ー①ー
外では野球部と陸上部が練習をしている。
夕暮れ空はとてもきれいで思わず写真を撮ってしまった。
「晃ちゃん!ちょっと目を離した隙になに休憩してるの!」
幼馴染みの悠李に怒られた。
変声期がまだきてないのか、悠李は男にしては少し高めの、そしてゆったりした口調で話す。
でもそれは俺といるときだけだ。
高校に入学してから悠李は変わった。
中学では、今は俺の前でしか見せない素でいたのになぜ急に変わったのだろう。高校デビューというやつだろうか。
そんなことを考えながら時計を見るともう17時を過ぎている。
「晃ちゃ~ん?!さっきからなに考えてるのかな?ペン置いてるけど目の前のプリントは終わったのかな??」
はい。終わってないですね。
全く集中することができなかった俺は1時間以上ぼーっとしていたようだ。
問5までしか答えが書き込まれていないプリントを見てまたペンを持ち、にらめっこを始める。
「ちゃんとやります。」
ちなみに、このプリントは問18まである。
「よろしい!分からないとこあったら教えてあげるから!早くしないと僕この本読み終わっちゃうのであと30分で終わらせましょう!」
「うぅ~……」
鬼だ。まあ、補習に付き合ってもらってて俺がどうこう文句を言える口ではないが…この量を30分!!頑張っても俺の頭では問15までが限界だろう。
「ふふっ…」
なんで笑われたんだろう。俺の苦しむ顔がそんなに面白かったか…?
すると悠李は読んでいた本に栞を挟み、本を鞄へしまった。
「じゃあ問6からね。これはこれをxに置き換えて~……」
「お、終わった…」
時計を見ると30分経っていた。
「よく頑張ったね~!じゃあプリント先生に出して帰ろう!」
悠李は全問とても分かりやすく説明してくれた。
そしてスイスイとペンが進み、本当に30分で終わったのだ。
「天才だな?」
思わず声に出していた。
「えっ!ふふっ。天才ではないけど晃ちゃんに誉められるの嬉しいな~」
薄暗い教室でにこっと微笑んだ悠李はとても可愛く、そしてはっきりと見えた。