産まれた時から死ぬまでの話(1)
今日は1.2.3!の日。
「それでさー?あいつの書いた小説コンテストに出したらなんと!賞貰ったわけ~・・・。」
そう私は搾取される側の人間だ。
変えようのない、そして変えようとも思わない”正当”な事実。
私は生まれてきたことが罪らしい。こんなに鍛えたってどんなに勉強しても、誰も越えられない。
「だ~か~ら~!あいつは役に立たないから使い捨てるだけだっての!あははは!」
実際みんな私のことは見下してるし、見下ろしなれてる。
だから、本当は私より下なのに気付いていない。
それは当たり前なのだから。
・・・そんなことを考えて見返すことなど捨て去って帰路を赴くのだが、
こんな時だって運命は残酷らしい。
蛇行運転の車が小学生の列に食い込もうとする。
私は思った。このままでは一人・・・そう丁度あの子が死んでしまう。
気付くのが遅かった。ブレーキ音の後に真っ赤に染まる車のガラス。
こんなはずではなかった。・・・私の弟だ。私は私は私は・・・飛び出してしまった。
甲高い音とともに次々とぶつかる車たち。
その真正面に赤い池を作り倒れこむ私。
(ああ。天国・・・行けるかな?)
罵声が響き罵詈雑言が飛び交う。
正直来世というのに期待はなかった。来世などない。そう思っても返事は返ってこなかった。
――――――バシャバシャ!
ぬるま湯を掛けられる。と、なにやら甲高い叫び声が聞こえる気がする。
これが地獄だろうか。・・・にしても甲高い声すらも聞き取りづらいというのは欠陥ではなかろうか?
私は声を張り上げる。が、喉がなにやら”しあわせな”感じがするのだ。
(無理に声出したら喉が破けそう)
実際にそんな話だとか事件は聞いたことがない。
”あかちゃん”の喉が破けるなど。
叫ぼう。どちらにせよ、訴えたいことがある。
「・・・・・・・・・・おぎゃー!おぎゃー!おぎゃ-!」
!?。お・・・ぎゃー??
手元を見るとそれはそれは奇麗な腕輪がある。
そう。私は異世界に転生してしまったのである。
――――――――エナポテ=サウリーナ=ジョバ
なぜだか知らないけど両親はフルネームで呼んできた。
母親は特につきっきりで子守唄を歌っていた。
エナポテはどうやら姉の名前らしい。だが、私の名前でもある。
姉の名前でもあり、私の名前でもある。説明しよう。
サウ・・・何とかは家族とは被っていない。エナポテというのは姉が先に名付けられたのだ。
どういうことかというと、父の名前ミザエナ=カエサル=エザボールからエザボールだけ取ったのが姉。
・・・本当にややこしい。名前で苗字だとかファミリーネームとかはなくて好きな部分を引き継ぐと言えるらしい。
でだ。私はなぜか姉の名前の一部を継いでることになっている。
エナポテがなんか長ったらしくて偉そうにも思える意味があるらしくて父が継がせたらしい。(キラキラネームだ)
私のことに戻ろう。性別は昔と変わらず女。非力にもほどがある。姉は不満はないらしいが。
赤ちゃんといえお箸も持てないのはイライラしがちだ。
赤ちゃんといえば寝るのが仕事、と思われがちだが本来は言葉を覚えるのが仕事だ。
あせる、あせる。本当にこの意味なのかとかこの発音であってる?とかまず発声ができないので確かめようがない。
「だー。あー?うー。」
自分なりに発音してみるが力が入らない。・・・クソ不自由だ。
こほん!変な言葉が出てしまったがそのくらい焦っていたということだ。
「エナ?おきた?ごはんたべる?」
姉がのぞき込むが位置が位置なので顔がわからない。
首が座ってない。というやつなのだろう。
にしても、姉の顔もわからないとは。なんだろう?もう少し気を回せないのだろうか?
「エーラー!エナがおきたー!」
母を名前で呼ぶ文化なのか?
母の名はサミエーラ=ドンライ=エザボール。だからエーラか。
姉とはちょっと発音を変えて・・・。
「エイラ・・・。」
上手く発音できたと思う。
これが赤ちゃんの時の私。
で!少し前の私!
「エイラー!ナポは?」
姉のあだ名はナポで統一させてもらった。
ややこしくなるといけないので周りもナポと呼ばなければ不機嫌になる。のをやっていた。
「ナーポー!遊ぼう?」
どうやら間が悪かったらしい。
木剣をこちらに向けて追いかけてきた。
「きゃー!つかまるー!」
これは女の子の遊びなのかどうかは置いといて、楽しいのは間違いない。
・・・しばらくたってナポに木剣をプレゼントされる。
どういう意図なのかとか、そういうことは深く考えなかった。
とにかく、これで帯刀(対等)ってわけだ。
姉たるものの覚悟を見せてもらおうか!
