出会いは突然に2
「今年は少しは楽しい夜会になるといいなぁ」
「それはどうでしょうか...」
ウィン様の独り言のような言葉に、マクリス様が返事をしている。マクリス様はまだ不安なことがあるらしい...。
「どうかしたんですか?マクリス様」
「あ、申し訳ありません。今年は、ミレイ姫様がいらっしゃるのでミーヤ辺境伯令嬢のお相手をする方がいません。しかし、毎年必ずクライス王子に王都滞在中の相手を頼んでいたほどです。もしかしたら、面倒なことになる可能性もあります」
確かになぁ...。しかも、婚約者だと勝手に言いふらしていて、それを国王から注意されても全く聞く耳を持たずに、婚約者だと言い続けるのはクライス王子に相当執着していることを表している。
そんな人が、今回その執着してる相手に婚約者が出来ていた上に、毎年お相手をしてくれていたクライス王子も今回は、私のエスコートをする。
絶対に何かしてくるに違いない。
マクリス様が不安になるのも無理はないか...。マクリス様は、クーさんの手伝いもしてるからミーヤ辺境伯令嬢のことはたぶん、マクリス様が対応をしてるんだろうな...。
「ま、その辺りはミレイ様はご自分であしらわれるでしょうから大丈夫ですよ」
「そうですね、暗殺者を綺麗にご自分お一人でお相手して余裕で処理したりしているミレイ様なら、そんなご令嬢ぐらいなら余裕であしらうでしょう」
なんだろうか、ランの言葉は別にいいんだけどルイの言葉は何か嫌味に聞こえるな...。
暗殺者が送られていた最初の方は、私一人で対処してたからそのことにルイとランが不満を感じていたのは知ってたけど、ここまで言われるとは...。
「ごめんて、ルイとランに怪我をしてほしくなかったんだよ」
「それでも、です。ミレイ様はもう少しご自分を大切にしてください」
「本当です、何のために私達がいるのか分からなくなります...」
ルイとランが困ったように笑っている。
そんな様子を見ていたウィン様が...。
「ミレイ姫様って本当に強いんだな、その侍女二人も相当な実力を持ってると思ってたんだけど」
ウィン様の言葉に、二人は揃ってため息を吐きランが言った。
「ミレイ様には、本当は護衛はいらないんですよ。それぐらい強いですよ、ウィン様のお父様...フェリウス団長様が教えることはないと言われていましたし」
「あの親父がな...」
ウィン様が、キラキラした目で私を見て来た。
「まずは、ミーヤ辺境伯令嬢の問題が先ですよ」
はぁー大変だなぁ...。
「すまない...」
「いやいや、クライス王子のせいでは無いですから」
クライス王子とともにヴァイス様も頭を下げている。そんなに気にしなくてもいいのにな...。
コンコン
「見てきます」
ルイがノックの音に反応して、扉に向かう。
「それで、その令嬢の到着はいつになりそうですか?」
「あぁ、それは・・・」
「ミレイ様、クライス王子様」
珍しく、ルイが会話を遮ってきた。
「ご到着されたようです。こちらに向かっていると報告がきました」
「え?」
「そのはずはありません!いつも夜会が開かれる一週間ほど前にしか到着しないよう、フレイ辺境伯と国王陛下で決めていたはずです!」
マクリス様が急に大声を出した。
そんな約束があったんだ...。て、こっちに向かってる??
「まずいな、ミレイ姫。今日は失礼する」
クライス王子達が、慌てて部屋から出ようとしていた時...。
「ここにいらしたのですね、クライス様!」
可愛らしい声がした。