和解?
「それぐらい、権力をもっている相手がお前の命を狙っているということか...」
「そうなります、ただ今回はバーミリア国内にいたらあまりにも多くの人の命が危険にさらされることが分かったため、父とグレイシア国王が相談して私の保護目的でクライス王子の婚約者としてここで過ごすことになりました。そして、私の事情も今回の黒幕も...クライス王子達の身を護るために、話すことが出来ません」
「それは...」
「もう黒幕まで分かっていながら、手が出せない相手...ということですか」
ここまで話せば、全部を話さなくてもある程度は分かるだろう。
ことの重大さが分かったのか、クライス王子達は考え込みはじめた。
婚約に関してはここまでかな...。とりあえず、私も副業をそろそろ再開しないと依頼者が待ってるからな...。
「さて、婚約に関しての話はこれぐらいです。今後も、これ以上の情報は話せないかもしれません。しばらくの間、よろしくお願いします」
「分かった...」
「なぁなぁ、あんたさっき武器はどっからだしたんだ?」
ウィンさんがランに聞いている。さっきから悩んでいるように見えたのは、これを聞きたかったからかな?
「あぁ、それならミレイ様が開発した武器の収納道具があるんですよ」
そう言ってランは、左手に着けているブレスレットをウィンさんの前に出す。
あれは、私が開発した武器を収納できるブレスレットだ。もとは私の副業に関連するのだが、それが色々なところを転々とするため、ルイとランが大変そうだったからそれをなんとかしたくて開発したのだが、舞踏会やパーティーなどの武器の携帯が許されていない場所でも着けることができるようにしたのだ。
私の命が狙われすぎて...。
「君が、開発を?」
「まぁ、自分の命を助けるためでもありましたからね」
「へぇ...凄いな」
ウィンさんは、ランが腕から外したブレスレットを興味深々で色んな角度から見ていた。やっぱり、武器の携帯は大切なことだし、重要なのだろう。
「そんなに興味があるなら、一つ差し上げましょうか?」
「いいんですか!?結構貴重な物だと思うのですが?」
「え?でも、そんなに材料費もかかりませんし、というか材料も私が作り出せるので実際は無料ですし、そんなに苦労もなく作り出せますか、ら」
クライス王子達は、私の説明を聞いて驚きすぎて声がでないようだし、ルイとランを見ると呆れたような感じで、ルイは頭を抱えていてランは苦笑いを浮かべていた。
そんなに変なこと言ったかな?本当のことを言ってるだけなんだけどな。
「はぁー。ミレイ様、それで一度倒れたことをお忘れに?」
「あぁ、そんなこともあったね!でも、そのときはまだ私のコントロールが甘くてなっただけでしょ?それに、あの後は倒れたりしてないから大丈夫だよ」
「またミレイ様は」
「まぁまぁお姉ちゃん、ミレイ様がこんな感じなのは前からでしょう?心配はしてますけどね」
「分かってるよ、ありがとう二人とも」
私が二人に笑顔を向けると、二人も笑顔を返してくれた。
「そのお二人をとても、信頼しているのですね」
今まで全くしゃべってなかったヴァイスさんが突然しゃべった。これ、クライス王子の時も思ったな。やっぱり、長年一緒にいると似てくるのかな?
「そうですね、バーミリア国でなんでも話せるのはこの二人だけでしたしね。他は、黒幕の息がかかってる人がいるかもしれないと思って、全然安心できなかったんでね」
ヴァイスさんは、なるほどと言ってまた黙り込んだ。
「さて、そのブレスレットのことはまた後日改めてということで、今日は解散でいいですかね?」
「分かった。それじゃ、休んでるところすまなかった。ゆっくり休んでくれ」
そう言って、クライス王子達は部屋から出て行った。
「あぁ~疲れた~」
クライス王子達が出た途端、一気に脱力した私。ルイとランもなんとなく雰囲気が柔らかくなったみたいだ。
「それにしても、よかったんですか?あんなに話して...」
「そうですよ、どこまで話すのかヒヤヒヤしましたよ?」
「うん、なんとなくそんな雰囲気は感じたよ。でも、たぶん大丈夫だと思うよ?クライス王子も話せば分かってくれそうな感じだったし、側近の人達も婚約のことを無しにすればちゃんとした人達っぽいし」
実際、婚約の話をした後からあんまり敵意無くなったしね。
事情を軽く話した後に、なんか考え込んでたみたいだから明日あたりから独自に調べ始めるだろうし。
「とりあえず、明日からに備えて今日はもう休もう」
「分かりました、では準備してまいります」
さてさて、明日からは副業も再開しないといけないしゆっくりしよう。
表向きは、クライス王子の婚約者でも私の仕事自体は変わらないし明日からも忙しいなぁ。