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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第4章 ケービヨン地方
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丸菱デパート ~ テイマースキルセミナーと分厚い『魔素学』の本 ~

【2月24日】

9時過ぎ、リリの運転する馬車に乗りケービヨンに向かう。

「なうほど、そぉいう事だったのね。」

昨日玄関で何があったのか聞いてきたララに事のあらましを話すと

納得しながら赤面するニャルマーを見ていた。


「リリがこん中であれだけ嬉しそうに話してたのに、

俺たちを嵌めるはずなんてねぇのにな。」

あの時何事もなくリリと話をしていたパワルドは呆れていた。

出会ったときは獣人族を毛嫌いしていたのに、

既に鬼人族でも、もはや気にしていない様子だ。


「リリがもう少し配慮すうぇば良かったのよ。

ナウ、こわららせて御免なさいね。」

顔は一見すると怖く、滑舌も悪いが、

優しい人なんだなと思った。


そして今日行く丸菱デパートの話になると、

例の歌をリリと同じように歌い始めた。


 ♪丸丸広くていいお店~ 丸っと何でも揃いあす~

 ま~るひし、ま~るひし、ま~るひし デパァ~トォ~ ♪


まだ2回しか聞いていないんだけど、確かに耳に残るなぁ。



昨日と同じ場所に馬車を預け、歩いて15分ほどで着くらしい。

ララとリリは大きめのサングラスを掛け、

身なりの良い服装をしていた。


鬼人族の角は髪を上手く結ってカモフラージュし、

吊り上がった目元はサングラスで隠れているので、

小さな貴婦人といった感じにしか見えない。


南のギルドから北にある丸菱デパートの更に先までクレアモールという

商店街になっていて、お祭りかと言う位の人だかりになっている。


冒険者向けの店だけでなく、一般市民向けの洋服店や雑貨店、

娯楽店、飲食店や酒場など多様な店が並んでいる。

そして、その中心となっている丸菱デパートの前に到着した。


10時の開店まで時間が有るのに、入口付近は今か今かと熱気が凄い。

「流石にアレには近づきにくいよね。」

人の多いクレアモールを歩いてげんなりしているパワルドとニャルマーは

イヤだと首を横に振りながら嫌そうな顔をしている。


「シロートが近づくと怪我すぅよ。

それより、そこに催し物のポスターが出てうから確認しあしょ。」

ララは入口から離れた所にあるショーウィンドウを指した。


「そ、そうだな。」

人混みから逃げるようにパワルドはポスターの方へ向かい、

俺たちも後に続いた。


ショーウィンドウの中には、物産展、骨董品展や絵画展、

ジュエリーフェア、お料理教室や各種セミナーなど、

多種多様のポスターが掲示されており、

その中から目的のテイマースキルセミナーのポスターを見つけた。


「開始まで時間が有るね。」

11時から別館4階のB-06という場所で開催されるみたいだ。

ちなみに終了予定時刻は18時だそうだ。

長いなぁ。。。


「8000ゼニーか、意外とするけどあの招待券大丈夫だろうな。」

「使えなかったらそん時考えよう。」

他のマナー講座や接客講座は複数回のプログラムに分かれているが

1回あたりは4000~5000ゼニーとなっていて、

参加しようとしているものは1回で終わるとはいえ比べると高い。


「開催時間まで時間があうし、少し中を回ってから行きあしょ。

会場までは私たちが案内すうわ。」

「え、良いのかい?」

「私たちはバーゲン品狙いで来ている訳ではナイので。」

「ゆっくい品定めすぅのが私たち流よ。

初めて来たんだっだら、場所も分からないだろうし、気にしないで。」

10時オープンと共に、入口付近の人だかりは吸い込まれるように

店の中へと消え、俺たちは落ち着いてから店内に入った。


1階には化粧品やアクセサリー、バッグなどが並んでおり、

時折例のララとリリが歌っていたあの曲が流れる。

「折角だし見てきたら。」

周囲を見ながら目をキラキラとさせていたニャルマーに声をかけた。


「え、いいの?」

「まだ時間はあるし、いいんじゃねぇのかな。」

俺の言葉に、ニャルマーは嬉しそうにしていて、

それを見たパワルドも賛同してくれた。


ニャルマーは先ほど通り過ぎた髪留めが並んでいるコーナーに戻り、

ララとリリと楽しそうに選び始めた。


俺とパワルドは他の人の邪魔にならない様にしながら

壁に掲げられているフロア案内を見ながら待った。


「こりゃ、全部見たいって言われたら1日じゃ終わんねぇな。」

「まぁ、そん時は3人だけで楽しんでもらおうよ。」

「ははは。確かにそうだな。」

「パワルドは、どっか寄ってみたいフロアはある?」

「5階の冒険者向けのフロアと~、3階のブックセンターかな。」

「へぇ、本屋とは意外だね。」

「ふん、意外とはちょっと失礼なんだな。

まぁ、あとは4階の紳士服と屋上のエンタメコーナーも気になるんだよな。」

「それって、あんまり人のこと言えないよね。」

「あはは、確かにそうだな。」


良いものが買えたと喜んでいる3人と合流し、

開始10分前に会場前までやってきて、ララたちと一旦分かれた。


「あのぇ。すいません。

このセミナーにこれって使えますか?」

「ええ、大丈夫ですよ。」


受付の男性にアイテムボックスから出した招待券を出して尋ねると、

笑顔で答えてくれた。


招待券で受付をすると、タイムスケジュールなどのリーフレット数枚と

3センチ程のA5サイズの『魔素学』と書かれた

上製本を参考書として渡された。

分厚くて立派な本なんだが、正直読む気は失せる。


会場に入ると、30席くらいある部屋で、まだ2人しか座っていない。

好きな場所に座れるので、真ん中より少し前に3人固まって座った。

「あの人たち冒険者っぽくないよね。」

後ろに座るニャルマーが小声で喋りかけてきた。

「どちらかというと研究者っぽいね。」

「なんかさ、この本も難しそうだし、間違ってないよね?」

「…」

「大丈夫じゃないか、ほらここにテイマースキルって書いてあるしな。」

確証を持てずに悩んでいると、通路を挟んで隣にいるパワルドが

リーフレットを見せてきた。


既にパワルドはリーフレットだけでなく、

魔素学の本にも目を通し始めていた。


俺とニャルマーも真似して本を捲ってみた。

字は小さく、絵は無い。

後ろのニャルマーが俺をツンツンする。

「アタシ無理かも。」

「俺も。」

「他にも冒険者、来るよね?」

「まだ時間あるし、大丈夫だって。」

俺たちと同じくらいの頭脳レベルの冒険者が

多数来ることを願いながら時は無情にも経過した。


定刻になると受付側のドアが閉められ、

5名の受講者でスタートした。


だだ、幸いなことは若い女性が登壇したことだ。

これなら少し難しくても頑張れる、

そういった甘い希望も直ぐに打ち砕かれるのだが。。。


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