・・・足払われた。・・・オンブサレタ。・・・抱きかかえられあやされた。
思うにこの体が問題だと。
「ナポ!かくごー!」
今日も今日とて足払われる。足払いのコツって何だろうか?
ナポの後ろからひっかけようか?後ろからは卑怯って男の子が言ってた。
ならまあ覚えておこう。”有用ではある”と。
今日の日記に父弱いと書いておこう。
―――――――メラニン
いきなりなんだ!?と思うだろう。父がたまりかねて木剣術の師範として雇った親友らしい。
通称ラニ。
自分でそう名乗ってるわけだから失礼はないはず。
「ラニのばーか!」
そう。失礼はない。鬼の形相で追いかけてこようが自分で名乗ったのだから失礼には当たらない。
まあ冗談は置いといて追いかけっこする体力はついた。
ラニに質問があった。
「魔法ってないの?」
「んなもんねえ!!」
即答・・・。
異世界にきて魔法もないなら、
「ねえラニ!剣おしえて!」
にやにやと笑いながらこちらを見てきた。
気持ち悪いのもあるが、男というものに慣れてないのもある。
「ラニ?カエサルにいうよ?」
まあすぐ取り繕うように表情を整えてきたが遅いだろ。
ラニからはとにかく思いっきり振っても見ろ。と言われ、非力なりに振ってフッテふった。
木剣が折れるのが先なのか?私が値を上げるのが先なのか?
――――――140の月
ようやくラニに一撃くれてやることに成功したころ。
姉に騎士団から試験の案内がやってきた。
姉の実力も折り紙付きというわけだ。
夜になって帰ってきた姉はいきなり剣を構えてこう告げた。
かまえろ。
どうやら落っこちてやけっぱちになったらしい。
木剣をかまえて走る。
ダっ!キンッ!!
手加減されたのか、一撃で剣をはじき落とした。
ちっ!
舌打ちするな。
舌打ちしたすぐ後に部屋に入ってそれっきり。
姉は旅に出ると言い残して旅立っていった。
一言、『エナに魔法を使わせるなんてずるい。』
そう言い残して旅へと出たらしい。
魔法?ラニはないって・・・。
「ああ。あるよ。」
そして今に至る。
―――――12歳の夏
「ちょっ!ちょっとまって!カエサルもないっていってたけど・・・。」
少しのふくみ笑いとともに、
「いやいや。騙される方が悪いんだけども?」
とりあえずだけど一発殴らせたい。姉にも私にも。
「はぁ?騙してたわけ?こっどもー!」
怒りの感情をそのままぶつけてもしょうがない。馬鹿にして気を紛らわせる。
ラニはピクリとも動じず言った。
「そだね。そんな子供に騙されてるエナは子供?大人?」
12歳で騎士団に入った話も聞かなくはない。
100年ほど前の英雄カエサルもそうだったらしい。
ひっそり、隠居して今もどこかで伝説の様に暮らしてるらしい。
「つまり、私ぐらいになるとこの年はもう大人でしかないのだよ?」
「じゃあ、まあ、とりあえずお教えしましょうか?マイレディ?」
おちょくっている。
「そうね。教えないといけないかな?」
手をくいっと引いて庭へと出る。
「初歩の初歩から教えよう。まずカエサルも得意な炎魔法からね。」
唱えよ。
天空からギドをおろせ。
ミソラシ(未空シ)のギドから矢を射たまえ。
弓を構えろ!ギド!
ドン!
木に矢のような炎の塊が放たれる。
パチパチと燃える。
バケツから水をかぶせる。
バシャっ!
「これが炎の初級”ギド”。やってみ・・・。」
どぉーん!
木が真っ二つに折れて倒れ掛かる。
「ギドって簡単ね。他は?」
二つに折れた木の片方を見てラニがつぶやく。
「実験は成功だ。」
なに?実験??
