わたがしになりたい
太陽がギラギラと照りつける猛暑の朝、俺は1人ぽつんとラノベの新刊を嗜んでいた。
小学生の頃にアニメグッズや漫画に全財産を費やし、今もなお、脱オタをする予定はない。
オタク高校生、片桐実にはこの教室に"推し がいる。
髪はまるでラノベのヒロインの1人のような艶やかな黒髪のロング、どこか幼さを感じる綺麗に整った顔、定期テストでは必ず上位に君臨している秀才であり、生徒会副会長という我ら人間のお手本の様な生徒だ。
一般生徒の俺とはかけ離れすぎている存在、上志緖結衣である。
「おはよう、片桐君。」
「おはよ、上志緖さん。」
推しに挨拶をされた時に平然と挨拶を返せるオタクがかつてこの世にいただろうか。
…まぁ俺は毎朝ドキドキな訳で。
授業中も隣からふわふわと俺の嗅覚を魅力する彼女の匂い。
あー、最高。もう鼻が幸せ。
もうお分かりだろう。俺の隣の席には、例の彼女がいる。
推しが隣の席とか俺の人生ピークきてる?
「なにジロジロ見ているの?やめてくれないかしら」
「べ、別に見てないが?」
ちょっと上志緒さん?不服そうな顔しないで?可愛すぎるだろっ!
と、そこで大半の学生の気分が落ちるであろう朝のチャイムが響く。
先生が出席確認諸々をしている隙に俺はラノベの続きのページを開いた。しばらくして、
「おーい、片桐。もう言わないからな」
担任の佐伯先生の言葉が耳に入る。
「あっ、はい」
クラスメイトがクスクスと笑っている。しまった、聞いてなかった。重要な連絡だったか。
「なぁ、上志緒さん、先生なんて言ってた?」
小声で聞いてみる。
彼女はまたもや窓の方を向いて不服そうに言い放った。
「知らないわよ、私も聞いてなかったもの」
…絶対嘘だろ!!!!
すると、前から白紙が回ってきた。
むむ、これに何か書くのか?
頭を抱えている俺を見て上志緒さんが呆れた顔をして耳打ちした。
「そこに好きな食べ物を書くそうよ。文化祭のためのアンケート」
「なるほど、助かったよ」
好きな食べ物ねぇ…文化祭だとしたら文化祭っぽいやつがいいよな。
結果、白紙にでかでかと『わたがし』と書いて出した。
まぁ作りやすいし、無難だろ。
佐伯先生が紙でペラペラと音をたてながら言った。
「片桐、お前は将来的に綿菓子になるのか?」
…そうですよねー。
その連絡とは、将来の進路を書くという名目で配られた紙だったのだ。
上志緒さんが俺に律儀に教えてくれるわけがない。
ほら今もクスクス笑ってやがる…可愛いけど。
彼女はいつもこうして、あらゆる手を使って俺をからかってくる。
俺の推し、上志緒結衣はやけにちょっかいかけてくる。
初めまして!みたらしもちといいます。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
初投稿でまだまだ未熟な点もあるかと思うのでアドバイス、感想等を欲しいです!
次回は上志緒さん視点になるのでニヤニヤがとまりません。