ヘイズフィルド4 ~ ウォーク・アールズ(Walk R's)とポスリメン赤 ~
「今悲鳴が聞こえた気がするんだけど。」
ニャルマーは来た通路を振り返り、「こっちからだ」と続けた。
「案内してくれ。」
ニャルマーは頷くと、来た道を戻り始め途中で右に曲がった。
時折現れるポスリメンを早急に倒すため、パワルド達にパワーアップをかけ、
俺もアイスボムを唱えて参戦した。
自分の耳にも叩きつける金属音が聞こえるようになり、
開いている扉の中に入った。
そこで目に入ったのは3体の警棒を持ったポスリメン赤と
戦っているニイタツより少し年上の男3人と、
入口付近で気を失っている女に回復薬を必死で飲ませている女だった。
「入るけどいいかい。」
サッチャンは助太刀していいかトラブルにならない様確認した。
「サッチャン先輩・・・」
紺色のローブを着た三つ編みの女の子は、泣きそうな顔をしながら頷いた。
既に回答を待たずして、ツルボウは今にも倒れそうな男の前に立ち盾を構え、
パワルドとニャルマーは攻撃を開始していた。
後で余計なお世話だったとか言われない様、確認を執ってからが好ましいが、
状況なだけにやむを得ないだろう。
サッチャンも加勢しに行き、俺はに尋ねた。
「ヒールを掛けようか?」
「すいません、お願いします。」
銀色の鎧を身に着けた金髪のショートヘアの女にヒールを掛けると
傷が消え、朦朧とだが意識を取り戻した。
「後は君に任せるね。」
と言い残してポスリメンの所へ向かった。
パワルド達3人にはここに来る途中にパワーアップを掛けていたが、
掛け直して効果を延長する。
そして、ツルボウにはディフェンスアップを掛けた。
パワルドに「後は俺に任せな。」と、
サッチャンからは「邪魔になるから下がってろ。」
と言われて離れた所にいるボロボロの3人にもヒールを掛けた。
3人ともぺこりと頭を軽く下げると、パワルド達の戦いに見入っていた。
程なくしてパワルドがスキル氷塵纏爪で1体目を撃破してニャルマーに加勢し、
サッチャンとツルボウの連携に俺が入る隙はなく、
圧倒有利に進んでいっている2つの戦いを眺めていた。
ポスリメン赤2体は、時間を要すことなく魔素に還った。
「サッチャン先輩、ありがとうございます。」
「久しぶり。偶然近くにいて良かったぜ。」
先ほどまで入口付近にいた2人も加わり5人揃って礼を述べた。
「知り合いなの?」
戦闘を終えて戻ってきたニャルマーがサッチャンに聞いた。
「バトマで何度か話した事があって、えっとウォーク・アールズだったっけ。
気付いたのはニャルマーだし、パワルドやナオッチも協力してくれたんだ。
礼を言うならここにいる彼らにもだぞ。」
「ウチラはウォーク・アールズっていうパーティーで
リーダをしているアユムです。助太刀ありがとうございました。
まさかここで赤に遭遇するとは。」
先ほど気を失っていた女がこのパーティのリーダだった。
「俺たちが戻る途中だったのは不幸中の幸いだったな。
っていうか、もうそろ帰り始めないと暗くなっちまうけどな。」
「あ、そうだね。良かったら一緒に帰る?」
それぞれの自己紹介をしながらバトマへ戻る事にした。
【アユム】(♀ 剣術)
・他のメンバーより2つ年上でリーダーをしている
・金髪のショートヘア
【ホーヘイ】(♂ 槍術)
・育ちの良さそうな美男子(童顔)
【フゴマン】(♂ 体術)
・背が小さくぽっちゃり気味
・力はパーティの中で一番
【クマイアル】(♂ 斧術)
・見た目はチャラく話し方が軽い
【ノーニフ】(♀ 回復)
・紺色のローブを着て髪は三つ編み
・アユムの妹
「あれ、どこへ行かれるんですか?」
階段を降り左へ曲がるとアユムが不思議そうに俺たちを見ていた。
「ここから出るのはこっちじゃないのかい?」
「そっちから行ったらめっちゃ遠回りッス。こっちからが良いッス。」
フゴマンはそんな歩きたくないよというような嫌そうな雰囲気を
