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序章

 お姉様へ。



 お元気ですか。

 無事王都に到着して、探偵事務所を開いたと聞いてます。

 まさか本当にレーヌ伯爵家から出ていくとは思っていなかったので、びっくりしました。エドワード様やお父様も驚いて、心配してます。

 お姉様は誤解しているかもしれないけれど、私達は決してお姉様を追い出そうとしたりしていません。ただ、お姉様はレーヌ伯爵家にいても窮屈なんじゃないかと思っていたので、それも踏まえて今後をきちんと話し合いたかった。でも肝心のお姉様が急に出ていってしまって、私もみんなも戸惑ってます。

 だってまだお祖母様は亡くなったばかりで、形見分けも終わっていないのに……ううん、お姉様はきっとお祖母様のいない屋敷がつらかったのよね。お父様なんかは怒ってるけれど、私にはわかります。

 ただ、遺産だとかそういうものはきちんとしたほうがお姉様のためにもいいです。レーヌ伯爵家としてのものはもちろんお父様が受け継ぐよう手続きを進めているけれど、お祖母様個人の遺産があるでしょう。お姉様が王都のお屋敷をもらったみたいに。ひょっとしたら王都のお屋敷に何かあったりしない? もし何かあったら、お姉様が遺産隠しだとか悪く言われてしまうわ。それはさけたいの。

 私達にとっても大切なお祖母様の形見だから、適切に管理していきたいと考えています。

 どうすべきかお父様とエドワード様も話し合っていて、まずエドワード様が先に女王陛下に相談するために王都に向かいました。女王陛下が忙しくて相談に時間がかかっているみたいだけれど、私達もお姉様と話し合いたいなと思ってるので、エドワード様から連絡があり次第、王都に向かうつもりです。

 エドワード様に招かれての話し合いだから、王城から何か連絡がくるかもしれません。そうしたら挨拶しにきてほしいの。滅多にないことだから緊張するかもしれないけれど、女王陛下はとても優しいって聞いてます。

 そう、お姉様が王都でお祖母様みたいに探偵をしているってお話についても、きちんと話し合いたいってお父様が仰ってました。いくら社交デビューができてないからって、伯爵令嬢が労働者みたいに働くなんて嫌がらせにも限度があるって……私も心配です。

 そう、お父様はついにお姉様に縁談も考えているみたいです。年内にちゃんと相手を選んで、婚約をととのえるって聞きました。早ければ来年には結婚できている計算です。私のほうは王族への輿入れなので、どんなに結婚を急いでも再来年以降になってしまうから、順番的にはお姉様が先にできるし、悪くないと思います。

 ただ、結婚については私、お姉様に申し訳なく思っています。エドワード様のことがあって、色々つらい想いをさせてしまったと思うから。ひょっとしたら気が進まないかもしれないけれど、お姉様はもう十七だし、急いだほうがいい相手が見つかるのも事実です。お姉様だって子どもがどうこう言っていたから、結婚願望がないわけじゃないんでしょう? 私も精一杯、応援するね。

 だから王都であまり変な噂が立たないよう、人間関係、特に男性には気をつけてください。実は、お姉様が住んでる王都のお屋敷に誰か若い男が出入りしているって耳に入っていて……助手だとか一応聞いてはいます。それにお姉様のことだから、まさか恋人だとかそんなことはあり得ないと思うのだけれど……万が一ということもあるものね。もし使用人との道ならぬ恋とかなら、私にこっそり相談してください。逆に貴族とか商人なら、気をつけてください。何かよからぬ狙いがあるのかもしれません。

 お姉様も色々焦っているのかもしれないけれど、お父様だってお姉様に働くなんて苦労をさせたくないはずです。きっとお姉様にぴったりの縁談を持ってきてくれるわ。安心して、楽しみにしていてください。

 色々口うるさくなってしまったけれど、私もエドワードもお父様も、全然怒ってません。ただ、お姉様を心配しているだけなのよ。

 だって私たちは家族だもの!

 色々お姉様のことを悪く言うひとはいるかもしれないし、私とお姉様は異母姉妹だけれど、どうか家族の絆を忘れないでください。

 それではまた、今度は王都で会える日を楽しみにしています。


あなたの愛する妹ジェシーより



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