婚約
コンコン
「父様、失礼します。ミレイです」
「あぁ、入ってくれ」
私を迎えてくれたのは、父である現バーミリア国王ノヴァ・フィーリス・バーミリア。金混じりのブラウンの髪に、琥珀の瞳のイケオジである。
「さぁ、こちらに座って。焼きたてのアップルパイもあるからね」
「ありがとうございます、父様」
私が座って待っていると、父様はアップルパイと私が好きな紅茶を淹れて持ってきてくれる。
父様は、私の母が“毒殺”されてから自分と私が口にするものは父様自身で準備するようになった。
「さて、ミレイ。実は、君の婚約が決まったよ」
「私の婚約?」
さっきの噂でもあるように、あまり私の評判はよくない。そんな私と婚約してくれる国なんて、いったいどこだろ?
「ま、婚約というのは建前でな…。最近、王妃がまた動いているらしい」
「あー、避難した方がいいぐらいですか?」
「ミレイがやられることはないだろうけど、今回は規模が大きそうでね。周りの者達に被害がでそうなんだ」
「分かりました。で、その国って?」
「グレイシア王国だよ、今回話を持っていったら二つ返事で返ってきたからね」
あそこの国には、父様の友人が多いし私もお世話になった人達がいるからな。
でも…。
「婚約する王子の意思は、全く聞いてないんだろうなぁ」
「まぁ、あいつらのことだからな。とりあえず、迎えが明後日には来るらしい、そのつもりで準備頼む」
「じゃあ、もう部屋に戻るね」
「あぁ…。見送りはできないが、ミレイの無事を祈ってるよ」
「ありがとう、父様」
私は部屋を出て、自分の部屋へと戻った。