醸し出して右前方の部屋を指した。
「あ、そうなの?」
俺たちはウォーク・アールズに付いていった。
2つ目の部屋に入ると反対側の間仕切りの裏にドアがあり、
そこから別の通路に出て、少し歩くと左手に出口があった。
「早かったね。」
「なるほど、これだから1階で他の人に会わない訳だな。」
今朝の入口とは逆サイドに出て呆れつつパワルドと顔を見合わせた。
ギルドに戻ると、シャローマが変わったことが無かったか聞いてきたので、
ウォーク・アールズと共に先ほどの件を説明した。
「う~ん、今まで出現しなかったといっても、
先ほどの話を踏まえると、また出る可能性は否定できませんね。
ウォーク・アールズは単独で2階へ行くのはお控えいただいたくべきかと。」
シャローマは若手5人の身を案じ、リーダーのアユムを見た。
「何か遭ってからでは遅いというのは理解できるけど、オイセ塚の祠にも
行けないし、ウチラの活動範囲は砦の1階だけになっちゃう。。。」
「1階はアタシらが昨日片っ端から倒してるし、ほどんと残ってないと思うぞ。」
サッチャンから伝えられた事実にウォーク・アールズの4人はどんよりと下を向き、
一人平然としていたノーニフが何かを思いつきシャローマに確認した。
「『単独で』なければ良いって事ですか?」
「実力のある方と一緒ならリスクは下がるでしょうからね。」
何かを期待する目でシャローマは俺たちを見た。
「アタシは別に一緒でも構わないぞ。」
「俺たちよりこの辺の地理に詳しいだろうし、良いと思うけどな。」
サッチャンに続けてパワルドも賛同し、
ニャルマーとツルボウも問題はなさそうに頷いたので、
「俺たちは問題ないけど、どうする?」
とウォーク・アールズにボールを投げた。
アユムはメンバーの顔を確認し、合同パーティーを結成することになった。
【1月14日】
今日から総勢10人でヘイズフィルドに行くことになった。
昨日まで正面を右に曲がっていたが、今日は左に進んで砦の中に入り、
直ぐに2階へ到着した。
「それじゃ、まずは5人でやってもらおうか。」
「「はい。」」
砦内で一緒に活動するにあたり、ウォーク・アールズの
実力を知ることから始めた。
と言ってもツルボウがポスリメンがいる所まで先導するので
奇襲を受けることはない。
ここでは、ポスリメン茶が3体以下がほとんどで、
稀に4体同時に出てくるくらいだ。
「ノーニフは良い働きをしているな。」
「ああ、彼女がいるのといないのではこのパーティの実力は大きく違うぞ。」
後衛で常に周囲を警戒し4人にバフやヒールを掛け、
的確な指示を出しているノーニフに対する
パワルドとサッチャンの評価は高かった。
2体出た時は2,2であたり、3体の時には2,1,1であたって、
1人で対処している2人にノーニフがディフェンスアップをかけ守りを固めつつ
1体を早く倒して2,2で対処している。
そしてツルボウは勝手にウォーク・アールズに混じって
盾役として攻撃を受けている。
「いい連携だと思うけど、時間がかかってるね。」
「彼らにとってはこれが限度だろうな。」
「このフロアだったら茶しか出ないし、二手に分かれるのも有じゃない?」
「アタシもニャルマーの案は良いと思うぞ。
アタシとツルボウ、ニャルマーの3人なら、
もし赤が3体出てきても問題ないだろう。」
以前3人で査察ポスリメン3体倒しているのでサッチャン的には
十分という事だろう。
「そうすると、俺とパワルドでか。」
「ナオッチが居れば問題ないでしょ。」
「俺も不安は無いけどな。」
なぜか俺を高く評価しているニャルマーは軽く言ってのけ、
パワルドも余裕といった感じだ。
「じゃあ、あの5人はどうする?」
今も戦闘中のウォーク・アールズを見た。
【歩】将棋において一つ前にしか進めない駒
アユム:歩
ホーヘイ:歩兵
フゴマン:歩駒
クマイアル:九枚ある(3段目に)
ノーニフ:No!二歩(同じ列に歩は1枚しか置けません)