ヘイズフィルド9 ~ 振暈激波(シンウンゲキハ) ~
真也は大きく振りかぶり、再度斧で攻撃してきたが、
動きが大きいので余裕で躱しながら他の状況をチラリと確認し、
ウォーク・アールズもパワルド達も戦況は有利だ。
となれば、こいつらを引き付けて時間を稼ぐってのもありか。
3歩バックステップで離れ、スピードアップをかける。
真也は間合いを詰め左から右へ力強くフルスイングした。
俺がボールで、彼が持っているのがバットでクリーンヒットしていれば、
当たった瞬間に分かるフェンス越えの特大アーチだっただろう。
だが、俺は躱したので単なる空振りだ。
少し後ろへ下がると、背後からウインドカッターが飛んできて
また喰らってしまった。
美海がいないと思ったら、背後に回っていたか。
正面で高く斧を持ち上げた真也から視線を逸らすわけにはいかないが、
振り下ろした攻撃を横へ躱しながらポスリメンを含めた
敵の動きを抑えるためディテクトを使った。
横に目をやった一瞬だけ美海の姿を確認できたが、
直ぐに俺の背後へ回り込まれてしまった。
真也は駆け寄りながら左からスイングして切りつけてきたが、
右後ろへバックステップして躱した。
そして、ディテクトで追っていた美海が止まったのを把握した。
「リフレクト!」
真也の方を向きながら美海のいる方向に魔法を数秒間跳ね返すバリアを張ると、
予想は的中し、美海は自分の放ったウインドカッターでダメージを負った。
「ッチ、今のはなんなんだYo!」
驚きつつ苦虫を嚙み潰したような顔で真也は攻撃の手を止めた。
「アイスボム!」
斜め横に距離を取りながら魔法を唱え、
真也は左腕に装備している盾で防御したものの
それなりにダメージが入ったのか、顔が強張ってきた。
ディテクトで捉えていた美海は俺の真後で止まったので、
振り返り「リフレクト」を使いウインドカッターを跳ね返したが、
既にそこにはいなかった。
「もう読まれてるね。」
当たれば良いし、逆に跳ね返されれば初回に跳ね返したのが
偶然ではなく場所を抑えられていると判断できる。
敢えて美海は先ほどと同様に放ち、返されるのも想定の範囲内だったのだろう。
となると命中率を犠牲にしてでも走りながら放ってくるか。
そうであれば死角からの攻撃はもはやリアクション取れないなぁ。。。
なるべく2人が視界に入るよう位置取りを意識しながら、
斧を大きく振り上げられた真也の攻撃を躱す。
振り下ろされた斧は途中で減速し、
真也は駆け寄りながら体を捻り水平にスイングしてきた。
「ヤバッ!」
色んな事を考えていたせいで、反応が遅れ確実に捉えられてしまった。
後ろへ逃げるのを諦め、左腕に装備している盾で
真也のフルスイングを受け止めた。
『ゴーーーン!!』
めっちゃ痺れる。。。((+_+))
ダメージはほとんど無かったが、衝撃は凄かった。
だが、その衝撃は攻撃した真也も同じだ。
金属バットで電柱を思い切り叩いたようなものか。
いや、斧の方が重心が先にあるから遠心力はもっと凄いか。
真也は斧を握ってられず手を広げ、痺れて動けなくなっている。
背中に美海が放ったウインドカッターが当たったが、
走りながらで集中していない分、先ほどより威力は落ちていた。
とはいえ、約200のダメージはそう何度も受けたくない。
左上半身はまだ痺れているが、真也の背後へと回り両方を視界に入れ、
真也の背後にアイスボムをぶち込んだ。
すると、美海が俺にウインドカッターを打ち込んできたので
リフレクトで跳ね返す。
当然跳ね返されることは予測していたのか上手く避け、
自分へ注意を引くかのように続けてウインドカッターを打ってくる。
1発を弾き、ふと角度を変えてみたら面白くねと思い、
真也の方に跳ね返るよう鏡の様に角度を付けてみた。
見事成功!!
