怖くない。
・・
空が見えないほど、枝葉の茂った木々の中を抜けると、
木漏れ日の差す、シラカバ林だった。
もちろん 木々の名はテキトー
記憶の中から なんとなくそれっぽい名前を引っ張り出して当てはめてみる。
しばらくすると、陽だまりの中に立つ一軒家が見えてきた。
野原の真ん中にポツンと一軒家?
それとも 広い庭に囲まれた戸建て住宅?
「じゃ こっから先は 君が先頭にたって」ピンキー
「ここは 再び人間が訪れるまで封鎖されているんだ。
だから 君がまず最初にはいってね」クロ
白黒桃色の3匹のウサギが 横一列に並んで見送ってくれた。
おっかなびっくり前にすすむと・・
意外や意外、離れたところからは平たんに見えた野原は、実は緩い斜面だった。
でもすぐ 平らになって、目の前に小川が見えた。
わぁ~お こんなの外からみえなかったよ。
平均台よりちょっと広めの板がかかっていたところを渡った。
すると 鳥の声が聞こえてきた。
えっ?鳥どこ?
突然目の前に レモンイエローの体に 羽の端っこがグリーンの色鮮やかなセキセイインコが現れた。
思わず 子供のころ飼っていたセキセイインコのキイマちゃんを思い出した。
「ふふっ じゃあ 私のこと これからキイマって呼んでもいいわよ」
セキセイインコがセキレイのように尾羽を上下させながら言った。
「キイマ? 始めまして。リリーと言います」
「ようこそ 不思議の国に」キイマ
「不思議の国?」
「そう ここは 人間の想像力によって生き物が動き出す不思議の国だ」
突然足元に 姿を現した コロボックル。
「だから 頭の中に思い浮かべることには 気を付けることだな」
白いオオカミも出現した。