量子力学は健康にいい
最近の量子力学は健康にいいんだって。
パパ、ママ世代の頃は、少しかじってるのが、トレンドだったそう。
パパに聞くと、
「パパは、量子力学部のエースだったんだぞ。」
ママは、
「学区では、腕を鳴らしたものよ。」と、言った。
あたし達世代は、量子ネイティヴなので、量子は最初から見える。
そうね、コツは、次元を上げて、その目線で見ること、かな?
ネイティヴ世代の上次元から目線って言われるけど、あたしはせいぜい、6次元だし。
クラスの繝斐さちゃんは、246次元まで見えるんだって。
さすがに、世界大会レベルの子は学校にはいないかな。
でも、量子転移が得意な子は、何人かいるよ。
あたしも、運動会で1位を取ったことある!
……でもね、近所に住む、繧シ繝励ヨくんは、生まれつき、量子が見えないの。
お父さんとお母さんが、反対派で、まったく光子を食べなかったんだって。
……うん、そうなの。
パパとママは、イヤがるだろうけど、あたし、繧シ繝励ヨくん、好きなの。
彼ね、量子力学が得意じゃないし、見えないんだけど、お花をあたしに、くれたのよ。
【二重スリットから抜け出した光子が、花のような干渉縞を作り出し、あたしに花束として受け渡してくれる確率】ってどれくらいかわかる?
ぜんぜんわかんないけど、彼は、お誕生日プレゼントって言って、お花屋さんで、貯めたお小遣いで買った花束を、これ、似合いそうだからって、えらんだのくれたの。
量子が見えるとね、実在って、意味ない感じで。
ぜんぶ、情報が起こす確率の幻想?
えらい人が言ってたんだって。
幻想でも、情報でも、あたしが繧シ繝励ヨくん、好きなのは、変わらないでほしい。
繧シ繝励ヨくん、はやく量子が見えて、元気になるといいよね。
ね? なんとか猫ちゃん?
うとうとと、ねむたげに揺れるマボロシの猫が、半分の確率で生きて死んで、あたしは生きてる時にエサをあげる。
「あーあ、量子転移して、繧シ繝励ヨくんの部屋、行ってみたいな〜。」
………まさかね。この時のひとり言、猫にエサをあげに来た、繧シ繝励ヨくんにぜーんぶ聞かれてるなんてことは。
6次元が見えるあたしにも、わからないことだったの!
よいおとしを〜⊂((・x・))⊃