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最強の剣を求めて~Another Story~  作者: 遠浅 なみ
第3章 ゴエアール地方
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Go to バトマ ~ 色黒のエンミイジ、仏のジサンイム、蛙みたいなブエジカル ~

「お疲れ~。今日はいつもより遅いねぇ。」

少し前に出てきたドランゴの所までジャインは小走りし、

片手を上げ近づいてきた。

セントレアと会うのは、こちらが遅くて向こうが早く出てきた時だ。


「まだパワルドが出てこないんだよね。」

「そうか、あいつも頑張るよなぁ。

そういや、この間シンメイさんに呼ばれてたけど何かあった?」

「俺とパワルド、ニャルマーでバトマへ応援に行ってほしいって。」

「坊ちゃん、お嬢ちゃんには無理だろうしな。で3人は行くのかい?」

「ああ、明日の朝、出発予定だよ。」

「随分と急な話だが、仕方がないよな。

俺たちも3日後に商隊の護衛でサンハイトへ行く予定だし、

冒険者ってのはそんなもんさ。

まぁ、いずれまた会えるだろうし、向こうでもがんばれよ。」

「お宅のパワルドが出てきたぞ。」

横で話を聞いていたドランゴが転送陣を指さした。


「俺たちのメンバーは何時揃うか分からないし、明日出発なら早く帰んな。」

「気を使わせちゃって悪いね。じゃあ遠慮なく戻らせてもらうよ。」

ジャインの心遣いに感謝して、先に帰らせてもらった。


カサーナではギルドでアイテムの精算とパーティの再編成登録を行い、

アイテムショップで魔香など必要な物を買い揃え、翌日の出発に備えた。


【1月8日】

カスミ達が見送りに来たいと言っていたが、

シュメーイへの街道は千日の塔とは逆方向になるので、

「また会えるから」と断った。

実際には別れが辛かったからなんだけどね。


俺、パワルド、ニャルマーの3人で集合時間より15分程早く着くと、

シンメイさんは既に来ていて体格の良い50代に見える3人の男性と

談笑していた。


「あら、おはよう。噂をすれば影が差すとはこの事ね。」

近づいて挨拶すると、シンメイさんはにっこりとしながら返してくれた。


「この商隊のカシラやってるエンミイジさ。よろしくな。

お前がリーダーのなおとで、こっちがパワルド、でニャルマーだろ。

シンメイさんの言う通り、分かり易かったさ。」

3人の中で色黒のちょい悪おじさん風のエンミイジが俺たちを言い当てた。


「うふふ、そうでしょう。お二人も紹介しないとだわね。

ジサンイムさんとブエジカルさんで、以前は3人とも冒険者だったのよ。」

「まぁ、気持ちは冒険者のままなんですがね。」

「そんな訳で俺たちは依頼人の商隊だが、

同じ冒険者として思って敬語はいらねぇよ。」

シンメイさんに紹介されたジサンイムは仏の様に朗らかな表情をしており、

ブエジカルは小柄で顔が微妙に蛙の様に見える。ちょっと失礼か。。。


「さ、顔合わせも済んだことだし、早速行きましょ。」

「そうさな。よし、なおとお前は俺の横に一緒に乗れ。」

シンメイさんの意見に同意したエンミイジが先頭を右の親指で指し示した。


「それではシンメイさんは私と共に真ん中の馬車へ。」

「今回もよろしくね、ジサンイムさん。」

「お嬢さんは俺の横な。」

ニコリと笑うと更に蛙に見えるブエジカルがニャルマーを誘い、

ちらりとパワルドを確認してから「あ、はい。」と気の抜けた返事をした。


『俺は?』という風にキョロキョロしているパワルドに気が付いたブエジカルは、

「悪いが俺んとこの荷台で。」

と自分の荷台を指さした。

「え~・・・(-。-)」

「まぁそうしょぼくれるなさ。仕方ねぇじゃねぇかさ。

先頭はリーダーの役目だし、シンメイさんを荷台に乗せるわけにもいかねぇし、

女を荷台に追いやって自分が御者の隣ってのもねぇだろ、な。」

口を尖らせ不満のパワルドの肩を軽くポンとエンミイジが叩いた。


「乗り心地は良くないけどスペースはあるから横になって行っても構いませんよ。

