いざケービヨンへ ~ 商人スイジオ、シュケイ兄弟の護衛を兼ねて ~
ヒールをかけてやると、ニコリとしてギルドカードを見せてきた。
「はぁ、大分無茶したみてぇだな。」
「お前のせいだよ、全く。」
軽くどつくとパワルドは舌をペロリと出し頭をかきながら
ニャルマーの刻印取得を喜んだ。
「いろいろお待たせしました。」
傷が消えたニャルマーは一礼した。
「気にする必要はねぇよな。」
「ああ、それより早くバトマに帰ろうか。」
半分は仄かに明るいが、半分は夜空になっていた。
バトマに戻りギルドで素材の売却を終え、
ミシャワーヌの姿が見えたので刻印を得た報告と
近々ケービヨンへ出発する旨を伝えた。
「寂しいですけど仕方ありません。
ギルド本部でも評価が鰻上りのあなた方なら
ケービヨンでも活躍は間違えないでしょう。
確かそろそろ出発する予定の商隊の護衛依頼があったかと。
もし、タイミングが合えば受けていかれたらいかがですか。」
お世話になったお礼を言って掲示板を確認しに行くと、
明後日出発予定の商人の護衛依頼があったので、
それを受注し明日は休養日とした。
【2月21日】
8時、集合場所に行くと2台の馬車と2人の青年が待っていた。
「ゴドロンパーティーの方だよね?
俺はスイジオ、でこっちが弟のシュケイだ。道中、よろしく。」
背は普通だがぽっちゃり体系でちょび髭を生やした兄さんが声をかけてきて、
彼より少し背が高く大きめの帽子を被った弟が軽く帽子を抑えながら会釈した。
こちらも自己紹介し、御者台に誰が座るか公正なじゃんけん大会が行われた。
そして、俺は荷台に行くことになった。( ノД`)
途中、ヌヒョーンやノッペラン、ワイルドドックなど低級モンスターが出たが、
先頭の御者台に座っていたパワルドが片付けてくれ、
夕方4時前にはルイマン川の手前の町、カリイニットへと到着した。
スイジオ達と宿屋へ向かう途中、横から声をかけられた。
「よぉ、久しぶり。」
声の主の顔を見て、俺たちは身構えてしまった。
「おいおい、どうしたんだよ急に。」
リーインフは困った表情で軽く両手を上げた。
「あ、すいません。ヘイズフィルドで偽物と会ったんで、つい。。。」
謝りつつ、直ぐに警戒を解いた。
「平方ネヨンの事だろ。聞いたぞ。
喜多川の件もあって、今やお前さんたちはギルド期待の注目株だからな。
だだなぁ、これからケービヨンだろ?」
奥歯に物が挟まったような物言いで聞いてきた。
「何か問題でも?」
「バトマでの実績はギルド本部のメンバーも大半は評価してるんだが、
今ケービヨンで指揮しているストーレンスはさ、、、」
歯切れが悪いが、残していった主要な敵を倒し実績を上げた事を
快く思っていないのだろう。
「なんか、あいつとは顔合わせたくないな。」
「そうは言ってもさぁ。。。」
パワルドの気持ちも理解できるが、護衛依頼でケービヨンまで行くし、
ポスリメン討伐に参加するとなれば確実に顔は合わせる。
参ったなぁ。と眉毛を掻いた。
「今ストーレンス達はアラフ川の近くのファンフィングまで進軍してるから、
ケービヨンで直ぐに会うということはないだろう。
そうだ。これをやるからケービヨンでゆっくりしてこいよ。」
ケービヨンの丸菱デパートの催し物招待券を3枚くれた。
だが、それは遠回しに戦線に参加するなということだろう。
「はぁ、有難く頂戴します。」
溜息を一つ吐いて礼を言いながら受け取ると、
「んじゃ、そういうことでよろしく。」
と目的を達成したかのように俺の肩を叩いて去っていった。
ストーレンスとトラブラ無いよう、配慮してくれたんだろう。
「まぁ、仕様がねぇよな。」
パワルドは妥協し、ニャルマーはタダ券を貰えて嬉しそうだった。
「なんか色々大変そうだね。」
とスイジオに同情された。
【2月22日】
今日も公正なるじゃんけん大会が行われ、パワルドが荷台へと、
そして俺は昨日とは異なる帽子を被ったシュケイの隣に座った。
町を出て少しすると橋が見えてきたが、5台ほど渋滞しており、
6台目、7台目とその後に並びんで馬車は止まった。
「時間かかるのかな?」
「ざっと30分ちょっとってとこだろ。
今はチェックが厳しくなったからね。」
帽子の位置を直しながら答えてくれた。
「帽子いい感じだよね。」
「これかい、日焼けすると直ぐに赤くなっちゃうんでね。
ま、今じゃ俺のアイデンティティとも言えるけど。」
口角を上げ嬉しそうにしていた。
「そういや、昨日の様子じゃケービヨンに着いてもポスリメン討伐に
参加できそうにみたいだけど、どうするんだい?」
「丸菱デパートの催し物招待券も貰ったし、まずは行ってみようかなと。
あとはダンジョンとかあればそこでレベリングだね。」
「だったらクヌキの祠ってのがあるから、そこに行ったらいい。
そこのボスを倒すと玄武の刻印てのが入るって話だ。
それがあれば大蛇の結界に入れるようになるらしい。」
「大蛇の結界?」
刻印はゲーム内にもあったけど、『大蛇の結界』というのは聞いた事ない。
「ケービヨンから南に行ったところに、シングワシって町があるんだけど、
その先に大規模な結界が施されていて大蛇のお宝が関係してるって噂だ。」
「シングワシかぁ。」
これも聞いた事の無いワードだ。
「お宝の話は兎も角、刻印を得て時間が有ったら行ってみたらどうだい。
結界の中に入れるっていうのは確かみたいだし。」
前にいるスイジオの馬車が少し進み、シュケイは間を詰め、
順番待ちしている間、ケービヨンについて説明してくれた。
西は今から渡るルイマン川で、
東はアラフ川までがケービヨン地方となっている。
ケービヨンはこの中で最も大きい都市でギルドが3つもあり、
中心地に近い場所にあるのがギルド本部支社を兼ねていて、
南にあるギルドは討伐系、西にあるのが市民向けの依頼が多いらしい。
そのため、素材の引き取りは南のギルドが窓口が多く、
冒険者が一番多くいる。
丸菱デパートはギルド本部支社の近くで町の中心的存在なので
行けば直ぐに場所は分かるらしい。
そして俺たちのチェックが終わって、ルイマン川に架かる橋の上を走り始め
ゴエアール地方からケービヨン地方へと入った。
【スイジオ】、【シュケイ】
西川越駅の近くにある水上【すいじょう】公園と園内の修景池【しゅうけい】より。
【ルイマン川】入間川
【アラフ川】荒川(荒い→roughラフ) 荒+ラフ→アララフ →アラフ川
【ファンフィング】指扇(指finger+扇fan)
【シングワシ】新河岸
【ケービヨン】川越(川Kawa-越beyond)K-beyon(d) dはリダクション
川越にはJRと東武線の川越駅、東武線の川越市駅、西武線の本川越駅と
3つの駅が徒歩圏内にあります。
第3章 ゴエアール地方編は終了です。
次回よりケービヨン地方編になります。
引き続き、ご愛読よろしくお願いします。(^^♪