エンミイジの戦い ~ 熾烈を極めた戦闘 パワルドVS王玉珠 ~
「おいおい、それはヤバいだろ。(~o~;)」
金的攻撃をギリギリで躱したパワルドは冷汗をかいた。
「アタシには無いから、知らないなるよ。
それよりほら、あのお兄さんポスリメンに囲まれて死ぬなるよ。」
視線を外すよう巧みに誘導し先ほどと同じようにまた蹴り上げてきたが、
見切ったパワルドは上手く避けて蹴り返した。
玉珠は横にくるりと回りダメージを受け流すとパワルドの腹目掛けて蹴り返した。
パワルドは金的攻撃を察知して足を閉じたが、腹へ真面に蹴りを喰らった。
「ッチ、やりにくいな。」
パワルドは2,3歩後ろに下がったが、
モブスタと戦った時であれば蹴り飛ばされて大ダメージを負っていただろうが、
少しのダメージで済んでいることにニヤリとした。
「そんなに潰されたいなるか?変態なるよ。」
「お前には言われたく無いな。この変態女が。」
『バリッ!バリバリ!』
後方から何かが凍る音が聞こえた玉珠は、振り返りポスリメンの方を見た。
「な、何なのあれ。無茶苦茶なるよ。」
「さすが兄貴だな。」
パワルドはバックステップで更に距離を取り、スピードアップを使った。
ディフェンスアップも使えるようになったけど、
MPの消費とさっきのダメージを考えると無くても十分って所だな。
「べ、別に大丈夫なるよ。あんな大技そう何度も使えないなるから。
もうそっちがその気なら、こっちも本気出すなるよ。」
おどけながらも玉珠はスピードアップを使った。
「ッチ。そう簡単には終わりそうにねぇな。」
パワルドは間合いを詰め、顔面目掛けてダメージが50%アップする
スキル強殴を使った。
玉珠は両手でガードし体勢を少し崩しながら、金的攻撃をしてきた。
パワルドは予測していて右膝を曲げてガードし、左足で蹴り返した。
玉珠は地面に倒れそうになったが、低い体勢から威力が半減するが
速度が倍になるスキル乱殴を使い
パワルドの懐に入り何発ものパンチを叩きこんだ。
1発のダメージは少ないが複数回喰らったことでそれなりにダメージを負ったが、
がら空きとなっている玉珠の背中に組んだ両手を叩きおろし、
膝蹴、回転蹴を使った。
玉珠は蹴り飛ばされ地面に叩きつけられたが転がりながら起き上がり、
ヒールを使った。
「ジリ貧だな。」
パワルドもヒールは使えるが、回復スキルが低いため雀の涙程しか回復しない。
一気に片付けようとスピードアップを使い更に速度を上げて、玉珠に蹴りかかる。
起き上がった玉珠は後退しながら躱し、パワルドは追撃し顔面を殴りかかった。
クリーンヒットとまでは行かなかったが顔に傷を負わせ、
更にアッパーカットで顎を狙った。
だが、パワルドの爪が玉珠のチャイナドレスに引っ掛かり、胸元が破れた。
「キャーッ!」
玉珠は胸元を両手で抑えながら、喧嘩キックで距離を取った。
パワルドも2、3歩バックステップで距離を取った。
「やっぱり変態なるね。」
「いや、狙ってやった訳じゃないからな。」
玉珠はステータスを開き、慌てて装備を変えた。
隙だらけだったので、攻撃することも容易だったが
男としてそれは駄目な気がして待ってあげた。
「まぁ紳士的なところもあるから、今回の事は無しにするなるね。
それより、あいつあの魔法、何回使うなるね。反則なるね。」
赤から青いチャイナドレスになった玉珠は、
後方で繰り広げられる兄貴とポスリメンの戦いを指さし抗議してきた。
「反則って言われても知るかよ。」
パワルドもフローズンブリザを何度も打って無双している姿に呆れていた。
「まぁ、いいなるね。あと少しであのお兄さんはジエンドなるね。」
玉珠はパワルドの仲間を貶し挑発しながらヒールを使い
顔のケガを治しスピードアップを掛け直した。
「本当にそううまくいくかな。」
パワルドも回復薬でHPを回復し、セカンドラウンドが始まった。
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ビートレイの奇襲を防いだニャルマー達は、
