ヘイズフィルド8 ~ カイダン話:昇ってはイケナイ階段・・・ ~
階段を降りると20メータ程先に、まるで3階の通路を避けたかのように
今度は昇り階段があった。
だがその階段は1階分ではなく、3階分の高さがあった。
「ここは2階だぞ。って事は3,4、5。」
サッチャンは凡そフロアにあたる位置を指しながら数え、
振り返って俺たちを青ざめた顔で見た。
「まさかこんな所にあるとはな。」
「降りてから辿り着く階段だったとは。」
パワルドは5階に行く階段を見ており、
俺は振り返って降りてきた階段を見た。
「ねぇ、どうする?って言っても戻る事も出来なさそうだけど。」
ここまで一本道で分岐はなく、皆ニャルマーと考えていることは同じだ。
「もうこうなったら行くしかねぇッス。」
「そうするしかないっしょ。」
「ウチラ全力でやるんで、行きましょう。」
フゴマンとクマイアルの言葉を受け、アユムはウォーク・アールズを
代表して決意を口にした。
「よし、アタシとツルボウで先に行くぞ。」
サッチャンの言葉にツルボウは大きく頷いた。
「じゃあ、ウォーク・アールズは俺たちの後に追いてきてくれ。」
「「はい。」」
5人は意を決したように大きく返事した。
階段を昇り始め、オンラインゲームの時にこんな事は無かったなぁと
考えながら進んだ。
バトマでのポスリメン討伐。
ヘイズフィルドの平原にいるポスリメンを倒し、
殲滅するとケービヨンに行けるようになる。
リーインフが冒険者を連れて行ったように。
砦の中、ましてや5階にいるボスに立ち向かうといったストーリは無かった。
ハイルートの時もそうだけど、何か厄介な方向に行ってるんだよなぁ。
もはやここまで来てしまった以上は仕方ないんだけど。。。
5階に着くと両側に10メータ程の間隔で5つつの扉があり、
突き当りには他と比較すると立派な扉があった。
パワルドは1つ目の扉を押したり引いたりした。
「鍵がかかってる様だな。」
「こっちもだぞ。」
反対側の扉をサッチャンは雑に押したり引いたりしていた。
壊さないでよと思いつつ、
「奥へ行ってみようか。」
と、前に進んだ。
次の扉を押すと、ギギギと低い音を立てて開いた。
中は奥行きが10メータ程あり、両側に鎧のオブジェが複数並んでいた。
まっすぐ前へと進み中央に来た時、ツルボウが俺の肩を掴んだ。
首を横に振っているので、それ以上行くと危険という事だろう。
「不用意に近づかない方がいいぞ。」
オブジェに近づこうとしていたホーヘイとクマイアルに
サッチャンはいつもより強い口調で警告した。
2人ともそっとオブジェから離れ、
俺たちはツルボウの危機管理力を信じ部屋を出た。
フゴマンは反対側の扉を開けようとした。
「こっちは駄目ッス。」
彼は先ほどの部屋に入ってから一歩も動かなかったので、
最も早く部屋を出ていた。
多分、あまり動きたく無いんだろうね。。。
更に奥へと進みニャルマーが次の扉を押したが開かず、
反対側はサッチャンが押すと開いた。
中にはポスリメンの装備品が整然と積まれており、
アユムとノーニフが品定めをしていた。
「金に困ってるなら止めないが、変に疑われると思うぞ。」
「ウチラはそんな困ってないんで。。。」
「そもそも、買い取ってくれるかも微妙ですしね。。。」
アユムとノーニフはサッチャンの言葉を聞いて、そっと元に戻した。
「ポスリメンになりたい人がいたら買ってくれるかもな。」
冗談を言いながらパワルドは部屋を出た。
4つ目の扉は両サイド共開かず、5つ目の扉の片方は開かなかったが、
もう片方はただの空き部屋だった。
そして、最も怪しい突き当りの扉の前に到着した。
観音開きの扉の右にパワルド、左にサッチャンが手をかけ
確認するかのように振り返り頷くと2人で扉をゆっくりと押し開けた。
中は10メータ四方で奥には別の扉があり、
その前にポスリメン赤が5体扉を守るように立っていた。
「フローズンブリザ!」
俺の氷結系範囲魔法を皮切りに、右側からパワルドが、
左側からサッチャンとツルボウが切り込んでいき、
パワルドの横をニャルマー、残りをウォーク・アールズが対応した。
「両サイドは完全にお任せで大丈夫そうだね。」
ノーニフはウォーク・アールズの4人にヒールをかけながら
ディフェンスアップを使い、俺はパワーアップをかけてあげ、
隙をついてアイスボムでダメージを与えている。
彼らもディフェンスアップがかかっていれば
赤でも2人で対処可能なレベルになっている。
もし彼らがいないで5人でこの場にいるのであれば、
この5体に苦戦していただろう。
ポスリメンを倒し、サッチャンが奥へ行く観音開きの扉に手をやった。
「この扉、押しても引いても開かないぞ。」
「鍵穴があるし、鍵が無いと開かねぇって事だろうな。」
パワルドは取っ手の下にある細長い穴を覗き込んだ。
「ウチラこっち側探します。」
アユム達はウォーク・アールズは右側に進んで鍵を探し、
俺たちは左側を探した。
だが、鍵は疎か鍵穴に刺さりそうな細長い物も無く、
こういうのってポスリメンを倒したらげっとできるってのが
お決まりじゃないのかよと思いながら扉に手を当てた。
「押して駄目なら引いてみな。って、駄目か、やっぱし。」
パワルド達を信頼していないわけではなく、やけくそだ。
「後は上か。」
扉の窪みに手をやり、シャッターを開けるように力を入れた。
「やっぱり駄目か。んじゃ、横は。」
ズズと重い音を上げ、数cm程動き、隙間が空き、
振り返るとみんな動きを止め、唖然としていた。
「こっち側は任せるんだな。」
パワルドと2人で隙間に指を突込み扉を横へスライドして開けた。
「騒々しいと思ったら、やっぱり来たYo!」
「はぁ~(´Д`)、、、想定より早いわね。」
耳にピアスを幾つも開けたコーンロウの男がラップ口調で現れ、
その後ろから欠伸をしながら眠そうな女が出てきた。
「おい美海。しっかり起きてくれYo!」
「真也、あなたこそ、いい加減その喋り方止めてくれないかしら。
はぁ(´Д`)、まぁいいわ。取り合えず、ポスリメンを呼びましょう。」
指をパチンと慣らし、ポスリメン茶5体とポスリメン赤5体を召喚した。
「フローズンブリザ!」
召喚されたポスリメンに魔法をぶち込み、
ウォーク・アールズには茶を相手するように指示を出す。
ポスリメン赤には既にパワルド達が戦闘を開始し、
俺はニャルマー、サッチャン、パワルドと順にパワーアップをかけていった。
「うわ、危な。」
既の所で躱したが、先ほどまでいた場所に真也の振り下ろした
斧が叩きつけられていた。
「俺様の攻撃を躱すとはやるじゃんYo!」
悔しい表情の真也の後ろから美海のウインドカッターが飛んできて、
まともに喰らってしまった。
ステータスを確認すると250位減っている。
あれ?もしかして俺、二人にロックオンされた?
サブタイトルに騙された?
いえいえ、一旦降りてからしか辿り着けない階段ですよ。
だから昇ってから辿り着くことはできないじゃないですか。
ということで、昇っては行けない階段!!
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