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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第3章 ゴエアール地方
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ヘイズフィルド11 ~ 再び砦へ、ヒンヤリとした空気の流れと冷たい視線 ~

【2月14日】

完全にポスリメンを殲滅したわけではないが、

昨日の夜バトマのギルドで祝勝会が行われ、

サッチャンとツルボウは今朝の便でイーグルビーへ帰った。


比留間 真也と喜多川 美海を倒してから俺たち3人はオイセ塚へ通い、

今日もヘイズフィルドの砦を経由するためその正面まで来た。


「あ、そういえばアレはどうなってるんだろうな?」

砦の上の方を見ながら、パワルドは突然立ち止まった。


「アレって何よ?」

俺も頭の中が?(ハテナ)だったが、

ニャルマーがすぐに聞き返してくれた。


「どこに繋がっているか分からない壊された転移陣が

カサーナにはあったけど、バトマにもあるんだよな?」

「シンメイさんもそんな事言ってたけど、

あの時はツルボウが転移陣に乗っかっちゃったから5階はあまり見てないね。」

「折角だし、もう1回行ってみようよ。」

カサーナで壊された転移陣を見ていないニャルマーは興味深げだった。


「今度は引き返すこともできるし、行ってみよっか。」

2人とも行きたそうだし、俺も確認してみたかったので、

再び5階へ行くことにした。


「ここにはもうポスリメンは残ってないね。」

3階を進む俺たちの足音だけが響いている。


「ギルド本部の人達は4階の殲滅にあたってるって言ってたな。」

「ウォウヴェンハットも残ってくれてるし、直に終わるだろうね。」

「祝勝会でアブレラは俺たちが5階に行って

真也たちを倒したことを相当羨ましがって絡んできたもんな。」

「それで、『アタシらが4階のポスリメンは全部倒す!』って

意気込んでたね。まぁ、バトマの人たちは助かるし、良い事だよ。」

先日行われた祝勝会の話をしながら、例の袋小路に着いた。


「それじゃ、いくよ。」

アイテムボックスからトゲトゲしたがガラクタを取り出しはめ込むと、

ガガガガと奥の壁がスライドし隠し通路が現れ、

ポロリとガラクタが床に落ちた。

「やっぱり、ぞんざいだよね。」

重要なアイテムなのに、何故か雑に扱われているガラクタを拾って

アイテムボックスに入れて隠し通路を進んだ。


「いよいよ、ここを降りると例の階段だな。」

以前通った時の緊張感を思い出し、パワルドはソワソワしていた。


「昇ってはイケナイ階段ってやつだよね。」

パワルドとニャルマーは不思議なものを見るかのように俺を凝視していた。

「ほら、降りてからじゃないとたどり着けないよね。」

振り返り、降りてきた階段を指した。


「ナルホドナ。」

「ン~、タシカニ。」

二人の視線は冷たく、ひんやりとした空気が流れた気がした。


5階へたどり着き、手前にある部屋を簡単に確認したが

変わった所はなかった。そして最後に奥の扉を開けた。


「特に何も無いね。」

「ポスリメンが復活してたらどうしようと思ってたから、良かったよ。」

俺はディテクトに反応が無いことを確認してから扉を開けていたので

気には止めてなかったが、ニャルマーは警戒していたようだ。


「んで、この扉は、じゃなくて、こっちだな。」

次の部屋に行く扉をわざと軽く押して開けようとしてから、

パワルドは扉を横にスライドさせた。


真也と美海と戦った部屋は当時のままで、静けさだけが漂っていた。

「なんか不気味よね。」

静寂の中に響くニャルマーの声に頷き、部屋の中を隈なく調べた。


「特に変わったところはねぇな。」

「やっぱ怪しいのはこの先よね。」

「そうだね。この間は、ツルボウが転送陣に乗っちゃって

あまり調べ切れてないもんね。行ってみよう。」

転移陣のある部屋に入り、吸い寄せられるように

中央で一段高くなっている転移陣の前に立った。


「もしかして、この部屋・・・」

ニャルマーは部屋の入口まで戻り、

ガラス球を床に置いて中央へ向かってチョンと突っついた。

転がり始めたガラス球は、速度を落とすことなく俺たちの所まで来た。


「この部屋、中央に向かって少しだけ低くなってる。」

俺とパワルドは言われても水平にしか感じられなかったが、

獣人であるニャルマーはこの傾斜に違和感を感じ、

ガラス球がその事実を物語っていた。


「錯覚だな。」

パワルドは、ぼそりと呟くと膝をついて床に目をやった。


「多分、この床の模様のせいで水平に見えるんだろうな。」

「加えてこの照明のせいで、どうしても無意識に中央へ

吸い寄せられちゃうんだね。」

壁側は少し暗く、中央が最も明るくなっている。


「ということは、アタシ達にここから1階へ帰ってほしいってことよね?」

「であれば逆に何かある可能性が高いね。」

「よし、徹底的に調べてみるかな。」

心理的なからくりが分かった俺たちは、逆に徹底的に調査することにした。


この部屋に入る前にディテクトで周囲に敵がいないことを把握できていたので

一旦解除していたが、念のためにもう一度部屋の奥にある

本棚の前でディテクトを使った。


「おやっ?」

ギリギリ届く範囲に1つ靄がかかった様な形で反応があった。


「今まで、こんなことなかったけどどういう事だろ?

いずれにしても、奥に何かありそうだ。」

靄がかかっている理由は考えてみたもののさっぱり分からなかったが、

奥に反応がある以上、何らかの方法があるのではと

考え周囲をもう一度調べなおした。


目の前にある2メーター程の本棚には図鑑のように重たくて

分厚いケース本がびっしりと入っている。

1冊適当に取り出して開いてみたが、内容はさっぱりだ。


中身が入っていない空ケースがあるかもしれないと思って

数冊手に取ってみたが問題なかった。


左隣の本棚は、上の方はハードカバーの本が、

下の方は並製本がシリーズごとに整理されて収まっている。

ラパーみたいな真也なのか、眠そうだった美海なのか、

きっと几帳面だったのだろう。


その隣には上半分がガラス扉の茶箪笥があり、

棚上には入りきらなかった皿やカップが積み重ねて置かれている。

下半分は中板が外されて下に重ねて置かれており、空っぽだった。


さらにその隣にはキャビネットが2つ並んでおり、

本棚からそこまでが高さが2メータ程で揃っている。

キャビネットは2つとも施錠されており、押しても引いても開かない。


他には腰の高さほどの棚があるだけだ。

俺は「ん~」と唸り、壁や棚などをノックするかのように

右手でコツコツと叩きながら部屋を1周した。


2人もこの5つ並んだ本棚からキャビネットまでが怪しいと感じ、

パワルドはキャビネットの鍵穴を指で押さえて強引に回そうとしたり、

ニャルマーは本棚から1段ずつ本を全て出して確認していた。


俺は1段ずつ本を出しているニャルマーの所へ行き、

取り出した本を床に積み上げ、空っぽになったら元に戻す手伝いをした。


「お、これって何だろな?」

パワルドはその怪しい箇所を見ながら、俺とニャルマーを手招きした。

なるほど、俺が部屋を1周しながら感じたモヤっと感はこれだったのか。


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