実力的に格下だったトレチャリーとビートレイを
難なく撃破し、残っているポスリメンの殲滅に取り掛かった。
馬車を守るようにツルボウが盾をどっしりと構え、
サッチャンとニャルマーが飛び回るようにポスリメンを倒していく。
両手に剣を装備したサッチャンは、ニャルマーの倍はポスリメンを倒している。
だが、サッチャンは自分のウイークポイントは分かっている。
複数相手でも圧倒的に格下だったり、
強くてもツルボウと組んで1対2だったら問題ないが、
もう少し強い敵で複数に囲まれた場合太刀打ちできない。
2人でバトマに行くには分が悪く、
こうして相互補完しながら戦えることに、嬉しく感じていた。
「私は奥の方を片付ける。ここはニャルマーに任せた。」
「うん。あの奥にも隠れてるから気を付けて。」
「了解。」
ニャルマーが足音が聞こえた位置を教えると、
サッチャンはスピードを上げて奥へと向かった。
ニャルマーが周囲のポスリメンを殲滅し終えるのと同じくらいのタイミングで、
サッチャンも奥にいたポスリメンを一掃し終えた。
「どうだい?」
目を閉じ耳を澄まして周囲に残っていないか確認をしているニャルマーに
そっと尋ねた。
「ここから後ろにはもういないと思う。」
「よし、なら早く前方に加勢しよう。」
ちなみに、王玉珠たちはもう少し先で襲う予定だった事もあり、
後方が手薄になっていたのだ。
逆にその影響で俺は前方で苦労してるんだが、
残念ながらそんなことを知る由はない。。。
前に向かう途中、先頭と2台目の間位で
エンミイジが3体のポスリメンと戦っていた。
それを、2台目の後方からただ眺めているジサンイムがいた。
エンミイジは防戦一方で、すぐに助けようと走っていった。
「加勢は無用です。」
ジサンイムの前を通り抜けようとしたとき、彼が3人の前に立ちはだかった。
「いや、押されてるじゃないか。」
サッチャンは必死に耐えているエンミイジを指さした。
「これは彼自身の戦いなのです。」
ジサンイムは二度首を横に振ってから、エンミイジを見ながら理由を答えた。
「俺に構わず、前に行け。」
サッチャン達とのやり取りが聞こえたエンミイジは大きく声を上げた。
そして反対側からも、金属がぶつかる音と共に
「こっちは大丈夫だから早く行ってやれ」と
ブエジカルの声が聞こえた。
どんな目的があるか分からないが、何かしら意図があることは分かったので、
ポスリメンを避けるようにしてパワルド達の方へ急ぐ事にした。
パワルドと玉珠の戦いは熾烈を極め、互いに一進一退の攻防を繰り広げ、
3人はずっと見ていたいと思う展開だった。
「何遊んでんだ、あの人は?」
サッチャンは、奥でしつこい3体のポスリメンの攻撃を躱しながら、
次から次へと湧いてくるポスリメンにフローズンブリザを唱えている
俺を指さした。
いや別に遊んでる訳では無いんだけどさ。
ピヨてたポスリメンがバラバラに攻撃してきて、
こいつらを構ってると奥からポスリメンが大量に来ちゃうから、
3体のポスリメンの攻撃を躱しつつ、奥へフローズンブリザを使ってるんだよね。
最近、体術で鍛えてたからこいつらの攻撃は簡単に躱せるし、良かったよ。
装備が体術用じゃないから倒せないけどさ。
んで、躱しついでに1体を足払いし転ばせ、その上に飛び乗り、
更に近くにいた1体の頭を踏み、もう1体の頭も踏みつけた。
赤い帽子を被った配管工の様に、100、200、400と。
そして高く飛んだタイミングで、奥にいるポスリメンにフローズンブリザ!
こんな事してたら、遊んでると思われても仕方ないか。。。
『ボスン!』
パワルドの強蹴が玉珠に決まり、大きく飛ばされた。
玉珠は勢いを殺さず転がり、パワルドと距離を取り膝を付けて起き上がった。
玉珠はヒールを使い、パワルドも回復薬を飲んだ。
「俺は大丈夫だから、兄貴の方を頼む。」
「もう、あの男は何なるの。大体、あの3体は、、、」
玉珠はしまったという様に口を抑えた。
「あの3体は何なんだよ。」
「えっとぉ、何の事なるか?フ、フ、フゥ~」
「口笛になってないけどな。」