手の痺れを取るように左右に手を振りながら
斧を拾いかけていた真也の太ももに当たり、
美海は地団太を踏み、真也は斧を片手に鬼の形相で睨みつけてきた。
真也が助走をつけて斧を\、/、と斜めに切りつけてきたので、
スピードアップをかけて更に速度を上げて回避する。
真也の斜め後ろから美海がウインドカッターを放とうとしているので、
真也の陰に隠れるように動こうとするが、斧の攻撃が襲ってくるので難しい。
だが、ウインドカッターが放たれても俺に到達することはなかった。
ツルボウが間に入り、大盾で受けてくれた。
既にポスリメンの茶と赤は2体ずつまで倒してくれている。
そして俺は、少し後ろに下がってアイスボムを打つ素振りをして
真也の注意を引き付けた。
パワルドとサッチャンが彼の背後から攻撃を入れ、
注意が逸れたタイミングでアイスボムを顔面にぶち込む。
「てめぇら、小賢しいんだYo!」
左手側から攻撃したサッチャン目掛けて走りながら斧を振り下ろしたが、
右手側から攻撃したパワルドが背中に蹴りを入れた事でタイミングがずれ、
サッチャンは攻撃を躱しながら真也の懐に入り斬撃を与えた。
更にアイスボムでダメージを与えると、
真也は振り向き様に斧を水平にスイングし、
追撃を加えようとしていたパワルドにヒットした。
パワルドは身の危険を感じ、盾で素早くガードしたものの、
3メータ程飛ばされ着地した。
衝撃を吸収するために飛ばされたようだが、
想定以上の衝撃にヒヤリとしていた。
パワルドにヒールと念のためにディフェンスアップも掛け、
サッチャンは真也と逆に回り、死角から斬撃を与えた。
「調子乗んなYo!」
真也は斧をブン回したが、サッチャンはヒット&アウェイで既に離れていた。
左にサッチャン、右にパワルド、正面に俺。
5メータずつ離れて、4人で牽制している。
そして、視界に入るツルボウは既に10発以上の受けており、
遂に堪えきれず後ろへ倒れてしまった。
「ツルボウを頼む。」
サッチャンは俺に視線を送ると、
玉砕覚悟で注意を引き付け真也に斬撃を放った。
真也は2本の剣を弾く様に下から上へと斧を振り上げ、
その衝撃を利用してサッチャンは後方へ一旦引いた。
俺は死角になるパワルドの方へ回り、
フラフラになりながら立ち上がるツルボウに近づきながらヒールをかける。
だが、回復したツルボウの盾には容赦なくウインドカッターが当たり続ける。
もう一度ヒールをかけ、ディフェンスアップもかけてあげてから、
大盾の後ろから美海にアイスボムを使った。
ダメージを受け驚きつつも、ウインドカッターで反撃してきた。
リフレクトで弾き返すが変則的に走る美海に躱され、
続け様にウインドカッターを打ってきた。
俺も躱しながら走り、アイスボムで反撃に出る。
魔法の打ち合いは、長くは続かなかった。
美海はMPが枯渇し、時折MP回復薬を飲んでいる。
その間も俺は攻撃し続け、アイスボムから範囲魔法のフローズンブリザに切替、
確実にダメージを与え続けている。
「すまない、ネヨン。アタシはここまでのようだ。」
美海はネヨンという人物に謝りながら、魔素へと還った。
ウォーク・アールズがポスリメンを倒し、
ツルボウとニャルマーもパワルド達に加勢して
真也は相当追い詰められた状態になった。
「振暈激波!」
最終手段として真也は斧に魔力を込めて回転し、
「フハハハハ、お前ら直ぐに立ち上がれないだろうYo!
中心にいる俺には効かねぇけど、
流石に目が回るからやりたくは無かったんだけどYo!
もうお前ら終わりなんだYo!Yeah!」
回転を止めた真也は目が回ってフラフラしていて斧を杖代わりにし
やっと立っているが上機嫌で、
パワルド達は地面に這いつくばって立ち上がろうとしても直ぐに転がっている。
そして、ゆっくりと真也は歩き始め、パワルドの胴体を
真っ二つにしようと高く斧を振り上げた。