「そう。実験ね。実はカエサルと実験をしてたんだ。魔法の原理を知らずに育った子供は知識欲で才能を目覚めさせるか?ということ。」
カエサル!本当に騙してたのか。
「まあ納得しなよ。するしかないでしょ。」
私はこの時,道を間違ったのかもしれない。
「もう、友達なんて作らない!一人でも生きてく。決めた。私も旅に出る!」
ラニが手をそっと持って”そばやかに”言った。
「それがあなたの選択なら。」
私は端的に言って吐き気を催した。
「うげ、気持ち悪いから話してくれない?」
腕輪から光が放った。
それはまるで
儀式の様に
美しい光景で
目から離せなかった。
「・・・・・・・・・」
ナポを呼んでこようか・・・。
いや、ナポはもう・・・。
「エナ?で?どうするんだ?」
私は、剣を学ぶ。そう、姉を越えなければ姉の考えは見えない。
「私は剣を極めるよ。だって英雄カエサルは剣の使い手だしね。」
ラニはため息とともにこんな言葉を吐いた。
「まあ、こんな言葉もある。剣は極めれば魔法と見分けがつかないってね。」
ラニから剣を学ぶ。それが私の最初の選択。
――――――入試当日
今日はエナの学校への入学試験当日。
(今日という日に感謝をすることそれすなわち剣の極意。)
がやがや わいわい がやがや
「ええー・・・今日の試験内容を発表します。まず剣士候補希望生諸君。前へ。」
がやがや がやがや わいわい
「ではまずこの鉄製の剣でカカシを斬ってもらいます。」
そうこれが試験。皆困惑するだけ。
「い、一番!いきます!」
斜めに斬りかかる。ザクッ!
「!?(斬れてない!?)」
私の番は21番。観察させてもらおうかな。
てい!やあ!そりゃ!
だめだめ。その角度なら袈裟斬りより・・・。
「つぎ!21番!」
21と言ったら私。
剣は片手で持ち、斜め下から思いっきり斬る。その時左手はグーパンできる位置に置く。
「っっっっ!」
ザンっ!
斬れたカカシにグーパン。
「片手で・・・なるほど。」
シーン・・・。
「次!22番!」
やはり剣を選ぶのは正解だったらしい。
だが、
や っ ぱ り 友 達 は 作 ら な い !!
話しかけられても無視。足を引っかけられようが無視。なにがなんでも無視。
そのうちだれもいなくなるだろうと楽観視してきたがダメだ。無視してるのが伝わってない。
「エナはどう思う?」
聞いてなかったのは置いといていきなり話に混ぜないでほしい。
「エナはうなづくか横に振るかしかしないって~!」
コクリとうなづく。実際うっさいという意味なんだけど。
「だよな。エナはドラゴンの卵ってどう思う?あり?なし?」
どうしても私を話にいれたいらしい。首を振る。
「なし?なんだ、ドラゴン否定派か。なんでもドラゴンはうまいらしいぞ。」
ちょっと興味があるといえばある。
「ドラゴンの卵って魔道具の名前じゃなかったっけ?なんでもせえぶ?できるってやつ。」
学校にいる間だけ我慢すればいい。そう考えながら父の言葉を思い出す。
『姉が旅だった年。その年になったら旅にでも出るといい。父さんは否定はしない。・・・死ぬなよ。』
そう。剣を極めるは建前で本当は姉に会いたい。ただそれだけなんだ。
「・・・ブし・・・か?」
???。なんだろう。夢の中で声って聞こえるもんだっけ?
「セー・・・ます・・・?」
夢の中で聞こえたような。
「セーブしますか?」
!!!。
「せえぶ?という言葉に聞き覚えはないけど・・・夢ならあしらうだけだね。答えは”はいはい”」
『セーブが完了しました。』
ぶつんっ。
まるで糸が切れたような感じがした。
それ以来その夢は見てない。
「カエサル!今日は飲みに行くか?」
ラニだ。ちょっと敬遠している。
「ラニか。また奢らせる気か!?まったく・・・。」
ラニが絡んでくるのは全力で阻止させてもらう。
―――――――15年月
学校を卒業することに意味を見出せない。却下。
今旅に出ること。時間は命より重い。
「旅に出ます。エイラには秘密の旅です。」
長々と書き連ねてたが要約するならそういうことだ。
帯剣を許される騎士候補生。旅に出ても騎士である証明として騎士候補生であると名乗る。
「これでよしっと!まあこんなもんでしょ!」
ぎっしりとお弁当を敷き詰めてトランクをしめる。
ばたん!
トランクを両手にもってうんしょうんしょと引きずっていく
「あれ~?多かったかな?少し減らそうかな・・・。」
ここから馬車が出てる街。そこまでの旅費しかない。
・・・。・・・。「トランクって背負った方がよくない!?」
背負って実家からとてとてと歩いていく。
ここから何日もかけて旅に・・・。
「ひぐっ!?」
思わず変な声が出る。
おなかのあたりを探る。
胸に、剣が、刺さって。
「ごふっ!?あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!」
血がどぷどぷと出て止まらない。家からまだ一キロも歩いてない気もする。
目の前には血の池。いや、赤いジャムがこぼれている。
(なんだジャムか。血がこんなどろっとしてるわけ・・・ない・・・よね?)
意識がだんだん引っ張られる。上へ上へ。持っていかれる。
(どうなってるんだろう?私の身体。重いのに浮かんで・・・。)
一度目の死亡。15歳誕生日の夕刻。死因:刺殺。