VSトレチャリー&ビートレイ、VS王玉珠 ~ OH!タマタマ、その攻撃は危険です・・・ ~
ニャルマーは最後尾の荷台の陰にそっと身を潜め
近づいてくるポスリメンを見ていると、剣を装備した女が前に出てきた。
「大人しく武器を置いて、手を挙げなさい。」
「バカか、そんな事する訳ねぇだろ。」
ロングソードを両手に装備したサッチャンはキレ気味に、
自分の身長程ある大盾を装備したツルボウがその前に立ちはだかった。
今までの彼からは想像できない、何人たりとも通さないという
壁のようなオーラを醸し出している。
「そう、それは残念。ま、どちらにしてもあなた達はここで死になさい。」
「寝言は寝てから言え、バカ!」
「ふふ、威勢がいいわね。私はトレチャリー、
折角だしあなた達の名前を教えなさい。
10秒くらいは覚えておくわ。」
言い終わると同時にサッチャンへと切りかかった。
突然の攻撃をツルボウが大盾でガードして払いのけ、
体勢を崩したトレチャリーにサッチャンが斬撃を放った。
トレチャリーは後ろに転がるように距離を取り、
無防備に片膝をついて起き上がった。
サッチャンは更に追撃を加えるため、大きく振りかぶった。
「しまった!!」
声を発したのはトレチャリーではなく、サッチャンだった。
木の間に隠れていた女が真横からサッチャンに槍を突き出してきた。
盾役のツルボウは真後ろで間に合わない。
サッチャンは攻撃重視の双剣使いで盾は装備していないので、ガードはできない。
致命書を避けようと動きを変えるが、大ダメージは避けられない。
『ドスン!』
間一髪のところで、ニャルマーが盾ごと体当たりし、女は地面に叩きつけられた。
サッチャンは方向転換し、女の後ろにいたポスリメン2体へ切りかかり、
ツルボウはニャルマーとトレチャリーと槍を突きだしてきた
女の間に入り盾を構えた。
「ビートレイだよね。」
アイテムボックスから出したワザヤミーの剣を装備しながら
ニャルマーが尋ねた。
メセーナさんの絵ではトレチャリーとビートレイは
間違え探しかというくらい似ていたが、実物は明らかに違う。
ただ、聞いていた特徴はそれぞれあるので、間違えはない。
「えっとぉ、何でぇ卑怯者のぉあんたとぉ、お話しなきゃぁいけないのぉ~。」
ビートレイは起き上がって服に付いた埃を払いながら、
ゆったりとした口調で答えた。
「え~とぉ、あなた方にはぁ言われたくないかなぁ。」
口調を真似てみたニャルマーだったが、ちょっと恥ずかしくなって頬を赤らめた。
「いいねぇ、似てるぅ、似てるぅ。」
「もうそんなことで喜んでなくていいから、しっかり集中しなさい。」
「はぁい。」
トレチャリーに注意されたビートレイは、
とろりとした目つきからほんの少しだけシャキッとした。
「助かった、サンキュー。」
木陰に隠れていたポスリメン2体を倒して戻ってきた
サッチャンはニャルマーの横に並んで双剣を構えた。
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「俺らや荷物の事は心配しないでくれ。」
パワルドにどう答えるか考えている俺を安心させるかの様に
エンミイジは後続馬車から降りてきた錫杖を装備しているジサンイムと
ごっついナックルを装備しているブエジカルを従えて近づいてきた。
引きつりながらもニコっとしたエンミイジに頷き、正面を見た。
「あれは王玉珠だよね?
奥には10以上のポスリメンがいるけど、どっちがいい?」
「複数相手は兄貴の方が得意だろ、ってことで王玉珠で。」
メセーナさんの似顔絵には程遠いが、説明に聞いていた特徴に合致する
赤いチャイナドレスを着た女を睨みつけながらパワルドは歩き始めた。
メセーナさんの情報では、モブスタと同じくらいの実力で
体術を主に使うと聞いているが、
武器も新調しレベルの上がったパワルドなら大丈夫だろう。
「お前ら2人が相手なるか?
悪いことは言わないから、武器を置いて降参するなるよ。」
スリットから時折見える足が妙に色っぽいのだが、
片言の喋りで語尾に「・・・なるよ」と付けてくる変な女だ。
実際に言う人はいないと思うが、アニメや漫画で中国人が喋るとき
語尾に「・・・あるよ」と付ける、そんな感じなのだろうか。
「面白い冗談だな、おう、たまたま。」
パワルドが嫌味っぽく言い返すと、王玉珠の目が吊り上がった。
「そういう男は嫌いなるよ。お前のそれ、使い物にならなくなるよ。」
王玉珠はチラリとパワルドの下半身を見ると、
突進し右足を縦に蹴り上げ金的攻撃をしてきた。
パワルドは男としての危機を感じたのか反射的に後ろに下がり難を逃れた。
あんなの喰らったらほんとに『OH!タマタマ』だよと横目に見ながら
王玉珠の後ろに回り、氷結系範囲魔法を唱えた。
「フローズンブリザ!」
手前にいた数体を倒し、その後ろにも大ダメージを与えた。
突然の出来事にポスリメンはフリーズしている。
フローズンブリザにそんな効果はないが、この一瞬が命取りになる。
再度フローズンブリザを唱え、大半を魔素に還した。
そして少し前へと進む。
まだ多くのポスリメンが茂みに隠れていることは分かっている。
今見えているポスリメンにフローズンブリザを使い一掃し、そのまま進む。
次のポスリメンのテリトリに入ったのか、
待ってましたと言わんばかりに集団で襲い掛かってきた。
だが、こちらも待っていましたと言わんばかりにフローズンブリザを叩きこむ。
数体倒したものの一陣目とは異なり残ったポスリメンは
思考停止することなく攻撃してきた。
後退しながらフローズンブリザを唱え、2陣目も大半は摩素へと還った。
残ったポスリメンにフローズンブリザを使ったが、1体外してしまった。
その1体に杖をバットの様にして、ホームランばりに打ち上げると、
あっさりと魔素へ還った。
残りHPが少なかったからだろうけどね。
「修復機能があるからって、高かったし
壊れたらやだからこういう使い方はやっぱ止めよ。」
杖の先端を汚れを払うかのように磨いた。
「ん?」
ニャルマーが異変を感じた時からずっと使い続けているディテクトに
茂みの奥を通り抜けて背後に回ろうとしている3体のポスリメンが引っ掛かった。
ただ、残念ながら木々が邪魔で魔法で攻撃することができない。
「背後から奇襲をかけられたら不味いけど、分かってれば別に問題ないか。」
杖をくるりと回して更に前へと注意しながら進む。
ポスリメンがまた出てきたので、フローズンブリザを唱えた。
「やっぱりか。」
前方に唱えた瞬間、背後に回っていたポスリメンが襲い掛かってきた。
1体目の攻撃を躱しながら腕を掴み、
ぐるぐると回って遠心力を使い2体目へ投げ当てた。
見事クリーンヒットし2体とも魔素には還らなかったが、
頭上にはヒヨコが回ってる。
そしてもう1体の土手腹に飛蹴を入れると、
勢いよく飛ばされて木に直撃しピヨった。
体術系の装備ではないので、倒せないようだ。
そして、これが合図となったのか、ポスリメンが一気に出てきた。
「マジかよ。。。」
ピヨってるポスリメンはディテクトで注意しつつ、
前方に現れた大量のポスリメンにフローズンブリザをひたすら唱えまくった。