今日だけし、悪いけど我慢してくださいね。」

「もう分かったよ。1日だけ我慢するよ。」

エンミイジの合理的な説明に加え、仏の顔のジサンイムに優しく言われた

パワルドは3台目の荷台に乗り込んだ。


「最近ポスリメンとかいうのが各地で暴れていて大変な事になっちまったなぁ。」

馬車のスピードが安定して少しするとエンミイジが話しかけてきた。


「カサーナは殲滅できたけど、ハノウやバトマでは色々大変みたいで。」

「商売人の俺たちにとってハノウへ向かう国境が封鎖されてるのはかなり痛いさ。

早く通れるようになると良いんだがさ。

バトマから先も条件を満たした者以外通れなくなったってさ。」

「条件って何だろ?」

「俺たちみたいな商売人は商人ギルド証と推薦状、

それから通行時に荷物のチェックさ。

ちなみに俺たちの推薦人はシンメイさんだけどさ。

冒険者の方は、何だったっけかなぁ・・・ま、現地に行けば分かるだろうけどさ。」

「シンメイさんが推薦人って、結構親しいんだね。」

「ああ、シンメイさんには冒険者時代から随分と世話になってるさ。」

「何で冒険者から商人になろうと思ったんだい?」


一瞬ピクリと顔が険しくなったので、

「話したくないなら聞かないけど。」と茶を濁した。


「いや、悪い。別に話せないわけではないんだがさ。」

エンミイジは昔を思い出すかのように、遥か先を見ながら少し間を取った。


「あれはもう10年、いや15年は経つさなぁ。」

先ほどまでの明るい声色から、ゆっくりと落ち着いた感じで話を始めた。


「元々6人のパーティーで活動していて、

俺はリーダじゃなく中堅の1メンバーだったんださ。

あん時のリーダーはイケイケのタイプで、どんな強敵だろうが

ドンドン突っ込んでいく野郎でさ、

そいつに憧れて俺も結構無茶な事したもんさ。。。」

過去の自分に呆れているみたいに言い放っていたが、

何となくそれを懐かしむ様に一瞬口角が上がった感じに見えた。


「強敵を倒せばレベルが早く上がるし、周りも評価してくれカネも沢山入る、

チヤホヤされる心地良さに次第と感覚がマヒし始めちったのさ、

自分の強さを度外視してより強い敵を求めるようになってったさ。

だがさ、そんな強敵を都合よく何時までも倒せる訳はねぇのさ。」

過去を戒めるかのように馬へ1つ鞭を入れた。


「今でもあん時の事は鮮明に覚えてるさ。

新緑が生い茂り、まだ暑さもなく風が清々しい頃だった。

ドアスロープの更に北にある森林に巨獣熊ジャイアントベア

現れたっていうんで、意気揚々と遠征したのさ。

ギルドの推奨レベルは最低でも120。

リーダーこそ100を超えていたが、俺はまだ80を超えたばっかりだったし、

今後ろにいる二人は80すら超えてない状況で、

出発時には周りから『流石に今回は止めておけ』って相当言われたが、

何なんだろうな、変な自信というか、傲りというか、

メンバー内には『今回も大丈夫でしょ』っていう余裕な空気が流れてたさ。」

何かその地で大事に巻き込まれたのかなと話の流れから想像がつくが、

続きを促さず敢えて沈黙し数秒の時が流れ、馬車の走る音だけが響いていた。


「現地には推奨レベルを満たしたパーティが幾つかいたがみんな慎重派で、

俺たちは情けない奴らだって言いながら先行して奥の方を探索してたさ。

現地入りから数日経過し俺たちは谷にいた巨獣熊を見つけ、

当然のように討伐を始め、

苦戦はしたがそれは強敵と戦ってるといつもの事だったし、

ヘトヘトになりながらも、そいつを倒すことには成功できたのさ。

だがさ、俺たちはそいつに集中せざるを得なかったせいで、

周りを疎かにしちまったんさ。

気付いた時には、さっきのやつよりでかい2匹の巨獣に睨まれていたさ。」


「エンミイジ」笠幡駅から北にすぐにあるお寺の名前から

「ジサンイム」そのお寺の参道にある十三仏

「ブエジカル」笠幡駅から東に行ったところにある交通安全「無事かえる」

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